Chartogne Taillet(シャルトーニュ・タイエ)

果てしない熱意を持った1983年生まれのアレクサンドル・タイエ。
世界大戦前はグランクリュの村々と同じ価格で取引されていたメルフィ村に本拠地を構え、そのメルフィを体現しようと土壌を研究し尽くし、畑を耕す馬や堆肥用の羊すらもメルフィ内で育てるという筋金入り。
ジャック・セロスでの修行後、両親が営むシャルトーニュ・タイエに参画してから早10年余り。
ミネラル感豊かで土地のエネルギーに溢れた彼のシャンパンは世界中から熱い注目を集めている。
とりわけ区画ごとにリリースされるリューディシリーズは世界中で取り合いで、フランス国内のバイヤーからも割当を分けてくれと言われるほど。

タイエのシャンパンは、同じく注目を浴びる同世代の生産者のものと比べると手頃で、手に入りやすい。

それゆえレア感や希少性は薄れるものの(単一畑で仕込まれるリューディシリーズは争奪戦だが)、ひとたび彼のシャンパンを飲むとなぜこの価格でこの品質?と驚かされる。

身近ながらも妥協のない洗練された、美しいこの1本は自宅のセラーに常備するべき1本だと思う。

 

■歴史

1683年 設立

ランス北西の村メルフィで栽培家として創業。

2006年 アレクサンドル・タイエの帰還

現当主であるアレクサンドル・タイエがシャルトーニュ・タイエに参画

当時平日はジャック・セロスで働いていたので、世話をしていた区画はLes Barresのみ。

2007年 転換期

アレクサンドルが全ての区画の世話をすることになる。

次の世代に健全な畑を渡すために、殺虫剤と除草剤を使わずブドウを栽培したいと先代の父に伝えたところ、「言うのは簡単だが、実際やるのは難しい」と反対された。

しかし先代は反対しつつも、アレクサンドルが目指す栽培を実践させてくれた。

2008年 先代とアレクサンドル

アレクサンドルは1本のボトルにメルフィのすべてを詰め込むために、ワインにかかわるものは全てメルフィの中でまかないたいと考え、堆肥用に羊を買った。

(現在も羊はメルフィの村はずれに飼っている。夏の間はブドウ畑の外の草を食べ、冬の間は畑に放っている)

先代は「息子は頭がおかしくなった」と感じ、ワイナリーから出て行ってしまった。

ただ、そのままけんか別れになったわけではなく、先代がアレクサンドルが手掛けたワインを2006VT、2007 VT、2008 VT…と順に試飲した時、2011VTで「お前のやっていたことは正しかった」と遂に認めてくれた。

また、アレクサンドルも父の気持ちは理解している。この道30年の先代としては、アレクサンドルが何か問題があるとセロスに相談していたのを見るのは面白くなかったろうし、なんだかんだ言いながら好きにさせてくれたからだ。

現在、先代はアレクサンドルの手法が成功したのでこれでいいと思っているが、栽培含め、自分とアレクサンドルではワイン造りの手法と全く違うので、完全に代替わりして以降はワイン造りには一切かかわっていない。

■メルフィ

“Vignobles de Champagne et vins mousseux”(17世紀から19世紀にかけてのシャンパーニュ地方のワイン造りの歴史を記した本)にはメルフィは現在のグランクリュの村と並ぶ産地として記録されていた。

また、砂質主体の畑のためフィロキセラの被害をほとんど受けずに済んだ貴重なエリアでもある。

しかし、ランスの街やモンターニュ・ド・ランスを一望できる高台にある戦略的要地だったため、2回の世界大戦でドイツ軍に徹底的に畑を破壊され、一旦ワイン造りが失われてしまった。

その後畑は全て1950 -1960年代に植えかえられている。

メルフィの土壌は砂質主体だが、海抜によって砂、粘土、石灰と様々なタイプの表土とチョークの下層土。

一方グランクリュの村々の土壌はほぼ粘土とチョーク。

現在、シャンパーニュの格付けを記すエシェル・デ・クリュではプルミエクリュにも満たない84%の評価であり、超一流のテロワールとはみなされていない。

しかし、本物の情熱を持ってワイン造りに挑んだ時、評価など所詮基準の1つでしかないとタイエのワインは示している。

■ジャック・セロスで学んだこと

大学の卒業研修でジャック・セロスのアンセルムに師事。

アンセルムから特に影響を受けたことは「ブドウの根をまっすぐ伸ばす方法」と「自然環境を尊重したワイン造り」であるとアレクサンドルは語る。

畑表面の草だけでなく土中の微生物まで殺して土を不活性化させ、ブドウの樹がまっすぐではなく横方向に根を広げてしまう環境を作り出す除草剤は無用のものだった。

その代わり手間はかかるが、野草をコントロールし畑に空気を含ませるために畑を鋤き耕している。

馬や機械が入れないほど樹間の狭い畑は人の手で耕すという念の入れようである。

(ちなみにこの馬もメルフィで飼っている)

土壌を押し固めず柔らかく保つことで、根がまっすぐ深く伸びていく。

そうすることで下層土のチョークまで根が届き塩気を含んだ水分を吸収できるため、ブドウに豊富なミネラルが蓄えられる。

■先人から学ぶ

さらに先人の経験と記録にもヒントを求めた。

ヴィンテージの出来やブドウの取引について18世紀の初めから代々絶えることなく綴られていたシャルトーニュ・タイエの家長の日記から優れた畑を割り出し、古い文献から昔のメルフィではブドウの樹1本につき4房までしか実をつけさせなかったことを知り、通常の半分以下に収量を抑え、自根で密植されていた当時のスタイルの畑も復活させた。

他にも日当たりを良くしてブドウの熟度と糖度を上げるため、他の生産者の畑より長くブドウの枝を切り、ベースワインの発酵には畑の土壌によってステンレスタンク、タマゴ型のコンクリートタンク、バリックを使い分けるなど様々な工夫を凝らしている。

細かな違いがひとつひとつ積み重ねられた彼のワインは、先代の頃に増してミネラル感豊かで土地のエネルギーに溢れている。

■ラインナップ

Cuvee Sainte Anne Brut(サンタンヌ)

品種 シャルドネ45%、ピノ・ノワール45%、ムニエ10%
メルフィ
ドサージュ 5-6g/L
メルフィにある様々な土壌タイプの畑からのワインをブレンドすることでメルフィのエッセンスを昇華させ、シャルトーニュ・タイエが根差す地を総合的に表現したシャンパーニュ。旨みとして感じる細やかなミネラル感と果実のジューシーさに富む。。高く広く華やかに感じられるのは、砂を多く含むメルフィのテロワールならでは。キュヴェ名はメルフィの守護聖人サンタンヌに因む。

 

Brut Rose(ロゼ)

品種 ピノ・ノワール34% シャルドネ33% ムニエ33%
メルフィ
ドサージュ 6-7g/L
世界唯一の国際的シャンパーニュ評価誌Fine Champagne Magazineでは、数ある高級メゾンを抑え世界No.1ロゼに輝いた。アレクサンドル的にはテロワールのワインというより生産者のスタイルが出たワイン。

 

Cuvee Les Orizeaux (レ・ゾリゾー)

品種 ピノ・ノワール100%
メルフィ(Les Orizeaux )
ドサージュ 3-4g/L
メルフィの集落の南側に位置する単一畑で、1950年代に植樹された。砂と石灰が主体の土壌には鉄分が含まれ、粘土が少し混ざっているため、独特のミネラル感とふくよかさとが備わる。じわじわと旨みがわき出る透明感あるふくよかな味わい。長い余韻はチョーキーかつエレガント。

 

Cuvee Les Couarres (レ・クアール)

品種 ピノ・ノワール100%
メルフィ( Les Couarres )
ドサージュ 3-4g/L
メルフィの畑の中央にある単一畑。砂が混ざった粘土が豊富な土壌で、地表から80cm下にはチョークの層がある。すぐ近くにあり同じくピノ・ノワールが栽培されているレ・ゾリゾーとは土壌が異なるため、よりミネラル豊かな味わいとなる。密度、エレガンス、軽やかさを兼ね備えている。

 

Chemin de Reims(シュマン・ド・ランス)

品種 シャルドネ100%
メルフィ(Chemin de Reims)
ドサージュ 5-6g/L
メルフィの畑の東端にある単一畑。古くは修道士たちがワインを生産していたシャンパーニュ地方の最も古い区画の1つ。異なった何層もの砂質の土壌で鉄分を多く含む。すべての要素が鮮明なフレーバーで、張りがあり、クリスタルのような口当たりを持つキュヴェ。

 

Cuvee Les Barres(レ・バール)

品種 ピノ・ノワール100%
メルフィ(Les Barre)
ドサージュ 3-4g/L
メルフィの集落の南側に位置する砂質土壌の単一畑で、1950年代にブドウ畑が再建される中、昔のシャンパーニュ造りをしのぶために接ぎ木なしでムニエが植樹された。パワフルな果実やキレのある酸が純粋に表現され、接ぎ木なしのブドウならではの溢れんばかりのエネルギーに圧倒される。余韻は長くクリーミー。

■生産者情報

本拠地 メルフィ村
生産本数
栽培方法 ビオ・ディナミ
所有畑 15ha

メルフィ、サン・ティエリー、アヴィズ

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