Dry Creek Valley(ドライ・クリーク・ヴァレー)
100年を超す樹齢が生み出す深遠な味わいは 飲む者を圧倒する
ドライ・クリーク・ヴァレー(DCV)はソノマにあるAVAで、カリフォルニアの中で最もジンファンデルに適したテロワールを持つエリアの一つとされている。白ブドウではソーヴィニヨン・ブランで品質の高いものが見られる。
歴史を見ると、この地ではゴールドラッシュによってイタリアから移民が流れこんできた1850年頃からワインが作られてきた。1900年初頭まで賑わいを見せていたものの、1919年の禁酒法の導入によってワインメーカーたちは大打撃を受け、ワイン産業は下火となった。その後1960-70年代に起こったカリフォルニア・ワイン産業のリバイバルが再びこの地に火をともした。
今日では60を超えるワイナリーがこの地に本拠を構えており、ラファネッリ(A. Rafanelli)やドライ・クリーク・ヴィンヤーズ(Dry Creek Vineyards)などから素晴らしい品質のワインが生み出され、さらにはカリフォルニアワイン業界の巨人ガロ(Gallo)の本部もある。
テロワール
DCVは、ドライ・クリークの川沿いとその両岸に広がる丘陵地をカバーする。
西部は海岸山脈によって守られているため、すぐ南のロシアン・リバー・ヴァレーよりも海からの影響が少なく温暖な気候となる。しかし川が作る谷底の地形は南のサン・パブロ湾から冷気と霧を運ぶため、川沿いは丘陵よりも冷涼となる。この冷気の流入は午後から夜間にかけて発生し、夜の気温を急激に下げる。日中との大きな気温差が生まれることで、ブドウの生育期は引き伸ばされ、高い酸を保ちながらもアロマとフレーバーをじっくりと成熟させることができる。
また北部と南部でも気候はわずかに異なる。つまり、海からの距離が近い南部の方が冷気の影響を大きく受けるために冷涼となる。
川の東側にある西向き斜面の畑ではより温かい午後の太陽を浴びるため逆サイドの畑よりも温暖な気候が形成され、ワインはより完熟感のあるフルボディスタイルに仕上がる。
土壌は複雑だが、基本的には谷底では砂利の多い砂質ロームが見られ、主にソーヴィニヨン・ブランが育っている。一方、丘陵では石がちで鉄分を多く含む赤い粘土質ロームが見られる。こうした石がちな水はけの良い丘陵地の土壌は、カビに弱いジンファンデルに最適で、病害菌に怯えることなく根が地中深くに潜っていくことができ、また樹勢や収量を自然と抑えてくれる。
味わいの特徴
DCVではとりわけジンファンデルが有名で、中には樹齢100年を超す古樹も存在する。ワインはフルボディよりのスタイルで高めの酸を持ち、完熟したブラックベリー、ブラックプラムにチェリーのフレーバーが特徴となる。冷気の影響が少ない温暖な北部の西向き斜面の畑からのワインは完熟感が強く、よりジャミーでドライフルーツのフレーバーが強く出る。一方、冷気の影響をより多く受ける南部の東向き斜面の畑のものはよりフレッシュ感が強く出る。アメリカンオークでの樽熟成が一般的で、スパイスのノートを付与するために部分的に新樽も用いられる。ワインの品質は高く、最上のものは小売価格で1万円前後の高値がつく。
早期からビオディナミに転換したクイヴィラ(Quivira)は谷底エリアから素晴らしいソーヴィニヨン・ブランを生み出しており、また丘陵地から生み出される洗練されたジンファンデルも見逃せない。複数のローヌ品種もブレンドで使用されているが、中でもプレストン・ヴィンヤーズ(Preston Vineyards)のものは品質が高い。また丘陵地から興味深いカベルネ・ソーヴィニヨンも作られており、とりわけラファネッリ(A. Rafanelli)は傑出している。