Howell Mountain(ハウエル・マウンテン)

山側AVAで最も温暖なハウエル・マウンテン

フレッシュ感やかっちり感といった山の性格を持ちながらも

凝縮した濃密な果実味が見事に共存する

ハウエル・マウンテンはナパ・ヴァレー北部、ヴァカ山脈に位置するAVAで、ちょうどセント・ヘレナの街の北東にある。ナパ山側AVAの中でも最奥部にあるエリアの一つで、長さ約16km、幅は最大でも3km程の細長い形をしている。

AVAを名乗るためには、畑は標高427m以上でなければならないが、これがハウエル・マウンテンの個性を際立たせている。というのも、マウント・ヴィーダーやスプリング・マウンテン・ディストリクト、ダイアモンド・マウンテン・ディストリクトなどのマヤカマス山脈側のAVAでは、通常AVAの境界線最下部は谷底エリアと隣接する。つまり、谷底と山側のAVA同士がお互いに隣り合った状態で存在している。

ところが、ハウエル・マウンテンでは最下部の境界線が標高(427m)によって定められており、近隣のカリストガとは隣接していない。427mの境界線の下では霧がかかり、その上ではかからないというテロワールの個性が明確に反映されているのである。

歴史を見ると、ハウエル・マウンテンは禁酒法以前ジンファンデルでその名を馳せていたが、1920年代に禁酒法が発令されるとこの地は地図から姿を消し、その後長い間誰も見向きもしなかった。

転機となったのは1980年になってからで、Randy Dunnというワインメーカーが、周囲を驚かせる素晴らしいカベルネ・ソーヴィニヨンを生み出した。彼のワイナリーであるDunn(ダン)を筆頭にLa Jota(ラ・ホタ)、O’Shaughnessy(オショネシー)やRobert Craig(ロバート・クレイグ)といったワイナリーたちの努力によってハウエル・マウンテンのカベルネ・ソーヴィニヨンは世間の注目を集めるようになった。その後1983年に、ナパ・ヴァレー初のサブリージョンとして正式にAVA認定された。これはナパ・ヴァレーAVAが認定されたほんの数年後のことであった。1980年初頭というのはイタリアがDOCGを導入し始めた時期と重なり、バローロやブルネロといったイタリアを代表する産地の個性が認められた。それと同じ頃に、アメリカでも素晴らしい品質の赤ワインを生む産地としてハウエル・マウンテンがAVAに認定されたのである。

生産者数は多くないが、生み出されるワインの数々はどれも愛好家の垂涎の的であり、例えばカルト的な人気を誇るHundred acre(ハンドレッド・エーカー)やAbreu(エイブリュー)、Dana Estates(ダナ・エステーツ)らのものはとりわけ希少価値が高い。またColgin(コルギン)やBryant(ブライアント)といった著名ワイナリーたちのラインナップの一部にもこのハウエル・マウンテンからのブドウが使用されており、そのポテンシャルの高さが伺える。

 

ナパ山側のAVAは基本的に霧の上層に位置しているため、霧がかる谷底AVAよりも長い日照時間を得ることができる。一方、山岳地帯は高地となるため、海からではなく標高の高さが冷気をもたらす。

ナパ・ヴァレーの東側にそびえるヴァカ山脈にあるハウエル・マウンテンでは最大で標高800m近くにもなる。ハウエル・マウンテンには他の山側AVAと比べてユニークな点がいくつかある。まず、海に近いマウント・ヴィーダーやアトラスピークよりもはるか奥地(北部)に位置しているため、気候がより温暖で乾燥している。次に、山岳地帯ではあるもののよりプラトー(台地)に近い地形となっており、霧の上層と相まって太陽をたっぷりと享受できる。さらに、ヴァカ山脈は東側にあるためハウエル・マウンテンの畑は西を向くことになる。つまり、より強烈な午後の日差しを浴びることになる。一般的にナパの山側AVAのスタイルを紐解く鍵は、サン・パブロ湾までの距離と畑の向きの2点であるが、ハウエル・マウンテンは最奥地+西向きとなるため最も温暖なエリアとなる。山のAVAが持つ香り高さやフレッシュな酸、かっちりと硬いタンニンがありながらも、色が濃く、完熟果実と高アルコールに支えられたリッチで肉厚な味わいとなる。

土壌に関しては、圧縮された火山灰や凝灰岩などの火山性土壌がメインだが、鉄分豊富な赤い粘土もよく見られる。山岳地帯であるため表土は薄く、乾燥しており、栄養分に乏しい。このため上質なブドウ栽培には理想とされており、ブドウは苦しみながら成長することで葉を生い茂らすのではなく小粒だが凝縮した実をつける。これがハウエル・マウンテンのワインにタニックなストラクチャーと長熟のポテンシャルを与える。

 

この地ではカベルネ・ソーヴィニヨンを筆頭にメルロー、ジンファンデル、プティ・シラーなどの黒ブドウが大半を占める。白はほとんど見られないがヴィオニエとシャルドネは一部で見られる。ハウエル・マウンテンのカベルネ・ソーヴィニヨンは洗練という言葉がふさわしく、山がもたらすフレッシュな酸、豊かなミネラル、硬いタンニンがありながらも飲み手を圧倒するような凝縮感、濃密な果実味が見事に両立している。フレーバーには完熟したカシスやドライブラックベリーが感じられ、同時にタバコのようなスモーキーさが口内に広がる。熟しているが、過熟のニュアンスは一切なく、厚みがありながらも引き締まったボディを持つという絶妙なバランス感が多くのボルドー好きを唸らせる。

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