Fleury(フルーリー)
シャンパーニュの最南端、土壌もブルゴーニュに近い土地でフルーリーはシャンパンを造っている。
フルーリーといえばビオディナミ、と言っても過言ではないくらいシャンパーニュ地方の作り手の中で確固たる地位を築いている。
味わいは柔らかく、適度な酸がありながらもどこか温かみがあるスタイル。
かといってボリュームが出すぎることもなく、その秀逸なバランスは万人受けすること間違いなし。
目次
■歴史
1895年 設立
シャンパーニュ地方の最南端、ブルゴーニュと境界を接するコート・デ・バール地区のクルトゥロン村でエミール・フルーリーによってブドウ栽培が始まった。
しかしこの時期、シャンパーニュ地方もフィロキセラの被害に見舞われ畑は壊滅状態に陥っていた。
苗木屋でもあったエミールはこの地方では初めて接ぎ木したピノ・ノワールを植樹した生産者でもある。
1901 年 植樹
シャンパーニュ地方もフィロキセラの襲撃に見舞われブドウ畑は壊滅状態だった。そんな中、ヴィニュロンであり苗木屋でもあった初代エミール・フルーリーがこの地方では初めて接ぎ木したピノ・ノワールを植樹した。
1929年 世界恐慌とRM
アメリカを皮切りに、世界的に起こった深刻な経済恐慌はシャンパーニュにも影響を及ぼした。
ブドウの価格が暴落したため、2代目のロベール・フルーリーは家族を守るために自社でシャンパーニュを造ることを決意。
コート・デ・バール地方でRM(レコルタン・マニピュラン)を始めた最初のドメーヌの1つとしてスタートした。
1970年~ 有機的なアプローチの導入からビオディナミへの転換
ロバートの孫、当時23歳のジャン・ピエール・フルーリーがワイン造りに参加。
環境保護に強い興味と関心があった彼はシャンパーニュの中でもいち早くビオディナミ農法について学び、1970年代からリュットレゾネとビオディナミ農法を取り入れ始めた。
1989年、ジャン・ピエールは6人の子供のために美しい畑を残したいという意思から、まずは3ha からビオディナミを開始。
1992年には全ての畑でビオディナミを実践しており、シャンパーニュで初めてデメテールの認証を受けている。
1989年から畑のビオディナミを継続し、自社畑 15haとビオディナミをともに志してきた友人の畑 8ha のブドウ
を購入し、現在の年間生産量は 20 万本。
2008 年からは、シャンパーニュのビオディナミの巨匠エルヴェ・ジェスタンとコンサルタント契約をして、さらに有機農法に力を入れている。
2009年からはSO2 無添加のキュヴェを 生産開始し、よりその立場を確固たるものとしている。
■テロワール
コート・デ・バールはキンメリジャンの地層が見られ、土壌は粘土石灰質なのでどちらかというとシャブリの土壌に近い。
栽培や醸造を区画ごとに行うブルゴーニュ的なアプローチを行う生産者が多いのも特徴。
モンターニュ・ド・ランスやヴァレ・ド・ラ・マルヌなどの北部のネゴシアンは、昔からコート・デ・バールのブドウを良く買い付けていたが、その中でもクルトゥロン村のブドウは他より高く買われていた。
渓谷が近くにあるため涼しく、フレッシュでミネラルのあるブドウができたからかもしれない。
フルーリーはその中で15ha、10区画の畑を所有しており、1992年には全ての畑でビオディナミを実践している。
栽培品種はピノ・ノワールが80%を占めており、シャルドネ、ピノ・ムニエのほかに一部ピノ・ブランやピノグリも栽培している。
シャルドネとピノ・グリは傾斜がきつい南の区画、ピノ・ブランは風通しの良い石灰質が強い土壌と、それぞれ品種に合った土壌に栽培することを重要と考え、ロマネ・コンティのコンサルタントも務めた土壌微生物学の世界的権威であるクロード・ブルギニョン氏からアドバイスももらっている。
■ビオディナミの先駆者として
シャンパーニュの中でもいち早くビオディナミを取り入れ、パイオニア的存在のフルーリー。
そもそもシャンパーニュ地方は、フランスの中でもブドウ栽培の北限地にあり降水量も多いので、病害にかかりやすく有機農法を取り入れることは非常に難しかった。
しかし、土に空気を含ませたり新梢管理を徹底したり、大気中の湿度を常に観測することで病気(主にベト病)を防いできた。
ビオディナミを実践し、「ブドウの根が深く伸びて母岩まで到達することでテロワールのアロマをとらえることができるようになった。」と3代目のジャン・ピエールは語る。
これはジャック・セロスも提唱しており、根をまっすぐ地中に伸ばすことはテロワールを反映させるうえで重要なことなのだ。
また、収穫時のブドウの酸度と糖度のバランスが非常に良くなったことで、出来上がったシャンパンに余韻の長さや豊富なミネラルがもたらされたという。
■ラインナップ
ドサージュ量はヴィンテージによって変動がある。
Brut Nature – Fleur de l’Europe(ブリュット・ナチュール フルール・ド・リューロップ )
品種 | ピノ・ノワール、シャルドネ |
畑 | クルトゥロン村 |
植樹 | 1970~1980年代 |
1992年に初めてビオディナミ認証を受けたキュヴェであり、フルーリーのエントリーシャンパーニュ。
リザーヴワインは約30%使用。バランスがよくリッチな味わい。 マグナムとジェロボアムはゆっくりと熟成するので抜栓時の味わいのコントラストを際立たせるために、ボトルよりもドサージュを増やすことがある。 |
Brut – Robert Fleury(ブリュット ロベール・フルーリー )
品種 | ピノ・ノワール、シャルドネ、ピノ・ブラン、ピノ・ムニエ |
畑 | クルトゥロン村 |
植樹 | 1980年代 |
キンメリッジ階の石灰質粘土。1929年にフルーリーの最初のキュヴェを生み出した2代目のロベール・フルーリーの名を冠している。
蜜っぽい甘さがありつつも、硬質なミネラルと塩味も共存している。 |
Extra Brut – Cépages Blancs(エクストラ・ブリュット セパージュ・ブラン )
品種 | シャルドネ、ピノ・ブラン |
畑 | コート・ド・シャンプロー、ヴァル・プリューヌ、シャルム・ド・フィン(クルトゥロン村) |
植樹 | 1970~1980年代 |
粘土石灰質の土壌。シャルドネとピノ・ブラン2種類の白品種のブレンド。酸とミネラルを基調としており、非常にドライ。熟成させると深みと複雑さが増すので寝かせるのがおすすめ。 |
Extra Brut – Boléro(エクストラ・ブリュット ボレロ )
品種 | ピノ・ノワール100% |
畑 | クルトゥロン村 |
植樹 | 1970年代 |
粘土石灰質の土壌。ラヴェルのボレロから名付けられた、ドメーヌのフラッグ・シップ。非常に豊かな芳香と肉厚なボディ。素晴らしくしなやかでクリーミーなブラン・ド・ノワール。 |
Extra Brut – Sonate(エクストラ・ブリュット ソナタ )
品種 | シャルドネ、ピノ・ノワール |
畑 | クルトゥロン村 |
植樹 | 1970年代 |
粘土石灰質、キンメリジャンの土壌。
SO2無添加のキュベで、日本の正規インポーターであるラシーヌが依頼して2009年からリリースされた。 2006年、自社畑に生息する酵母から培養されたシャンパーニュ酵母『クオーツ』を用いている。 硬水を思わせるような強固なミネラルがあり繊細。 |
■生産者情報
本拠地 | クルトゥロン村 |
栽培方法 | リュットレゾネ、ビオロジック |
年間生産本数 | 約200,000 本 |
所有畑 | 15ha
一緒にビオディナミを追求してきた友人のブドウを購入しているため、RMではなくNMとなる |
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