Languedoc(ラングドック)

海と山に囲まれた広大なラングドック

フランスデイリーワイン最大の供給源にして

エリアごとの個性が掴みづらいカオスな産地

ラングドックはフランス南部にある重要なワイン産地である。生産量の約75%が赤ワインで、広大な畑にはフランスの全ブドウ約1/3が植わっている。シラー、、カリニャンなどのローヌ系品種にピクプールなどの地場品種、また国際品種も多く見られ、実に多様な品種が栽培されている。

ラングドックの生産の中心を担うのは協同組合で、1950年代はほぼ全ての生産量(約90%)が協同組合からきていた。今日ではその比率はやや下がるものの、依然として多くのワイン(約70%)が協同組合産となっている。お隣のルーションとともにラングドックはフランスデイリーワイン最大の供給源として認知され、1970年代以降こうしたカジュアルワインの生産を支えてきた。

一方、こうした需要に応える中で生産過多となり、多くのブドウが畑から引き抜かれたという事実もある。実際にブドウの植樹面積は1968年と比べて約半分にまで縮小した。

デイリーワインのイメージが強いラングドックではあるが、近年は小規模生産者や野心あふれる若い世代が丘陵斜面の畑から高品質なワインを作り、その存在感を増してきている。

海と山に挟まれるように広がるラングドックは、豊富な日照と少ない降雨量(年間600mm以下)による温暖な地中海性気候を持つ。また、北西のモンターニュ・ノワール山脈と南西のピレネー山脈の間を通る乾燥した冷風(トラモンタネ)が年間200日も吹くため、病害菌のリスクも低くブドウ栽培に理想的な環境といえる。

広大なラングドックを東西に分けるとそれぞれに重要なアペラシオンが見えてくる。

ラングドック西部で最も重要なのが、カルカッソンヌの街の北東に広がるミネルヴォワである。ミネルヴォワの北部はモンターニュ・ノワールの麓に位置し、斜面の畑には石がちな粘土石灰土壌が広がる。最も標高の高いラ・リヴィニエール(La Liviniere)と呼ばれるエリアでは、ゆっくりと熟すシラーやグルナッシュから洗練された上質なワインが生まれる。

ミネルヴォアにあるAnne Gros et Jean Paul Tollotの畑

ミネルヴォワのすぐ東に隣接するのがサン・シニアン。とくに北西部の標高の高い(600m)エリアは、ベルルー(Berlou)やロックブリュン(Roquebrun)と呼ばれ、痩せたシスト土壌から素晴らしいワインが生まれる。カリニャンやグルナッシュなどが見られるが、とりわけシストで育つシャープなシラーが特徴となる。

一方、サン・シニアン南部は標高が低く、土壌も粘土の多い石灰岩となるためより柔らかく、ジューシーな味わいとなる。ラングドック西部で見逃せないアペラシオンの最後を飾るのはコルビエール。ミネルヴォワの南に位置するこのエリアは、東は地中海に面し、西はピレネー山脈とモンターニュ・ノワールが作る渓谷に面しているためトラモンタネの影響が強い。土壌は石灰岩やマールが見られ、品種はミネルヴォワと似ているが、ややカリニャンとグルナッシュの使用が多くなる傾向にある。コルビエールの赤はより野性味が強く開放的で凝縮感のある味わいとなる。北部にある低地の砂岩丘陵ブーテナック(Boutenac)はサブリージョンとして人気があり、一部で樹齢100年を超すカリニャンも存在している。

一方、ラングドック東部で重要なのは、サン・シニアンの東隣にあるフォジェール。標高は350m前後で、シストに砂と石灰岩が混ざる非常に痩せた土壌を持つ。ラングドックにおいて協同組合の存在感が一番薄くなるのがここで、多くのドメーヌが有機栽培あるいはビオディナミでブドウを育てている。最後にラングドック東部の海側を見てみると、ピクプール・ド・ピネがある。ここはラングドックで最も成功している辛口白ワイン産地と言っても過言ではなく、砂質土壌で育つピクプールからシトラス風味の爽やかなワインが味わえる。

ピクプール・ド・ピネにあるDomaine Cabrolの畑

 

味わいの特徴

こうしてそれぞれのアペラシオンの特徴を文字で読むとその個性が理解できたように思えるが、実際のところラングドックほど産地ごとの味わいを断定するのが難しい産地は無いかもしれない。というのも、アペラシオンは実際あるようでないからである。確かに、サン・シニアンとフォジェールは土壌がシストで標高が高く、いわゆるストラクチャーかっちり系、酸高めの「山系の味わい」としてキャラクターが確立している。しかし、例えばミネルヴォワとコルビエールをブラインドで試飲してその個性を明確に差別化するのはほとんど不可能と言えるだろう。南西地方のように各エリアでそれぞれの地場品種から個性豊かなワインを作っていればキャラ分けは幾分容易にはなるが、いかんせんラングドックはブレンド主体でローヌ系、ボルドー系、その他品種と種類も多いためエリアごとの個性というよりは造り手のスタイルが味わいの決め手となっているパターンが少なくない。

一般論としては、他産地同様にラングドックも基本的にはエリアが限定されていくほど価格と品質が高くなり、ラングドックAOC(広域)→コルビエールAOC(地区名)→コルビエール・ブートナック(地区名+サブリージョン)といった順でランクが上がっていく。しかし、全体を見るとラングドックワインの約70%はこうしたAOCのカテゴリ外にあるさらに広域なIGPワインとなっている。こうしたカジュアルワインは、大規模ロットで早く安定的に仕込まれ、リリースの早い安価なワインとなるものがほとんどである。

一方で、AOCのシステムに逆行するかのごとくIGPなどの広域ラベルで小売価格が数万円となるプレミアムワインを生み出す生産者もいる。例えば、マズ・ド・ドマ・ガサック(Mas de Daumas Gassac)やグランジュ・デ・ペール(Domaine de la Grange des Peres)らがその筆頭格である。またシャトー・ド・ラ・ネグリ(Ch de la Negly)やペイル・ローズ(Peyre Rose)といった重要生産者たちも見逃せない。

 

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