Emmanuel Rouget(エマニュエル・ルジェ)

ピノ・ノワール好きであれば誰もが一度は耳にする伝説のヴィニュロン、。神様と崇められるこの偉大な人物を叔父に持つエマニュエル・ルジェは、1985年設立と比較的歴史が浅いにも関わらず、DRCとLeroyに次ぐヴォーヌ・ロマネの最高峰に君臨する。

 

歴史

エマニュエル・ルジェを語るときに切っても切り離せないのがアンリ・ジャイエである。1980年初頭までにアンリはすでにブルゴーニュで神格化され、若い世代や世界中の飲み手を魅了していたが、彼はワイナリーの将来について頭を悩ませていた。というのも、二人娘はどちらもワイン造りに興味を示さなかったのである。そこでアンリは甥のエマニュエル・ルジェにブドウの世話とワイン造りを教え、後継者に育てることを決めた。

 

トラクターのエンジニアであったエマニュエル・ルジェは、1970年代後半にアンリから初めて仕事を教わった。アンリの底しれぬ情熱と深い知識はエマニュエルを大いに刺激した。こうしてエマニュエルは1985年フラジェ・エシェゾー村に自分のワイナリーを立ち上げた。自身の名を冠した初めてのワインとなるが、畑はアンリとその兄弟(ルシアンとジョルジュ)から借りていた。エマニュエルがブドウ栽培とワイン醸造を行い、できたワインの半分を地主に渡すというメタヤージュ(分益小作)であった。

 

1988年にアンリは引退を発表するも、1995年までは醸造に深く関わっていた。翌年畑を全てエマニュエルに引き継ぐが、完全引退する2001年まで一部のワインはアンリ・ジャイエの名でリリースされた。アンリはこの世を去る2006年までエマニュエルのワイン造りを見守った。

 

現在はエマニュエルの息子ニコラとギヨームがドメーヌの指揮を取っている。、エマニュエル・ルジェという天才たちの意思を引き継ぐ彼らは、先代が築き上げた名声と偉大な遺産を前に計り知れないプレッシャーを感じていることは想像に難くない。しかし、畑を見るニコラと醸造を見るギヨームは溢れる才能を注ぎ込み、その名に恥じぬ見事なワインを作っている。

 

ルジェの畑はCros ParantouxとEchezeaux抜きには語れないだろう。Cros ParantouxはRichebourgのちょうど真上に位置する1.1haの小さな畑。ここはフィロキセラと2つの世界大戦で荒れ果て、1940年代に入るまで誰も見向きもしない土地だった。アンリ・ジャイエがこの地の一部を手に入れたのは1950年に入ってからで、年を追うごとに所有面積を増やしていき、1970年には0.72haまでになった。現在この0.72haは全てルジェ家が所有し、残りはMeo Camuzetが所有する。

 

Echezeauxは3区画、約1.4haを所有する。もともとはジャイエ三兄弟のもので、一人ひとりが自分の区画を持っていた。最上は南部にあるアンリの区画(Les Cruots)で、これに隣接するのがジョルジュの区画(Les Clos-Saint-Deni)。グラン・エシェゾーに隣接する区画(Les Treux)には、ルシアンの区画に加えアンリとジョルジュが共同で所有する区画があった。所有は違えどアンリはメタヤージュで全区画の世話をしていたため、ブドウは兄弟のものも手に入った。全てのワインはアンリと(当時アシスタントの)エマニュエルによって区画ごとに分けて仕込まれた。アンリの最後のヴィンテージとなる1995年以前はLucien Jayer、Henri Jayer、Henri Jayerラベルの下部にGeorge Jayerの名が入った3種類のラベルで生産され、アンリとジョルジュの共有区画はEmmanuel Rougetの名でリリースされていた。なお、現在もジョルジュ・ジャイエのブドウ(エシェゾーとニュイ・サン・ジョルジュ)のワインは別ラベルでリリースしている。

 

この2つの畑を筆頭に、1er Les Beaumonts(0.26ha)、ヴォーヌ・ロマネ(1.2ha)と所有畑の多くがヴォーヌにある。ヴォーヌ以外ではニュイ・サン・ジョルジュの北部、ショレイ・レ・ボーヌとサヴィニー・レ・ボーヌにも少しずつ畑を持つ。加えて、広域のエントリークラスのピノ・ノワールをいくつかとシャルドネ、ピノ・ブラン、アリゴテから少量の白ワインとクレマンも作っている。

 

栽培

エマニュエルのブドウ栽培はアンリがそばで見ていた頃から大きく変わっていない。自然を敬い殺虫剤と除草剤は一切使用しない。収量は春の芽かきと夏のグリーンハーヴェストで厳しく制限する。「おじはよく言っていました『全てはブドウから始まる』と。とにかくストイックで週6日は畑にいたことを覚えています。全精力を注いでブドウを育て、丹念にブドウを観察する・・・おじはこれを叩き込んでくれました。また、おじは機械に任せて労働コストを下げるという誘惑に負けたことは一度もありませんでした。土を信じ、ブドウを信じ、そうやって収穫までエスコートするのです。ジャイエ・マジックなんてものは存在しません。一流のワインを作るために必要なのは完璧なブドウですから。」

 

醸造

エマニュエルにはアンリから受けた様々な影響が見受けられるが、中でも超がつくほどの収量の低さには、ブドウの品質向上と、それを維持し続けるという強い意志が見て取れる。「自分が完璧にコントロールできる分だけを作ります。おじのセラーは非常にこじんまりしていましたが、あえてそうしていたのです。ワイン造りの全工程を完璧に把握できる規模感だからです。」こうすることでセラーのキャパシティを超える量のブドウを育てることはなく、仕込むワインの量を増やすこともない。売るためではなく、あくまでも品質ファーストを貫く姿勢こそが高品質を生み出し続ける源泉となる。

 

ブドウは収穫時に畑で厳しく選果し、その後セラーでも選果を行う。完璧とは言えない不適切な粒を丹念に取り除き、健全に成熟したブドウのみを使用する。もちろんブドウは完全除梗し、コールドマセラシオンを行うジャイエ・スタイル。コンクリートタンクに入れたマストを天然酵母で発酵させ、ルモンタージュとピジャージュでマセラシオンを行う。プレス後に樽へ移すが、高い新樽比率もジャイエを彷彿とさせる。フランソワ・フレール、タランソー、キャヴァンといった一流メーカーの樽を使用し、キュヴェによって新樽率と熟成期間が変わる。基本的に上級は新樽100%、熟成は樽で二冬を超す。無清澄、無濾過で瓶詰め。

 

味わい

豪華絢爛というヴォーヌ・ロマネのイメージにぴったりな極めて芳醇な味わい。リッチで甘やかで力強く、スパイシーでクリーミーな官能的スタイル。テロワール由来の味もそうだが、ジャイエ由来のワインメイキングがヴォーヌ・ロマネの個性をさらに引き出している。薄旨系、酸高い、低めのアルコールなどがトレンドの昨今において、高い新樽率はしばしば非難の対象となる。しかし、実際は新樽が悪い訳ではなく、アンバランスさが悪いのである。つまり、新樽を使っても同じレベルの果実味、ストラクチャー、アルコールがあれば、樽はワインをより一層高い次元の味わいへと導いてくれるのである。それに気づかせてくれるのがルジェのワインと言えるだろう。超低収量による凝縮感、比較的遅めの収穫に由来する完熟したフェノール、完全除梗とコールドマセラシオンによるピュアで芳醇なアロマ、澱との長い熟成による厚み、上質なテクスチャー、これらのすべてが新樽を支え、見事な融合を見せる。とくにEchezeaux、Cros Parantoux、1er Les Beaumontsではそれは芸術の域に達しており、樽のロースト感と凝縮した果実味、高いアルコールが相まって鼻孔を突き抜けるような強烈な揮発感、あるいはトーンの高さのようなものが感じられる。

 

実際に樽使いを絶賛する評論家も多く、WAのウィリアム・ケリーは「完熟果実、豪華で贅沢なテクスチャーが樽のタンニンと見事に融合している。新樽率は高いが見事に馴染んでいる」、Vinousのニール・マーティンは「エシェゾーやクロ・パラントゥーの新樽100%は本当に見事。どの産地であっても新樽100%というと多くが果実味とニュアンスをかき消してしまうが、ルジェでは100%がほとんど気にならないほど完璧にワインの一部となっている」。そして、Winehogのスティーン・オーマンはヴォーヌ・ロマネの真髄とも言えるコメントを残している「官能的。ゴージャスでいきいきとしているが同時に洗練されて深みがある」。

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