Lazio(ラツィオ)
ふわっと軽やかで華やかなフラスカーティは ローマ法王や文豪ゲーテさえも虜にした
イタリア中部に位置するラツィオは、ヨーロッパ文明の中心として栄えた永遠の都ローマを州都に持つ。古代ローマ時代からワイン造りが盛んで、ヨーロッパ各地にワイン文化を普及した重要な歴史的産地である。現在は主に白ワインで知られ、生産量は同州の約70%を占める。大半がマルヴァジアとトレッビアーノ・トスカーノから作られる。中でもローマ法王が愛飲し、文豪ゲーテが「楽園のようだ」と酔いしれたフラスカーティはとりわけ世界的に有名である。
ラツィオのワインはローマ時代や中世では有名だったものの、20世紀中盤から後半にかけてのフォーカスは巨大企業による安価な大量生産ワインであった。ブドウの収量を上げに上げ退屈なワインを量産した結果、評判は落ち畑の規模と生産量が減ってしまった。一方で、少数ではあるが高品質なワインを生むワイナリーも存在し、イタリアを代表するエノロゴの一人リッカルド・コタレッラのワイナリーであるファレスコ(Falesco)がある。
目次
テロワール
ラツィオは北をトスカーナ、南をカンパーニャ、北東にウンブリア、東にアブルッツォ、そして西はティレニア海に面している。温暖な地中海性気候を持ち、標高(300mまで)や海風によって気候が緩和されるためブドウが安定して完熟する。特に沿岸部では冷たい海風が吹くことで乾燥した暑い気温が和らぎ、一方で山岳地帯ではアルプスのおかげで北東からくる冷たい風が遮られ、ブドウ栽培に理想的な環境となっている。降雨量は十分あり、夏にはほとんど降らないため病害菌のリスクは比較的低い。
ラツィオの味わいを決める鍵となるのは火山性の丘陵地帯がもたらす肥沃で水はけの良い土壌である。ラヴァ(Lava)やトゥファ(Tufa)と呼ばれる火山性土壌にはカリウムが豊富に含まれており、ブドウの成長には欠かせない。このタイプの土壌はとりわけ白ブドウに適しており、ふわっとした軽やかさときめ細かい華やかさ、そして見事な酸が生まれる。
味わいの特徴
伝統的なラツィオの白ワインは肉付きがよく丸みを帯びたアッボッカート(薄甘口)な早飲みワインであったが、今日ではより軽やかでドライ、クリスピーな味わいが多く見られる。中でもラツィオを代表するのがフラスカーティで、柑橘類やピーチの柔らかな果実味にキビキビとした酸、ふわっとした華やかな味わいは幅広い食事と合う。伝統的にフラスカーティはマルヴァジア・デル・ラツィオから作られていたが今日ではマルヴァジア・ディ・カンディアが多く見られ、それぞれ単一あるいはブレンドのメインとして使用される。前者の方がグレープやピーチなどのフレーバーがより強いが、栽培家からは後者が好まれており、これは病害に強くより多産なためである。また、30%までブレンドが可能なトレッビアーノ・トスカーノもよく見られる。
ほとんどのフラスカーティではブドウ由来の果実味を保つためにステンレスタンクによる低温発酵が行われ、その後は少しタンクで落ち着かせてからリリースされ、多くが1-2年以内に飲まれる。上級となるフラスカーティ・スペリオーレは2011年に導入された比較的新しいDOCGで、フラスカーティよりも低い収量が求められより力強いフレーバーが特徴となる。またアルコール度数も上がるためフルボディ寄りのスタイルとなる。フラスカーティ全体の約20%がこのDOCGにあたる。通常のフラスカーティ同様、ほとんどが果実味を保つためにステンレスタンクで熟成させるが、一部では樽発酵・熟成も見られる。
一方赤ワインで抑えておくべきは地場品種のチェザネーゼで、この品種は多産で晩熟だが、高品質を生み出すポテンシャルを持っている。特に内陸の標高高いエリア(600m)で育つ一部のチェザネーゼは大きな日較差が生むフレッシュな果実味と見事な酸を兼ね備える。こうしたワインは力強いアロマを持ち、レッドチェリー、プラム、薔薇の花びらを感じさせ、獣や鉄っぽいニュアンスが現れる場合もある。中程度のタンニンと美しい酸を持つ、比較的アルコールの高い味わいとなる。
基本的には大樽またはステンレスタンクで熟成され、品種の個性である香り高さをマスキングしないように注意が払われる。
中価格帯が多いが、中には高品質のワインも見られ、ダミアーノ・チョッリ(Damiano Ciolli)のものは見逃せない。
生産量という点ではメルローやサンジョヴェーゼがリードしており、ほとんどが地元で消費される安価なワインとなるが、一部のボルドーブレンドスタイルでは上質なものが見られる。
国際品種から作られるこうしたワインのほとんどは広域のIGT Lazio表記のラベルとなる。
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