Lisboa(リスボア)
野心あふれる若い世代が 地場品種や小地区をエネルギッシュに盛り上げている
ポルトガルの首都リスボンを擁するリスボアは、中央西部の大西洋沿岸に位置するワイン産地である。
この地のワイン産業は複数の巨大な協同組合に支配されてきた歴史がある。協同組合は個人のクリエイティヴな試みやパッションではなく、あくまで生産性にフォーカスするため、リスボアでは品質ではなく量が重んじられてきた。その結果、高い収量が取れかつ病気に強いブドウ品種のみが選ばれ、品種の個性や各々のスタイルは軽んじられてきた。
しかし、近年のポルトガルワイン産業の発展によってリスボアの状況は変わりつつある。畑の見直しや生産者のノウハウが蓄積してきたことでワインの品質が向上しており、以前に比べより多くのワインがDOCやより広域エリアのVRといったアペラシオンに認定されている。
こうした品質認定ワインのうち、約40%がカーサ・サントス・リマ(Casa Santos Lima)から生まれており、安価〜中価格帯の主導権を握っている。
目次
テロワール
リスボアは細長い産地で、首都リスボンから150km北に伸びている。海岸山脈がエリアを2つに分割しており、西側エリアは大西洋に沿って広がっている。このため冷涼で湿った天気と強い海風が特徴で、ブドウ栽培を困難にしている。小規模なDOCコラレス(Colares)では、フィロキセラフリーの深い砂質土壌が有名で、ここに植わる接ぎ木なしの高樹齢のブドウは、とりわけニューウェーブ系の生産者たちの注目の的となっている。
一方、東側エリアは山脈に守られているため栽培がしやすく、ここからリスボア最上のワインが生まれる。トウリガ・ナシオナルやティンタ・ロリスから生まれる複雑で力強いワインはDOCアレンケール(Alenquer)のシンボルとなっている。一方、DOCブセラス(Bucelas)では白ブドウのアリントからフレッシュでミネラルに富んだワインが生まれる。
味わいの特徴
質ではなく量が全てであった時代は、残糖の甘さによってきつい酸と未熟なタンニンをごまかす劣悪なワインが多く見られた。しかし、ポルトガルのEU加盟に伴いワイン造りは量より質にフォーカスされ、1990年以降、キンタ・ド・モンテ・ダイロ(Quinta do Monte d’Oiro)やキンタ・デ・チョカパーリャ(Quinta de Chocapalha)といった野心あふれる造り手が、DOCアレンケールで高品質なシラーやトウリガ・ナシオナルを生み出した。
現在リスボアでは幅広いブドウの栽培が認められており、地場品種ではトウリガ・ナシオナル、アラゴネス、アリントなどが高品質のポテンシャルを秘めているとされている。また、近年成長目覚ましいのがリスボアに広く植わるカステランという黒ブドウで、軽やかでフレッシュなスタイルから「温暖エリアのピノ・ノワール」とも言われている。国際品種ではシラー、カベルネ・ソーヴィニヨン、ピノ・ノワール、ソーヴィニヨン・ブラン、リースリングなどが見られる。
海岸山脈の東側(内陸側)のDOCアレンケールはトウリガ・ナシオナルやアラゴネスからフルボディの赤ワインを生む。DOCブセラスでは白ブドウのアリントから酸の高いワインが生まれる。ステンレスタンクで仕込み瓶詰め後すぐに売られるものもあるが、澱とのコンタクトや樽熟成を取り入れてより上質なテクスチャーを持つスタイルもある。一方、海岸山脈の西側にある海沿いの小規模DOC コラレスでは、リバイバル的な動きの中で一部の生産者がラミスコ(黒ブドウ)やマルヴァジアといったローカル品種から興味深いワインを生み出している。
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