Oakville(オークヴィル)
オーパス、ハーラン、ダラ・ヴァレ、スクリーミング・イーグルといった 泣く子も黙る珠玉のワイナリーたちが軒を連ねる
オークヴィルは全米のカベルネ・ソーヴィニヨンの頂点に君臨するワイン産地で、ラザフォードとヨントヴィルに挟まれたナパ・ヴァレーの心臓部に位置する。
この地のブドウ栽培は1868年にまで遡ることができ、当時Henry Walker Crabbが最初の畑を作り、その場所をTo Kalonと名付けた。約100年後にRobert Mondavi(ロバート・モンダヴィ)がその畑を購入したが、名前は当時のまま残された。
このTo Kalonのすぐ南にはHeitz Cellar(ハイツ・セラー)の有名なMartha’s Vineyardがあるが、これら2つの畑がオークヴィルの中でもとりわけ傑出しており、全米最上と評される最高峰のカベルネ・ソーヴィニヨンが生まれる。MondaviやHeitzを筆頭に、この地には全米を代表する超一流ワイナリーを見つけることができる。Harlan Estate(ハーラン・エステート)やFar Niente(ファー・ニエンテ)、Opus One(オーパス・ワン)などは西側のマヤカマス山脈の下部に見られ、東側のヴァカ山脈の付近にはScreaming Eagle(スクリーミング・イーグル)やPlumpJack(プランプジャック)、Dalla Valle(ダラ・ヴァレ)らが君臨する。
まさにカベルネのメッカと呼ぶにふさわしく、周辺のナパやソノマにいる多くのワイナリーたちもTo Kalonなどの著名畑のブドウを購入しブレンドすることでプレステージな長熟ワインを作っている。
目次
テロワール
オークヴィルはナパ・ヴァレーの中心部に位置する。これは北部の熱と南部の海からの冷気や霧を両方享受できることを意味する。一般的に南隣のヨントヴィルやスタッグスリープよりも温暖で、夏には日中35℃近くまで上がるが、夜間と早朝は霧の影響を大きく受けるために気温が下がり、北隣のラザフォードよりはやや冷涼となる。この冷気はブドウが夏の日差しで日焼けてしまうのを防ぎ、成長スピードをゆっくりと調整してくれるため糖と酸の見事なバランスが生まれる。
ラザフォードやセントヘレナといった谷底北部のものと比べると、オークヴィルのカベルネには完熟した力強さが見られる一方で、しっかりとした酸、エレガンス、そしてエネルギーの共存が見られる。加えて冷気の影響はユーカリやミントのような清涼感のあるニュアンスとなって現れる。
オークヴィル内の西と東でも異なる性格が見られ、西側のヒルサイドでは午後の日差しを避けることができワインはより陰気でミネラルに富んだスタイルとなる。一方、火山性の東側のヒルサイドでは午後の強い日差しをたっぷりと浴びるためドライフルーツのノートを帯びた陽気なスタイルとなる。
オークヴィルの地形は多様で谷底から両サイドの山脈の麓までに渡る。このため土壌も様々なものが見られる。東側(ヴァカ山脈側)は鉄分に富む赤褐色で火山性物質が豊富に混ざった砂利とローム質土壌となる。中央部では表土がより深く、濃い色でローム質土壌が主体となる。西側(マヤカマス山脈側)はTo KalonやMartha’s Vineyardなど位置しており、緩やかな斜面に広がる水はけの良い砂利質の扇状地が見られる。
味わいの特徴
オークヴィルでは75%以上のワインがカベルネから生まれる。大きく差を広げてメルローが次に来るが、単一品種で仕込まれることは少なく、ほとんど全てブレンドされる。谷底エリアであるため、山側のカベルネと比べると味わいはより丸みを帯びてフルーティー。ジューシーなブラックカラントやブラックベリー、ブラックチェリー、完熟プラムなどにリコリスやクローヴなどのスパイス、さらにミントなどのハーブのニュアンスを持つ。シリアスさはそこまで強くなく、豪華絢爛だがどこかチャーミングな味わいで、上質なタンニンがきれいに溶け込んだスタイル。一般的に開放的で肉付きがよく陽気なカベルネと言える。山側はストラクチャーの強さやタンニンの硬さが目立つために美味しく飲むまでに時間が必要だが、オークヴィルのカベルネは若いヴィンテージでも比較的甘やかさが前に出ており早くから楽しめる。