Penedes(ペネデス)

スペイン泡の代名詞であるカヴァ

その絶対的中心地として君臨するのが

生産量90%以上を誇るペネデス

スペイン北東部カタルーニャ州には観光都市として名高いバルセロナがあるが、ペネデスはここからほんの数キロ地中海を下った場所にある。地中海沿岸部から内陸の山岳地帯まで実に多様な地形をカバーするペネデスは、ワインの生産量とスタイルの幅広さという点でカタルーニャの最重要産地と言える。辛口、甘口、スパークリングの3つのスタイルのワインをそれぞれ赤、白、ロゼの3色で生産することができ、またスペインの泡の代名詞であるカヴァのほとんどがここペネデスから生まれる。

歴史を見ると、ブドウ栽培の歴史は長いものの20世紀になるまでペネデスのワインが注目されることはなく、また輸出もほとんどされていなかった。1960年代にペネデスDOが導入されると、フランスのディジョンで教育を受けたミゲル・トーレス(Miguel Torres)が先陣を切ってクオリティにフォーカスしたワイン生産を開始した。温度管理機能付きのステンレスタンクの導入は、クリーンでフルーティーなモダン・ワインメイキングの幕開けとなり、ジャン・レオン(Jean Leon)とともにメルローやカベルネ・ソーヴィニヨンといった国際品種をこの地にもたらした。1960-70年代というスペインで最も早い時期に近代化を導入したこともあり、ペネデスのワインはモダン・スパニッシュ・ワインメイキングの成功例になると多くの期待が寄せられていた。しかし、品質水準は比較的高いものの、ペネデスのワインが世界のワイン評論家から大賛辞を受けることはなかった。この理由の一つに、近隣のプリオラートから驚くほど品質の高いニュー・ウェーブ・ワインが台頭し、世界を圧巻してしまった背景がある。悲しいかな、皆の注意がペネデスから離れてしまったのである。

 

テロワール

温暖な地中海性気候を持つペネデスは、非常に乾燥した暑い夏と穏やかな冬を持ち、春と秋に適度な雨が降る(年間約500mm)。土壌は基本的にはローム質で一部石灰が含まれており、生育期を通して水分をしっかり蓄えることができる。

海岸丘陵がつくる複雑な地形を持つペネデスは、ざっくりと3つのエリアに分割される。

海沿いの低地エリア(Baix Penedès)は、標高の低さと海への近さによって日較差の小さい温暖な気候が特徴となる。気温が最も高いため、モナストレル、ガルナッチャ、カリニェナなどのフルボディ系のワインのソースとなっている。

一方、内陸の山岳地帯(Alt Penedès)では、標高は500-800mとなる。高い標高がもたらす涼しい気候と大きな日較差が特徴で、春の霜害リスクも高くなる。最もフレッシュなワインが生まれ、シャルドネやソーヴィニヨン・ブランに加え、リースリングやゲヴュルツトラミネール、またピノ・ノワールも栽培されており、ブドウは高い酸を保持しながら完熟することができる。野心的な生産者が集まるものここで、低収量で品質に特化したワインを作っている。

そして最後は、海沿いと山岳地帯の間に位置する中間エリア。海沿いエリアと比べると標高が高く、500m付近まであるので一部ではしっかりと冷涼効果が得られる。カヴァを作る3品種(チャレッロ、、パレリャーダ)が多く植えられており、またメルロー、カベルネ・ソーヴィニヨン、テンプラニーリョにシャルドネなどが見られる。

 

味わいの特徴

ペネデスでは白ブドウが全体の約80%を占めており、チャレッロ、、パレリャーダが主要な品種となっている。ほとんどがカヴァのブレンドで使用されるが、一部でスティルワインも見られる。近年ではシャルドネも増えてきており、モスカテルやソーヴィニヨン・ブラン、ゲヴュルツトラミネールにリースリングなども見られる。一方、黒ブドウではメルローが最も多く、次いでカベルネ・ソーヴィニヨン、テンプラニーリョ、ピノ・ノワール、シラーとなっている。元来ペネデスの赤はクラシックなスペイン品種から作られてきており、ガルナッチャやカリニェナ、モナストレルにテンプラニーリョなどが多かったが、今日では多くのワインメーカーが国際品種へシフトしており、メルローやカベルネ・ソーヴィニヨンが台頭している。

ペネデスを語る上で外せないのがスペインの泡を代表するカヴァ。
シャンパーニュと同じ製法(瓶内二次発酵)で作られるこのワインは、スペインのDOの一つだが、生産エリアではなく製造方法に指定された極めて特殊なDOと言える。生産エリアはカタルーニャやリオハなど複数にまたがり、味わいはエリアによって異なるがその絶対的中心地となるのが生産量90%以上を誇るペネデスである。
とりわけサン・サドゥルニ・ダノイア(Sant Sadurni d’Anoia)の街周辺から多くのカヴァが生まれる。市場を掌握するのは2大巨頭のコドーニュ(Codorniu)とフレシネ(Freixenet)で、圧倒的な流通量でビジネスを展開している。

シャンパーニュと同じ製法で作られるものの、その個性が大きく違うのはブドウ品種にある。カヴァのブレンドの多くを占めるのがマカベオで、シトラスやフローラルなノートを持つ。明確な個性を持つのはチャレッロで、特徴的なヴェジタルな要素、あるいはゴムのようなニュアンスがある。比較的ニュートラルなのがパレリャーダで、クリスピーでりんごを感じさせるフレーバーを持つ。シャルドネなどの国際品種もカヴァのブレンドに用いられるが、全体で見ると規模は小さく、ピノ・ノワールは主にカヴァのロゼに使われている。

前述の通り、カヴァはエリアを限定しない特殊なDOであるがゆえに、その土地の個性にこだわった生産者はその認証から距離を置こうとする動きが近年起きている。コレット(Colet)やア・テ ロッカ(AT Roca)などの野心的な作り手はカヴァDOを捨てて、より地理的に明確な個性を持つペネデスのポテンシャルを表現している。こうした動きは他者をインスパイアしており、現在多くのカタルーニャの生産者は巨大なカヴァのカテゴリーから距離を置き、ラベルにはペネデスや単一畑を意味するCava de Paraje Calificadoなどの表記を、あるいはアペラシオン自体を全く表記していないものなどが見られる。

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