Toro(トロ)

粗野で無骨なトロのイメージを見事に覆したヌマンシア

国内外から熱い視線を受けるトロの魅力は

力強い果実味の中にある絶妙なヌケ感

トロはスペイン北西部カスティーリャ・イ・レオンにあるワイン産地である。ティンタ・デ・トロから作られるパワフルなフルボディワインで近年注目度が高まっている。トロはワイン生産の長い歴史を持つが、大きな都市や港から離れているため、他産地に比べてスポットライトを浴びることはあまりなかった。しかし、リベラ・デル・デュエロの人気が上昇し、地価が上がると多くの投資家たちは近隣のトロに興味を示し始めた。ここ20年でワイナリー数は大幅に伸び、1998年ではわずか8軒だったが、2006年までに40軒、2018年では62軒にまでなっている。

スペイン国内ではベガ・シシリア(Vega Sicilia)やマウロ(Mauro)、また著名なワインメーカーであるテルモ・ロドリゲスなどがこの地に投資している。著名人の熱い視線はスペインだけにとどまらず、ボルドーのリュルトン家とミッシェル・ロランもティンタ・デ・トロに惚れ込み、ジョイント・ベンチャーであるカンポ・エリセオ(Campo Eliseo)を立ち上げている。またLVMH社も2008年にトロのプレミアムワイナリー・ヌマンシア(Numanthia)を買収している。

トロの産地のポテンシャルを開花させたのは、このヌマンシアのおかげと言っても過言ではなく、昔はトロのワイン=タンニンゴワゴワの男性的な味わいであったが、砂質土壌の特徴を見事に表現した彼らのワインは果実味はしっかりあるもののヌケ感があるために重くなりすぎず、絶妙な味わいとなる。ヌマンシアがもたらした成功は他ワイナリーたちを感化し、皆こうしたスタイルを追い求めるようになっていった。

 

テロワール

トロはデュエロ川が流れるカスティーリャ・イ・レオンの西部に位置する。内陸に位置するため大陸性の気候を持ち、乾燥した暑い夏と寒さの厳しい冬が特徴となる。またカスティーリャの高台の上に広がっているため、標高が600-800mと高い。日中は強烈な太陽によってブドウが完熟する一方、夜間は冷えるためしっかりと酸を保つことができ、またアロマやフレーバーも過熟にならず見事なバランスが生まれる。

ToroにあるAbanicoが所有する畑

トロは北西に広がる大西洋からの影響を受けないため、春には霜害がリスクとなることもある。また年間降雨量も平均350mmと砂漠のように少ないが、灌漑は7月から収穫後まで禁止されている。この水分不足に立ち向かうために、多くの畑では低密樹かつブドウ木一本あたりの房数の制限をすることで対処している。仕立ては株仕立てが多く見られる。

土壌はほとんどが砂質なためフィラキセラ・フリーとなっており、約60%のブドウは接ぎ木されていない。高樹齢もトロの特徴の一つで、5500haの畑の内、約1200haが樹齢50年以上、約125haで樹齢100年を超えるブドウが見られる。また、この砂質土壌こそがトロの味わいを決める大きな要因となっており、しっかりとした果実味がありながらも砂地に由来する抜け感があり、この見事なバランスが他にはない味わいを生み出している。

樹齢150年のブドウ樹

 

 

味わいの特徴

トロの主要なブドウはティンタ・デ・トロ。この品種をテンプラニーリョと見る人もいるが、一方でトロの土着品種と見る人もいる。どちらの場合にしろ、ティンタ・デ・トロは強烈な太陽のおかげで、リオハやリベラ・デル・デュエロといった他エリアに生息するテンプラニーリョよりも果皮が厚く、その結果ワインはより色が濃く、タニックな味わいとなる。

トロは力強い赤ワインを生み出すのに理想的なエリアで、生育期の暑い気候、強烈な太陽と低収量といった条件が合わさることで、色の濃い、フルボディで高いアルコールと豊富なタンニンを持つワインが生まれる。完熟したフレーバーにはブラックベリーやブルーベリーがある。一方、夜は冷えるため完熟したフルボディでありながらも比較的高い酸が楽しめる。西部の標高高いエリアや北向き斜面では、より涼しい気候のためブドウの成熟スピードが遅くなり、フレッシュ感のあるより洗練されたスタイルとなる。

安価〜中価格帯のワインでは、カルボニック・マセレーションを行うことでフルーティーさを強調しながらタンニンを抑え、早飲みスタイルに仕上げたものが味わえる。一方、プレミアムワインはオークで熟成される。こうしたワインの果実味は非常に凝縮されているため、高い新樽率でも見事なバランスが取れる。アメリカンオークもフレンチオークもどちらも用いられている。トロの最高峰テソ・ラ・モンハ(Teso La Monja)の一部のワインは小売価格10万円以上のスーパープレミアム価格で取引される。

 

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