Pfalz(ファルツ)
隣接するアルザスと共通点の多いファルツ 晴れ間が多く乾燥した気候からは とりわけ リッチで完熟感のある味わいが生まれる
ドイツ西部に位置するファルツは、東を流れるライン川と西に横たわるハールト山に挟まれるようにして細長く広がっている。このハールト山はフランスのヴォージュ山脈からつながっており、アルザスをそのまま北上するとファルツにぶつかる。この地を代表する生産者Burklin-Wolf(ビュルクリン・ヴォルフ)、Friedrich Becker(フレードリッヒ・ベッカー)やVon Winning(フォン・ウィニング)らが世界レベルのワインを生み出していることから品質はお墨付きであるが、生産量という観点から見てもファルツはドイツにおいて最重要エリアの一つである。約23,500haの畑にブドウが植樹されており、これはドイツにある13の生産エリアの中で上から二番目の規模を誇る。唯一ファルツよりも大きいのは、北に隣接するラインヘッセンである。
ファルツでは約65%が白ブドウで、リースリングを筆頭に、ミュラー・トゥルガウ、ピノ・ブランやピノ・グリが見られ、黒ブドウではドルンフェルダーやピノ・ノワールなどが見られる。
■テロワール
隣国フランスのアルザスにそびえるヴォージュ山脈は西からの冷気や湿気を遮り、雨よけのシェルターとして働いている。このため山の反対側に広がる畑は年間通して晴れ間の多い乾燥した気候となるが、ファルツのハールト山もこれと全く同じ役割を果たしてくれる。標高675mとそこまで高さはないものの、雨よけとしての機能を十分に果たしてくれるため、ファルツは比較的温暖でありドイツで最も乾燥した気候となっている。これがファルツの個性であり、特にリースリングでそれが顕著に現れる。他エリアに比べてより凝縮感があり、ボディに厚みがあるスタイルが味わえる。
最上の畑はファルツ北部に集まっており、特にBad Durkheim(バート・デュルクハイム)、Wachenheim(ヴァッヘンハイム)、Forst(フォルスト)、Deidesheim(ダイデスハイム)、Ruppertsberg(ルッパーツベルク)といった村の周辺にみられる。これらの畑に共通するのは、南−東向きの急斜面でハールト山の麓に位置しているということである。最高の日当たりをもつ畑から完熟したフルボディのリースリングが生まれる。土壌のタイプは様々で、石灰岩、砂岩、玄武岩、粘土が見られる。ファルツ南部ではより肥沃な砂岩土壌が広がっており、歴史的には安価なワインの供給地となっていた。しかし近年、とりわけピノ系品種の品質向上がめざましく、若い世代に期待が寄せられている。
■味わいの特徴
リースリング大国であるドイツには各地に銘醸地が広がるが、モーゼルやラインガウ、ナーへなどに比べ、ファルツのリースリングはとりわけリッチで完熟感が強く、より厚みがあるフルボディの味わいとなる。これは南に隣接するアルザスの味わいに近いとも言うことができる。どちらも山と川に挟まれた産地であり、晴れ間の多い乾燥した気候を持ち、ブドウ品種(リースリング、ピノ・ノワール、ピノ・グリ、ピノ・ブランなど)も同じと共通点が多いためである。
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