Ramonet(ラモネ)

「ラモネの白ワインは、赤ワインでいうところのHenri JayerやDRCだ。」かつてクライヴ・コーツはこう記したが、これ以上の褒め言葉は存在しないだろう。ラモネはシャサーニュ・モンラッシェの頂点に君臨する生産者であり、そこに議論の余地はない。村名から特級まで全てのクラスで卓越した品質のワインを生み出すラモネは、誰もが憧れるブルゴーニュのスター生産者である。

 

歴史

創業者ピエール・ラモネがリュック一つでブルゴーニュに来たのは1920年代。当時、景気の低迷とアメリカ禁酒法の影響でブルゴーニュの地価は今では考えられないほどに安かった。ピエールは懸命に働いてブドウを買い、ワインを作って生計を立て始めた。彼は1926年頃に初めて自分の畑(1er Les Ruchottes)を買うが、荒れ地であったため手で開墾しなければならなかった。初の収穫は1929年に行われ、翌1930年にドメーヌ設立。1934年にはラモネの名を冠した自社瓶詰めワインの生産を開始する。そしてこの2年後の1936年、ピエールの運命が大きく変わる。その年シャサーニュ・モンラッシェからほど近いコルポー村では恒例のワインイベントが開催され、米国インポーターのフランク・スクーンメイカーがワインを試飲していた。あるブースでとびきり不味いワインを試飲する羽目になった彼は隣のブースに行き、お口直しができるようなものはあるかと聞いた。そのブースに立っていたのがピエールだった。ピエールのLes Ruchottesを口にしたフランクは、雷に打たれたような衝撃を覚えた。数カ月後再びブルゴーニュに戻ったフランクは、1934年ヴィンテージのピエールのワインを買い漁った。この時フランクに同伴していたのがレイモン・ボードゥアンで、彼は著名なフランスワイン評価誌Revue de Vin de Franceの生みの親であり、かつ一流レストランのコンサルタントという超有名人。以前からラモネのワインに目をつけていたレイモンドは改めてそのワインに感動し、すぐにその品質の高さを公言すると、瞬く間にその名が業界内に広まっていった。

名声が確立する一方でピエールは地道に畑を買い足していった。40年代には1er Clos de la Boudriotte、Morgeot、Caillerets、Clos Saint-Jean、さらにはVergersを手に入れる。1957年にはBâtard-MontrachetとBienvenues-Bâtard-Montrachetを、そして1978年にはついにMontrachetに小さな区画を(現金一括払いで!)購入する。

その後ピエールは息子アンドレにドメーヌを引き継ぎ、1994年でこの世を去る。アンドレは2011年に他界し、その後をピエールの孫にあたるノエルとジャン・クロード兄弟が継承した。現在ノエルは引退し、ジャン・クロードが全面的に指揮を取る。2014年から全てのワインが“Jean-Claude Ramonet”名義となる。2016年からはジャン・クロードの二人娘がワイナリーに参画している。

 

現在19.51haの畑からワインを生産する。グラン・クリュの筆頭格であるMontrachet(0.26ha)はピュリニーサイドの区画で、左はBouchard、右はLouis Latourのソース元であるBoillereault de Chauvignyに挟まれている。Chevalier Montrachetは自社所有ではなく、1998年からJean Chartronとブドウ(0.09ha分)を交換して作っている。Batard Montrachetはピュリニーサイドに0.64ha、Bienvenues Batard MontrachetはBatardとの境に近い南端エリアに0.45haを持つ。シャサーニュ1erは圧巻のラインナップで、La Boudriotte(1.23ha)、Morgeot(1.21ha)、Les Ruchottes(1.18ha)、Les Vergers(0.53ha)、Les Caillerets(0.34ha)、Les Chaumees(0.12ha)。なお、Clos des Caillerets(1.0ha)とAbbaye de Morgeot(0.25ha)はフェルマージュ。村名シャサーニュは1.12haの規模で、シャサーニュ以外ではピュリニー、、ペルナンからも生産しており、広域のシャルドネに加えアリゴテによるブーズロンもある。
一方、赤ではシャサーニュ1er Clos de la Boudriotte(1.01ha)、Clos Saint-Jean(0.79ha)、Morgeot(0.59ha)が中心となる。加えてペルナン、広域ブルゴーニュとパストゥグランなども作っている。

 

栽培

ラモネの栽培哲学は「高樹齢と低収量」といたってシンプル。このため樹齢18年以下のブドウは基本的に格下げされ、上級キュヴェには使用されない。

 

醸造

ブドウはプレス前にごく軽く破砕し、プレス後の果汁は清澄しない。発酵はステンレスタンクで始め、途中で樽へと移される。新樽は基本1/3程度と決して使いすぎないが、モンラッシェは例外で100%使用する。熟成期間は通常12-15ヶ月(年によっては18ヶ月)で、この間バトナージュはほとんど行わない。また熟成中はラッキングも行わないため、ワインは多くの澱とともに長い時間を過ごす。これが非常に厚みのあるテクスチャーを生む。

 

味わい

コシュ・デュリやルーロ、ピエール・イヴ・コラン・モレなどに見られる「より無駄のない、より還元的な美」を追求するスタイルは、多くのフォロワーを生んできたが、ラモネの味筋はこれとは異なる。WAは「豊かでありながら鋭い」という言葉を残したが、まさにこれだろう。まず頭に浮かぶのは、完熟したりんごの蜜や白桃などの甘やかさ、そして密度である。また、極めてなめらかで艶っぽいテクスチャーもこの豊かさに寄与する。アタックで十分な厚みと広がりを感じ、粘性が満足感を与えてくれる。そこから一転、濡れた石を思わせるミネラルと快活な酸が口内を引き締め、一気に味わいの焦点が定まっていく。アタックのエネルギッシュさが一切ブレずに真っすぐ進んでいき、切れのあるフィニッシュにつながっていく。豊かさと強固なストラクチャーの共演。これがラモネの味わいの大筋である。さらにプラスαの要素として特徴的なのが、いわゆるラモネ香と呼ばれる清涼感である。これはフレッシュなハーブやミント(あるいはメンソール)を感じさせるスーッとしたアロマで、ラモネのワインに共通して見られる。これがスパイス的な役割を果たすことで、味わいの雰囲気がより涼しくなり、豊かさの中に確固とした気品が備わる。

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