Rioja(リオハ)
世界に誇るスペインの銘醸地 ベリー系香る樽熟成の風味豊かなスタイル 熟成期間による分類からテロワール重視の傾向へ
数あるスペインの産地の中でも品質・知名度ともに最高位にあるのがリオハである。
スペインの中央にマドリードがあるとすると、そこから北東に330kmほど進むと見えてくるこのエリアは、美食の地バスクがその一部を治めているという意外な事実もある。今でこそ世界的な知名度を誇るリオハだが、ワイン産地として発展したきっかけには実はボルドーのネゴシアンが絡んでいるのをご存じだろうか。1850年以降、ネゴシアンたちは陸路をたどって南下しスペインのこの地に流れ着いたが、これは当時フランスがフィロキセラで壊滅的な被害を受けており、ネゴシアンたちはその傷の癒しを求めて新たなワインを探しに来たという背景がある。そして、この時の彼らとの交流が後にリオハのトレードマークとなる「オーク樽」の文化をもたらしたことも忘れてはならない。その後リオハは1933年にスペイン初となるDO産地に認定され、1991年には最高品質の証であるDOCaに格上げされた。
目次
■テロワール
スペインの北東を流れる全長930kmのエブロ川、このうちアーロ村からアルファロ村までの約100km地帯に広がっているのがリオハである。西から順にリオハ・アルタ、リオハ・アラベサ、リオハ・オリエンタル(旧名リオハ・バハ)と3つのエリアに分かれている。川の北西には広大なカンタブリア山脈が連なりこれがシェルターの働きをすることで、冷涼で湿った大西洋の影響が緩和される。アルタの土壌は鉄を含む粘土がメイン。そのため複雑で力強い果実味が特徴となる。比較的標高の高いアラベサは粘土石灰質土壌となるため、石灰による引き締め効果で酸のきれいなエレガントなスタイルとなる。東側に位置するオリエンタルは標高も低くなり、気候も地中海性を帯びる。そのため暑く乾燥しており、肥沃な粘土からは酸の控えめなフルボディスタイルが生まれる。グルナッシュの割合が多くなるのも特徴だ。
■味わいの特徴
リオハと言えば、ベリー系香る樽熟成の風味豊かなスタイル。樽熟成とは切っても切れない関係にある。熟成期間よってカテゴリが分かれていることは周知のとおりで、Joven, Crianza, Reserva, Gran Reservaとなっている。熟成が長い=高価で高品質、というイメージが持たれがちだがCrianzaやReservaの方が美味しく飲める場合もある。
確かにGran Reservaは素晴らしい品質のものは本当に美味しいが、中にはリリースまで5年という長い熟成に耐えられないワインも存在する。このような果実味が抜け落ちてしまったワインは甘みがなくなるため、酸とタンニンが目立つ樽の風味が浮いたワインとなる。長く熟成させればよいという単純な話ではなく、長期熟成に耐えられるだけの酸、タンニン、果実味を備えたブドウでなければ熟成の恩恵は受けられないのだ。
一方でCrianzaはリリースまで2年、Reservaは3年と程よい期間となっている。このため、果実由来の甘みが残りつつも酸やタンニンが溶け込み、まろやかな口当たりと円熟感が同時に楽しめる。味わいバランスもよく価格も手ごろであれば選ばない手はない。
産地全体の味わいスタイルの変遷を見てみると、昔は発酵・抽出は比較的早めに終わらせ、アメリカンオークの樽で数年と樽熟期間を長くとっていた。色調が淡く、ココナッツやバニラ、甘いスパイスが香るワインがリオハの味だった。一方、近年では抽出を長めに取り、瓶詰めまでの期間は短くする。樽はアメリカンよりもフレンチオークが主流となり、色味の濃い、果実がより前に出たモダンなスタイルとなっている。
■2018年の新ルール
リオハの産地規模は決して小さくないが、ラベル上は単に「リオハ」と名乗るだけで見た目はどれも同じように見え、中身の個性や品質にどのような違いがあるか飲み手にはいまいちよく分からないままだった。この状況を打破すべく2018年にブドウ産地による分類が導入され、これによって土地の個性からくる違いを明確に示すことができるようになった。新たに導入された分類基準はブドウが生産された区域を3段階に分類。広域区分から順に、Vinos de Zona (VZ) → Vinos de Municipio (VM) → Viñedos Singulares (VS)
となっており、VZはアルタ、アラベサ、オリエンタルのゾーンを、VMは村名、VSは単一畑を示している。
従来の熟成年数のみによる分類から、この新しい産地の分類が加わったことで生産者たちはより土地の個性を表現しようと情熱を燃やしている。これがリオハ全体の品質向上につながるのは間違いなく、こうした好循環が見られる今後のリオハは改めて注目していくべき産地の1つに挙げられるだろう。
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