Saint-Emilion(サンテミリオン)

保守的なフランスワイン界の特例?10年ごとに見直される格付け

品種×土壌×生産者 無限の可能性が広がるアペラシオン

賛否両論ガレージワイン

■特徴

街並みが文化遺産にも登録される、美しい銘醸地。大陸性気候の影響と2つの河に挟まれているおかげで、冬でも比較的暖かく春の霜も避けることができる。

9つの村から成るこの地域のブドウ耕作面積は5500haと広大で、土壌も多種多様。

それに相まってAOCサン・テミリオン・グラン・クリュ、プルミエ・グランクリュ・クラッセ、グラン・クリュ・クラッセなど名称・呼称が多いため、なんとなく面倒な印象が否めない。

それも格付けは10年ごとに改正される。まさにワイン初心者泣かせのアペラシオン。

しかしその味わいは肉づき良くまろやかで、外交的なものが多いため非常にとっつきやすい。

2022年に面倒な格付けから撤退を発表したCh. Angelus

多様なテロワール

 

土壌は全体的に粘土を多く含み、メルロの栽培に適しているため全体の65%でメルロが栽培されている。

地形が台地、丘陵、平地と変化に富んでおり、それによって土壌も多種多様。

主に街の中心部から東にかけて優良シャトーは密集しており、逆にそれ以外の地域は土地が肥沃でブドウの栽培には適さない。

例外としてポムロールとの境、街の北西部は砂や砂利の割合が高くカベルネ種との相性がいい。シャトーをここに構えるシャトー・シュヴァルブランの栽培面積の58%はカベルネ・フランが占める。

 

 

石灰岩+粘土

石灰+粘土

砂礫+粘土

砂+粘土

台地

(ヒトデなど海洋性生物の化石)

堅牢。フィネス主体。質の良いタンニンとしなやかな果実

Ch.canonなど優れたシャトーが多い

     

台地の斜面

1番強い粘土

 

南・南東向きの斜面が日当たり良く果実が良く熟すのでタンニンも豊富。

オーゾンヌ、パヴィ

   

台地のふもと

   

(サンテミリオンの街の南)

風通しがよく水の供給が簡単。

カノン・ラ・ガフリエール

(サンテミリオンの街の北東部、バルバンヌ河近く)

北向きで冷涼なため晩熟

(サンテミリオンの街の南東部)

日当たり良く北東部よりも1週間早くブドウが熟す。野暮ったさがなくクリーン

北西部

   

(ポムロールとの境)

メドックに近い土壌のため例外的にカベルネ・ソーヴィニヨンとの相性がいい。

シュバル・ブラン、フィジャック

水の管理が難しく、繊細な味わいになりやすい。一部粘度が豊富な部分では骨格のしっかりした長熟向きのワインができる

平地

   

平坦で土地が肥えているためあまり栽培に向いていない。

丁寧な管理とそれなりの投資が必要となる(シャトー・モンブスケなど)軽く果実味主体の味わい

 

格付け

【呼称 ~AOC サンテミリオンとAOC サンテミリオン グラン・クリュ~】

生産地域は同じだが、AOC サンテミリオン グラン・クリュを名乗るには収量の制限などによる品質管理や、審査員によるテイスティング審査をクリアしなければならない。現在ではサンテミリオンにある800以上のワイナリーの中から57シャトーが認められている。

【名称 ~ グラン・クリュ クラッセとプルミエ グラン・クリュ クラッセA/B ~】

AOC サンテミリオン グラン・クリュの中でより秀逸な品質と認められると、さらにグラン・クリュ クラッセとプルミエ グラン・クリュ クラッセと名乗ることができる。

プルミエ グラン・クリュ クラッセは最上シャトーに与えられる名称で、その中でもAとBに分かれAがより優れたワイナリーとなる。現在Classe Aは4シャトー、Classe Bは14シャトー。

格付けは1954年に制定され、10年毎に見直される。この見直しはワイナリーの意欲向上にもつながり、何百年も前の各付けを妄信的に信じ続けるよりはよっぽど現実的だ。

しかし、良くも悪くもこの変更はワイナリーの経営に大きな影響を与える。昇格であればまだいいのだが、降格は地価の下落を招き経営危機へと直結する。

これを受けて2006年の改定時にはとうとう訴訟問題にまで発展した。3年間の法廷論争結果、昇格されたワイナリーはそのままに、降格したワイナリーは降格する以前の地位にとどまるといううやむやな感じで終結した。

ガレージワイン

サンテミリオンの生産者は規模が小さい。

メドックの格付けシャトーの所有畑面積が平均47haに対して3haと、圧倒的に小さい。

当然設備もそれにしたがって小さくなり、ガレージのようなサイズで事足りることから、それはいつからかガレージワインと呼ばれ希少価値と共にもてはやされるようになった。

残念なことに希少価値に胡坐をかいて不当に価格を吊り上げるワイナリーも存在することは間違いないが、ラ・モンドットやリンソランスなど間違いなく素晴らしいワイナリーも数多くある。

小さいということは小回りがきくということでもあり、様々な栽培方法や最新の醸造技術がいち早く取り入れられてきた。

それは造り手の意思や想いを強くワインへ反映することにもつながる。

 

もちろん品質を左右する要因の第一がテロワールなのだが、それを生かすも殺すも結局は人であって、どこかブルゴーニュ的な情熱を感じるこのアペラシオンは、左岸とはまた違った楽しみ方ができる。

格付けシャトー

【Premiers Grand Cru Classe A】

Château Ausone [ シャトー・オーゾンヌ ]

Château Cheval Blanc [ シャトー・シュヴァルブラン ]

Château Angélus [ シャトー・アンジェリュス ]

Château Pavie [ シャトー・パヴィ ]

【Premiers Grand Cru Classe B】

Château Beauséjour [ シャトー・ボーセジュール ]

Château Beau-Séjour-Bécot [ シャトー・ボーセジュール・ベコ ]

Château Bélair-Monange [ シャトー・ベレール・モナンジュ ]

Château Canon [ シャトー・カノン ]

Château Canon La Gaffelière [ シャトー・カノン・ラ・ガフリエール ]

Château Figeac [ シャトー・フィジャック ]

Clos Fourtet [ クロ・フルテ ]

Château la Gaffelière [ シャトー・ラガフリエール ]

Château Larcis Ducasse [ シャトー・ラルシデュカス ]

La mondotte [ ラ・モンドット ]

Château Pavie Macqin [ シャトー・パヴィーマカン ]

Château Troplong Mondot [ シャトー・トロロン・モンド ]

Château Trottevieille [ シャトー・トロットヴィエイユ ]

Château Valandraud [ シャトー・ヴァランドロー ]

■データ(出典:ボルドー委員会)

栽培面積 約5,450ha
土壌 全体的に粘土の割合が高く、場所によって砂、砂利、石灰などが混じる
生産量 229,000hl
シャトー数 約603
格付けシャトー数 18
栽培品種 カベルネ・フラン、カベルネ・ソーヴィニヨン、カルメネール、マルベック、メルロ
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