実はアミオ・セルヴェルは今注目の造り手で、何故かというとシャンボール村に本拠地を置く数少ない生産者だからです。シャンボールは元々は人口が300人ほどの村で、コート・ド・ニュイの中でも一番小さい村（正確に言えばヴージョの村の方が小さいかもしれませんが）。シャンボール・ミュジニーを造っている生産者はいても、ここにワイナリーを置いている生産者は非常に少ないんです。挙げるとなるとそれこそルーミエやヴォギュエがいますが、そういった意味でもシャンボールを代表する造り手の一人と言えます。
最近新しいワイナリーをシャンボール・ミュジニーに作ったそうですが、そのデザインをしたのもルフレーヴやデュジャック、アルマン・ルソーの新しいワイナリーを作った人ということで、並みいるトップ生産者と同様のレベルの醸造設備でワイン造りを行っているというのも注目の点でしょう。

アミオ・セルヴェルのフラッグシップはレ・ザムルーズ。シャンボール・ミュジニーというとボンヌ・マールとミュジニーのグラン・クリュ、その二つを繋いだ間は全てプルミエ・クリュになっていますが、現在の格付けではなく、今の格付けの基礎を作ったラヴァル博士の1861年頃の格付けだと、今のものと微妙に違っているんです。例えば、レ・ザムルーズでもよく言われるのが、畑の上部と下部で全く異なるということ。実際に畑に行ってみると上部と下部の間には段差があって、同じ畑とされているのはおかしいでしょう、と言いたくなる場所もあります。

ラヴァル博士の格付けでは（ブルゴーニュ全体でも極一部のテット・ド・キュヴェの畑を除いて）最高の畑がプルミエ・クリュで、ボンヌ・マール、フュエ、レ・クラは当時同じくプルミエ・クリュ。そのまま続いていくとモレ・サン・ドニの現在のグラン・クリュの並びにある丘です。ミュジニーはまた違う丘で、シャンボール・ミュジニー村の北側にある谷がふたつの丘を分けているんです。ボンヌ・マールとミュジニーの味わいが違うというのは、単純に地理的に見ても違うということですね。
ラヴァル博士の格付けでミュジニーの部分を見ると、ミュジニーの続きでプルミエ・クリュになっている部分が細く伸びているのですが、そこが上部と下部で全く異なると言った、レ・ザムルーズの上部とシャルムの上部の区画です。つまり、これらの上部の区画はまさにグラン・クリュ相当だったということ。

アミオ・セルヴェルの所有するレ・ザムルーズとシャルムの区画はどちらも上部、最高の場所の畑です。これもまた、トップ生産者に名を連ねる理由のひとつと言えるでしょう。

シャルムは同じくプルミエ・クリュのプラントの横、レ・ザムルーズとの間に挟まれる位置にある畑で、シャンボールだと間違いなくトップにくるプルミエ・クリュです（レ・ザムルーズ、フュエ、シャルムの三つが最高のプルミエ・クリュだと思います）。アミオ・セルヴェルは、私たちからすると本当にラッキーなことに、シャルムを1ヘクタールという広い面積で所有しています。ラインアップの中でも一番多く作っているキュヴェで、20樽（6,000本）生産と所有畑の中でも大きい部類になります。

シャルム（Charmes）はその名前の通りチャーミング（Charming）で、ワインの表現で言うところの女性的といわれるシャンボール・ミュジニーらしいプルミエ・クリュと言えます。シャルムからレ・ザムルーズ、さらにはミュジニーと近づいていくと実は逆に力強くなっていくというのが私の印象です。よくミュジニーは女性的と表現されてきましたが、私の中では力強さがあるため、同じくワインの表現としていうのであれば芯のある女性というイメージでしょうか。芯の強さを和らげて優しくしていくとレ・ザムルーズになって、そこからさらにシャルムに近づいていく印象があります。ですので、やはりシャルムはチャーミングという名に相応しい特徴がありますね。

2015年というグレート・ヴィンテージとシャンボール・ミュジニーのエレガントさが合わさると、プルミエ・クリュでもより壮大な印象で、グラン・クリュに近い迫力があります。 畑の特徴であるチャーミングさ、エレガンスがさらに際立った仕上がりになっています。