【このワインについて】
ガストン・コラール。所有畑はグラン・クリュであるブジー村にすべて所有する、当店随一の人気シャンパーニュ生産者です。ブジーというグラン・クリュは、南向き斜面で昔から赤ワインが造れたというくらい、日照量が多く熱がこもり、力強いピノ・ノワールが生産されます。それはダイレクトにシャンパーニュのスタイルにも表れていて、ブジーのピノ・ノワールを使ったシャンパーニュは基本しっかりしている。いわゆるリッチなタイプが多いです。

そんな力強いピノ・ノワールを100%使用しているのが、このブラン・ド・ノワールです。

ちなみに個人的にシャンパーニュにおいて一番好きなのはブラン・ド・ノワールなんですが、その理由は酸味がやさしくふくよかなスタイルになりやすいからです。私はシャンパーニュを飲むときにやすらぎを求めるので、あえてブラン・ド・ノワールをセレクトすることが多いです。

【テイスティングコメント】
色合いは黄金みが強いです。黒ぶどう100%なので、色味が強く出ていると思います。香りの最初の印象としては、良く熟した核系フルーツ。アプリコットや黄桃の風味があるんですけど、きれいなトースト香というのが一緒にのっています。やや焼きリンゴのように感じる香りが、このトーストの甘いジンジャーブレッドの風味と合わさると、何となくタルトタタンに似たような香りになります。あとは上品なスパイス。カルダモンとか、ほんのりナツメグみたいな風味もあります。香りは豊潤で豊かなふくらみのある力強い香りです。

味わいとしては私の好みでもある、ほっこりとした味わいですね。酸が厳しすぎないのがよいです。ブラン・ド・ノワールに求める、優しい口当たりと優しい泡立ちがしっかりと表現されています。エアリーというか、綿菓子のようなソフトな口当たりで、これがスーッと口の中で溶けていくんですけど、泡立ちも非常に細かくやわらかくてクリーミー。ボディとしては酸が柔らかい分、丸みがあって重心が低いような印象なんですけど、それが非常に心地よいですね。その丸みをちゃんと支えるバックボーンの酸というのもしっかり存在していて、非常に心地よいです。さらにアフターに感じるほのかな苦味が、リッチな果実や甘いスパイスにいいアクセントを与えています。余韻も広がっていくような余韻です。

口の中で回して飲むと、ブラン・ド・ノワールらしさがしっかり感じられますし、風味もベーシュ・ド・ヴィーニュや、ほのかにクランベリーみたいなパリッとしたクランチーなフルーツも存在しています。重さだけじゃないんですよね、クランチーなフルーツもあるから、爽やかさもフレーヴァーにしっかりと感じられます。このクランベリーを連想させるっていうのが、もしかしたらドサージュが3gしかないということに起因しているかもしれません。果実の凝縮感もしっかり出ていて、こちらは暑いヴィンテージを使ったという恩恵なのかもしれません。

あとは樽熟成がもたらすふくらみというのも絶対にあると思います。さっき感じたナツメグとかカルダモンとか、タルトタタンに感じるような、その印象っていうのは間違いなく樽の少し酸化的なニュアンスです。シャンパンの樽というのは、甘い風味をつけるために樽に入れるのではなく、どちらかというと、ワイン自体を和らげる。酸素と触れさせる機会をつくることによって、口当たり、テクスチャーを和らげるという目的があり、その目的を見事に果たしているかと思います。

【おすすめの楽しみ方】
ブラン・ド・ノワールの豊かさを感じたければ12度くらい。シャンパーニュらしい爽やかさを感じるなら8度くらい。ですので8度くらいからスタートして、12度くらいに上げれば最高です。ただしそんな難しいことはできないよという方は冷蔵庫から出して、テーブルに置いて、少しずつ温度変化を楽しんでいただけたらなと思います。

グラスは白ワイン、チューリップ型というよりは、バルーンを試していただいても良いと思います。小ぶりなバルーンのほうがこのワインが持っているイメージに近づくと思います。 丸みがあってふくよかで、アタック/ミッド・パレット/アフターのなかではきれいにミッド・パレットが膨らむような丸みのある印象があるので、そういった印象に近づけてあげるというのも、グラス選びの一つのセオリーです。酸がミッドパレットをぎゅっと引き締めて、線が細いスリムなタイプ（例えばこのガストン・コラールのドサージュ・ゼロ）なら、グラスもちょっと細目のスリムでエレガントなタイプが良いでしょうし、逆にこういう風にふくらみのあるタイプだと、カーブの丸みのあるタイプの方が合うと思います。