ソノマ・ピノ業界へのブルゴーニュの進出
数十年に渡り、ブルゴーニュの醸造家たちはオレゴン州と交流を続けてきました。多くのフランスのワイナリーがカリフォルニアへ投資をしてきましたが、ブルゴーニュの人々はカリフォルニアのピノ・ノワールに対して公然と軽蔑することすらあったので、ピノ・ノワールに対する投資は行われてきませんでした。
しかし、ブルゴーニュのDomaine Faiveleyが米国のワイナリーWilliams Selyemの少数株主持分を購入すると状況は変わりました。もし彼らのパートナーシップが上手くいけば、Faiveleyが3年以内にWilliams Selyemを継承することになるかもしれないからです。Williams Selyemは米国のピノ・ノワールの中で神聖的な名誉を得ていますが、この取引において最も重要なことはWilliams Selyemがオレゴンではなくカリフォルニアのワイナリーということです。
Faiveleyが語るソノマ・ピノの魅力
Domaine Faiveleyの当主Erwan Faiveleyは次のように語ります。「オレゴンには非常に優れたワインがあると思いますし、同時にカリフォルニアのワインも大好きです。それはソノマだけではありません。サンタ・バーバラまで南下すれば非常に興味深いピノ・ノワールがあると思っています。ソノマのピノ・ノワールとは異なるものではありますが、どんな味わいにも人の好みはあるものです。」
Williams Selyemは5つの畑を所有しており、そのうちの4つはソノマのRussian River Valleyに位置しています。ワイナリーはその他にも複数の畑からブドウを購入していますがその大半はソノマのものです。
ソノマのピノ・ノワールの魅力について、Faiveleyは次のように回答しています。「そのスタイル。私はフル・ボディーのワインが好きだから。フレーバーの特徴はオレゴンとは異なっていて、プラムのようなより濃い果実味があります。もちろんブルゴーニュのピノ・ノワールとも異なります。これはシャルドネも同様で、私にとってカリフォルニアのシャルドネは他のどこの州よりも興味深いものです。ブルゴーニュのシャルドネよりもリッチなスタイルではありますが、同時にフレッシュさもあります。非常に暑いヴィンテージのブルゴーニュであれば見分けがつかないかもしれません。特徴の点でいえば、大きな共通項があると思います。」
FaiveleyとWilliams Selyemの契約
Faiveley曰く、Williams SelyemのオーナーであるJohnとKathe Dysonとの交渉には18ヶ月かかったそうです。Dysonらが米国の新聞社San Francisco Chronicleで語ったところによると、彼らはワイナリーの引継ぎにあたって企業ではなく家族を探していました。彼らは1998年にWilliams Selyemの創始者からワイナリーを950万ドルで買収しましたが、Faiveleyとの契約条件は公表されていません。
John Dysonは彼のメールマガジンにおいて次のように述べています。「長年に渡って多くの方々からオファーを貰ってきましたが、我々の長期的なビジョンを分かち合えなかったのでどれも断りました。しかしながら、長年ワインビジネスに従事してきたFaiveley家、特にドメーヌの現当主であるErwan Faiveleyと一緒であれば、最高品質のワインを造るという我々のビジョンを達成できると信じています。」
入手困難
Faiveleyは10年以上に渡って米国のワイナリーを探し続けてきたと言います。「私がWilliams Selyemを紹介された時、ワイナリーは売却には出されていませんでした。彼らは一緒に働く人々やワインを含めてワイナリーを愛していましたし、買収における全てのオファーを拒否していたので、ワイナリーを売却する意志はありませんでした。私は、我々が中長期的に彼のワイナリーを引継ぐ適任者だということを説得し、彼も我々に売却をすることが良いオプションになりうるということを考え始めました。」
Williams Selyemは1970年代に、San Francisco Chronicleで印刷業者として働いていたBurt WilliamsとEd Selyemの2人によって創設されました。彼らはガレージで造ったワインをメーリングリストで販売しました。ソーシャルメディアが主流になる以前の時代からその評判が広まっていったのは驚くべきことです。当初はジンファンデルの販売から始めましたが、すぐさま20世紀の米国では非常にマイナー品種であったピノ・ノワールの販売に特化するようになり、その希少性が評判を広めるきっかけになりました。
創始者たちの想像以上にワイナリーが成長したので、Millbrook Wineryの創始者であり既に自社畑を所有していたDysonにワイナリーを売却しました。Dysonは畑の購入や設備のアップデートなど事業への多額の投資をしてきましたが、ワイン造りの基礎には忠実です。Williams Selyemのピノ・ノワールは、現在でも上部開放型のタンクで醸造されており、それは1970年代に資金力がないためそれ以上の設備投資が出来ないという理由で使用していたものです。醸造責任者であるJeff Mangahasは引き続きそのポジションを務める予定です。
Faiveleyは先3年間の展望について次のように語ります。「我々はアドバイスやフィードバックをしていく予定です。経営戦略についてはJohn Dysonと彼らのチームに任せていきます。Williams Selyemは非常によく組織されたワイナリーなので、私が何かを押し付けたり変えたりはしたくありません。私は彼らの良さを学び、理解することにこの3年間を費やしていきたいです。」
しかしながら、彼はまだブルゴーニュで家族経営の事業があり、約100エーカー(約40hl/ha)の特級畑と一級畑の監督をする必要があるため、カリフォルニアへの移住は検討していません。Williams Selyemでは現在、年間2万ケースのワインを生産しています。「例えばオレゴンのDomaine Drouhinで醸造を務めるVeronique Drouhinは、毎年1ヶ月半ほどオレゴンに滞在しています。おそらく私は1ヶ月ほど滞在することになるでしょう。」とFaiveleyは述べています。
引用元:https://www.wine-searcher.com/m/2021/01/burgundy-comes-calling-for-sonoma-pinot
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