ナパはカベルネにお別れのキスをするべきか?

ナパはカベルネにお別れのキスをするべきか?

 

カリフォルニア大学デービス校はオンラインセミナーを開催し、気候変動によってカリフォルニアからシャルドネが消滅するかどうかを話し合いました。この議論は発展し「ナパはカベルネ・ソーヴィニヨンから離れるべきか?」という話題にまでなりました。ナパのLarkmeadとMassicanのワインメーカーであるDan Petroskiは「私たちは過去25年カベルネの上に成り立ってきましたが、次の25年はそうではありません。」と述べます。

 

カリフォルニアにおける地球温暖化の影響

デービス校のBeth Forrestel助教授は、カリフォルニアの気温変化率は過去1000年よりも高いとし、ブドウは熱だけでなく地球温暖化に伴う干ばつやより大きな害虫、病気のリスク、さらに激しい山火事にも適応しなければならないと指摘します。(Forrestelは言及しませんでしたが、早熟品種は山火事による煙の影響を受ける前に収穫できるかもしれないので有利になりうる、ということを今年私たちは学びました。)Forrestelは、カベルネ以外の品種の可能性について言及しています。「他品種ではカベルネと同じ価格を実現できないかもしれませんが、十分理にかなったものを生産できるかもしれません。」

 

しかし、Petroskiはナパを大量生産エリアとして位置づけることに反対します。ブドウ品種を多様化したいからといって、北米ワイン産地の王座を退くことを望んでいるわけではありません。「私たちはナパを贅沢な場所として考え始めなければなりません。ナパはこの国で栽培されているブドウと消費されているワインのピラミッドの頂点にいます。贅沢という言葉の定義が必要ですが、それがカベルネやシャルドネである必要はありません。つまり、ワインを購入する際にそれがナパ産であれば、品種を問わず間違いなく美味しいと消費者が思えることが重要なのです。」また、Petroskiはジンファンデルやプティシラーなどの耐熱性の高い品種をブレンドすることで、徐々にカベルネから離れることができるとも述べています。

 

ウィンクラーインデックス

ForrestelとPetroskiが同意している点の1つにウィンクラーインデックスの変更があります。これは、デービス校のAJ Winkler教授とMaynard Amerine教授が開発した、ブドウ品種が世界のどの地域に適合するかを示すガイドで世界的に影響力があります。「ディグリーデー(degree day)」と呼ばれる尺度を使用して、生育期における累積熱量で世界の産地を5つに分類します。リージョンIは、シャンパーニュやウィラメットバレーなどの肌寒いエリアです。リージョンIIには、ワシントン州コロンビアバレー、ボルドーやオーストラリアのクナワラなど、カベルネの名産地が見られます。リージョンIIIは北ローヌやリオハなどの温暖好きなブドウが喜ぶエリアです。ナパは、ラングドックやバロッサバレーなどの暑い産地と並んでリージョンIVに分類されていますが、リージョンIVのほとんどはカベルネやシャルドネでは無名産地です。しかし、ウィンクラーの指標が何を言おうと、ナパでは良いカベルネが作れることを証明してきました。Forrestelは、ナパの気候がカーネロスやオークノールを含む渓谷南部の涼しい場所から非常に暖かいカリストガまで、非常に多様であることにも触れています。

 

「2020年、私たちの味覚やワインへの理解はとても広いです」とPetroskiは言います。「今日ブドウ品種について話すとき、Harlan Estateは将来1本800ドルで一体何を売るのでしょうか。それはカベルネでなければならないのでしょうか?世界の素晴らしいワインについて考えるとき、私はVega Siciliaとテンプラニーリョ、あるいはPenfolds Grangeとシラーズを思い浮かべます。50年代、Hanzellはブルゴーニュを模倣し、60年代にBob Mondaviはボルドーを模倣していました。なぜスペインを模倣できないのでしょうか?世界中には模倣できる産地がたくさんあるではないですか。ナパ全体を見たときにカベルネだけに縛られるのは実に悪いマーケティングだと思います。」

 

シャルドネの未来

冒頭に述べたセミナーは「カリフォルニアからシャルドネが消滅する」と言われていましたが、実際にシャルドネはカリフォルニアから消えていません。州全体の栽培面積でカベルネに追い抜かれたのはつい最近ですが、シャルドネはそれでもカリフォルニアで2番目に多い品種です。ピノノワールは3位になりましたが、カリフォルニアにはピノノワールの2倍のシャルドネが植えられています。しかし、シャルドネはナパの他品種(多くの場合カベルネ)に徐々に取って代わられているのもまた事実です。David Rameyのような一部のワイナリーは、カベルネはナパからシャルドネはソノマの涼しいエリアから入手するのを好んでいます。Forrestelは、温暖化が進行するにつれてシャルドネの存続は厳しくなることを示唆します。一方、Petroskiはシャルドネは今後数年間ナパにいるだろうと語ります。「ナパには3つの国際的なスパークリングのワイナリーがあり、国内屈指のSchramsbergがあります。スパークリングの生産を鑑みれば、シャルドネがなくなるとは思えません。」

引用元:https://www.wine-searcher.com/m/2020/11/should-napa-kiss-cabernet-goodbye

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