混沌としたブルゴーニュワインに加わる新たなAOC

混沌としたブルゴーニュワインに加わる新たなAOC

 

コロナウイルスによるパンデミックや関税の影響があるにも関わらず、ブルゴーニュは我々の予想を圧倒します。

 

限られた供給に対する絶え間ない需要の高さが価格上昇に拍車をかけており、特にそれは上級カテゴリーで顕著です。気候変動による気温の上昇の影響でブドウは収穫時に完熟することができるので、偉大なヴィンテージが続く結果となっています。

 

しかしながら、この価格上昇はシャルドネとピノ・ノワールを求めるブルゴーニュワイン愛好家を他の地域へと追いやってしまうという懸念があります。そこで、ブルゴーニュワイン委員会(BIVB)はより手頃な価格帯でブルゴーニュのテロワールを表現する方法を模索しています。

 

新たな地域名AOCである”・コート・ドール”を見てみましょう。このAOCは20年以上の時を経て、国立原産地名称研究所(INAO)によって2017年6月に承認されました。このワインが市場に姿を見せたのは2019年の上旬で、2018年ヴィンテージから新しくラベリングされました。44の村名ワインと地域名ワイン(ブルゴーニュAOCとマコン・ヴィラージュAOC)の中間に位置し、価格とのバランスを考慮しながら植樹密度や収量に制限をかけることで、ブルゴーニュ・コート・ドールは品質の高さを確立します。2018年ヴィンテージにおけるブルゴーニュ・コート・ドールの生産量は当初よりも大幅に増加しました。赤ワインは20%増加の160万本、そして白ワインは55%増加の92万本でした。

 

この新たな表記はブルゴーニュファンの救いとなるのでしょうか?それとも彼らを混乱させることになるのでしょうか?

 

ネゴシアンにとってのメリット

Maison Louis Jadotは、このAOCは消費者が発見しづらい知名度の低い村の認知度を上げる良い機会になると考えます。「サントネやマランジュ、ショレイ・レ・ボーヌ、マルサネといった一部のコート・ドールの村は、その関心の低さから販売が難しくなっています。ブルゴーニュ・コート・ドールは小さな村のワインをブレンドし、より高い品質の地域名ワインを生み出すことを可能にします。」とMaison Louis Jadotの醸造責任者であるFrederic Barnierは説明します。

 

しかしながら全ての大手ネゴシアンがMaison Louis Jadotの考えに賛同しているわけではありません。Maison Joseph Drouhinの醸造責任者であるVeronique Drouhinは、新たなAOCを追加するメリットも認識していますが、彼らがブルゴーニュ・コート・ドールワインを造る場合、彼らのキュヴェ”Laforet(異なる村からの最高品質のブドウをブレンドしたAOCブルゴーニュ)”に使用する最高のブドウが奪われることになるのです。「フランスには”ピエールの服をポールに着せても意味がない”ということわざがあります。既に存在する高品質の果汁から高額なワインを造りだすことは、消費者を混乱させることに繋がるのではないでしょうか。我々にとっては無意味なことです。」とVeroniqueは語ります。

 

先駆者

ワインショップKermit Lynch Wine Merchantに属する30の生産者の大半はブルゴーニュ・コート・ドールに適応しませんでしたが、Domaine Meo Camuzetの醸造家であるJean-Nicolas Meoは3種のブルゴーニュ・コート・ドールを生産しました。

 

「ブルゴーニュ・コート・ドールはネゴシアン向けではなく醸造家に適しているものだと思います。」とMeoは説明します。

 

彼の見解には歴史が大きなカギとなります。大手のネゴシアンはシャブリやボジョレーを含むブルゴーニュ全域からブドウを購入しています。Meoによると、ボジョレーが彼らのワインの一部をブルゴーニュとしてラベル表記することが許可された時から衝突が始まったと語ります。さらに、大手ネゴシアンは地域名ラベルの元でピノ・ノワールにガメイを使用したり、シャブリのシャルドネを使用したりする機会を得ました。

 

「ブルゴーニュの生産者による対策案の一つは、コート・ドール産のピノ・ノワールを100%使用したブルゴーニュ・コート・ドールのアペラシオンを作ることでした。」とMeoは述べています。

 

彼は自身のブルゴーニュAOCワインを革新しました。シャンボール・ミュジニーとヴォーヌ・ロマネ産主体のドメーヌのブドウを用いて、” Cuvée Etienne Camuzet”を生産しました。ネゴシアン・ラベルであるMéo-Camuzet Frère & Soeursでは2つのワインを生産しています。ジュヴレ・シャンベルタン、シャンボール・ミュジニー、ヴォーヌ・ロマネ、ヴージョといったコート・ド・ニュイのブドウを使用した” Hémisphère Nord”と、ポマールのブドウを主体としたコート・ド・ボーヌのブドウを使用した”Hémisphère Sud”です。

 

ブルゴーニュワインの明瞭性

Kermit Lynchの代表であるBrookeは、ブルゴーニュワインの購入者はブルゴーニュに精通しているので、この地域の神秘的な側面としてこの混乱を受け入れるだろうと信じています。「何事も変化の始まりは混乱を引き起こすものです。ブルゴーニュワインの購入者にとってはより明瞭なものになると思うので、私はこの変化を支持します。」

 

ワインショップAcker Wine and SpiritsのLily Freedmanはブルゴーニュ・コート・ドールの好機を見ていますが、消費者が小売の棚に並ぶワインを見た時に、果たして彼らが価格以外の条件を気に留めるかどうかという疑問も述べています。「このカテゴリーは小売業界が満足するのが難しい、価格と品質のバランス向上に役立つでしょう。価格が高騰している村名クラスのワインに先立ち、より分かりやすく、高い信頼性とブルゴーニュの土地らしさを提供します。AOCのピラミッドの下層部に磨きをかけるでしょう。」

 

品質への理解を深めて混乱を克服することが一つの答えです。愛好家はワインを味わう歓びのためにブルゴーニュワインの複雑性すら受け入れるかもしれませんが、一方でそれは初心者を圧倒し、将来の消費者を遠ざけることになる可能性があります。

 

「ブルゴーニュに慣れていない新世代は、AOCのピラミッドによる選択肢の多さに戸惑うことがあります。私の仕事の一つはその仕組みを説明し、消費者が迷うことなくワインを購入できるようにすることです。」とMaison Louis JadotのBarnierは語ります。

 

ブルゴーニュ・コート・ドールはより明瞭なポートフォリオを拡充する手段を生産者に提供します。ブルゴーニ初心者の消費者にはより手ごろな価格で質の高いアイテムを提供し、そして愛好家には熟成を楽しめる良質なブルゴーニュワインを提供します。この新たなカテゴリーは生産者にとっては魅力的なものです。消費者が納得するかどうかは、時間が経てば分かるでしょう。

引用元:https://www.wine-searcher.com/m/2021/03/new-burgundy-level-adds-to-the-chaos

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