シャンパーニュの注目すべき2ヴィンテージ

シャンパーニュの注目すべき2ヴィンテージ

 

近年のシャンパーニュにはあまり良いニュースが見受けられませんでした。

 

パンデミックと近年の自然災害の狭間で、どういうわけかワイン業界はシャンパーニュの秀逸なヴィンテージを見逃しているようです。

 

災害にも見舞われず豊作となった2018年は予想通り評価誌で称賛の言葉を受けましたが、2019年と2020年については多く語られていません。プロによるヴァン・クレール(二次発酵前のスティルワイン)の試飲や、メディアの訪問、そして生産者によるイベントが軒並み中止になったことが大きな要因でしょう。

 

もしくは、ヴァン・クレールの試飲が気の弱い人に向かないことも理由かもしれません。ヴァン・クレールにはボルドーのプリムールで経験するようなタンニンこそありませんが、味覚に異常をもたらすほどの酸があります。多くの評論家が直近のヴィンテージではなく完成された最新のキュヴェを評価していることにも納得できます。

 

シャンパーニュの中心地に住んでいると利点もあります。ブドウの成長期を共に出来るので、収穫前のブドウを味わい、圧搾後の果汁を試飲することも出来ます。しかし最も重要なポイントは、ヴィンテージのポテンシャルを初期段階から判断できるということです。そして、(パンデミックの間でさえ)樽やタンクから直接ワインを試飲し、その後の進化を追いかけることが出来ます。

 

2019年と2020年の気候

 

2019年の成長期には、4月に発生した霜害とウドンコ病、5月下旬に発生したベト病、そして夏の猛暑による熱の影響でブドウ樹は大きな打撃を受けました。しかしながらその結果は強烈なものでした。収穫時には悩ましい出来事が沢山ありましたが、平均的なアルコール度数は2018年よりも高く、出来上がったワインは、ピンとした緊張感があり、無駄がなく、そして眩いほどのテンションがありました。

 

一方の2020年は、他に類を見ないようなヴィンテージでした。成長期の初期段階では手間のかからない温暖な時期であったにも関わらず、ロックダウンは日々の畑管理を複雑なものにしました。フランスがロックダウンを終了した頃、状況はブドウ樹にとって過酷なものになっていきました。過去に前例のないほどの早い開花に伴う降雨が不均一な結実を引き起こしました。前年ほどの猛暑には見舞われなかったものの、小規模な熱波を3回経験しました。非常に乾燥した春と相まって、多くの畑で急速な水分ストレスを引き起こしました。

 

収穫は過去最速の8月中旬頃に開始されましたが、一部の房では色づいていないブドウが見られ、またその一方で完熟しているブドウがありました。2020年の収穫は従来とは大きく異なるものでした。

 

生産者の反応

 

異なるということが必ずしも欠陥を意味するわけではありません。それどころか、大手シャンパーニュ・ハウスLouis Roedererでセラーマスターを務めるJean-Baptiste Lecaillonによると果汁の状態は完璧に近かったそうで、酸度と糖度のバランスがここまで整うのを見るのは初めてだと語りました。ブレンドを終えた後、まだ同じように感じるかを尋ねたところ、彼は2020年が彼のキャリアの中で最上のものだと答えました。

 

ランスから150kmほど南下した場所にあるウルヴィル村でも、・ハウスDrappierのHugo Drappierは2020年の収穫に満足していました。特にコート・デ・バールで幅広く栽培されているピノ・ノワールは素晴らしい品質だったようです。その一方でシャルドネはブドウが熟しにくく苦労したといいます。

 

Pouillon et FilsのFabrice Pouillonは、2020年はピノ・ノワールが主流なAy村に位置するシャルドネの区画”Les Valnons”のブドウの出来に驚かされたそうです。それでも彼の好みはより凝縮感の強い2019年に向いているそうで、「成長期の過酷な環境が繊細さと緊張感を生みだしました。2019年のワインは見事なフレッシュ感があり、素晴らしく熟成していくでしょう」と語っています。2020年はより円熟で外向的なスタイルで、見事なフィネスがあるといいます。この2つのヴィンテージを2018年と比較すると、2018年はやや凝縮感に欠け、熟成のポテンシャルが短いだろうと予測します。

 

シャンパーニュの新たな挑戦

 

Rene GeoffroyのJean-Baptiste Geoffroyも、2020年のシャンパーニュが傑出したバランスを備えていることに同意します。直近の2ヴィンテージと異なり、Geoffroyは一番早く熟したムニエの収穫から始めました。Geoffroyによると、ムニエはジューシーで円熟な夏の果実らしい特徴を持っているといいます。しかしながら、彼は過去3ヴィンテージがコトー・シャンプノワの大きな可能性を示唆していることを確信しています。

 

コトー・シャンプノワの生産にはシャンパーニュとは全く異なる畑を要すると述べたうえで、「地球温暖化の影響で、シャンパーニュで優れたスティルワインを造るための栽培条件は大きく向上しました」と説明しています。

 

そして近年の温暖な気候は、シャンパーニュ地方で忘れられていた品種(フロモントー、ピノ・ブラン、アルバンヌ、プティ・メリエ)を取り戻しました。Drappierはフロモントー(ピノ・グリ)のパイオニアで、彼にとってこの品種は白鳥へ生まれ変わった醜いアヒルの子のようだと語ります。「毎年、潜在アルコール度数12-12.5度でブドウを収穫します。pH度は安定して高く、他の品種と比較すると酸度は極めて低いです。実際、あらゆる醸造家がこのワインがシャンパーニュに適さないと判断するでしょう。しかしこのワインをブラインドでテイスティングすれば、口当たりの良さとフレッシュさからトップレベルのスティルワインだと判断するはずです」

 

Drappierは所有畑の中で最も温暖な区画でフロモントーを栽培しているものの、過去2年間で熱の影響を受けたことはなく、その一方でピノ・ノワールは暑さでしおれてしまったそうです。

 

マルヌを本拠地とするTarlantで醸造を担当するBenoit Tarlantも、所有する中で最も温暖な畑でフロモントーを栽培しています。2004年に、より冷涼な畑でピノ・ブラン、アルバンヌ、プティ・メリエの栽培を始めましたが、フロモントーは更に新しい畑です。Tarlantは何年にもわたってこれらの忘れられた品種が繁栄するのを見届けており、栽培量を増大するきっかけになりました。今日、所有する14ヘクタールのうちこれらの品種が約10%を占めており、この品種から様々なキュヴェを生産しています。

引用元:https://www.wine-searcher.com/m/2021/05/champagne-prepares-two-more-standout-vintages

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