ワインのスーパー・テイスターとコロナウイルス耐性
あなたはどれくらい敏感にワインの味を取れますか?その答えは想像以上に重要な意味があるかもしれません。
スーパー・テイスター
5月末に発表された新たな研究結果によると、スーパー・テイスター(より敏感な味覚を持っている人のこと)はコロナウイルスに対する自然耐性を持っているそうです。しかしあなたのテイスティング能力が平均以下の場合、コロナウイルスへの耐性はより脆弱な可能性があります。
「コロナウイルス患者を対象とした苦味受容体表現型と臨床結果における関連性」という報告書によると、報告書の著者は職業上コロナウイルスに感染した1935人の被験者を対象に苦味を感知する能力を測定し、コロナウイルスに対してどのような反応を発症したかを検証しました。
近年の研究によると、スーパー・テイスターは全体の25%程度で、ミディアム・テイスターが50%、そして残りの25%はほとんどの食べ物に対して鈍感な”ノン・テイスター”だそうです。「どのワインを飲んでも同じ味に感じる」という知人がいるなら、おそらくその人はノン・テイスターに該当するでしょうから、この研究結果を共有したほうがいいかもしれません。
報告書の結果では、ノン・テイスターに分類されるグループはコロナウイルスの陽性率が高く、症状を発症しやすく、入院率も高いことが示されています。一方でスーパー・テイスターの陽性率は低く、ウイルスに対するある種の防御のようなものを持っている可能性を示唆しています。研究対象者の中で、コロナウイルスを発症したスーパー・テイスターのうち入院した人はいませんでした。
苦い現実
報告書を読んだ後、筆者の1人であるHenry P. Barham博士に電話をし、これらの関連性を研究しようと思ったきっかけは何だったのかを尋ねました。なぜなら、ソムリエとコロナウイルス発症には関連性が見られないからです。
以前の研究によると、Barhamが「受容体のより高い表現」と定義するもの(より強い味覚体験など)が、ウイルス感染のリスクを低減することが証明されています。
研究では原因でなく相互関係が示されていますが、これには潜在的な物理的理由も存在します。今回の研究は、苦味を知覚するTAS2R38という味覚受容体の過去の研究に基づいて構築されました。
「この苦味を知覚する受容体が活発化すると、繊毛の動きや粘液の分泌が増加し、さらに一酸化窒素を放出します。一酸化窒素は、コロナウイルスの症状を発症するスパイクタンパク質の活動を抑制する働きがあることが分かっています」とBarhamは説明します。
つまり、スーパー・テイスターがブロッコリーやコーヒー、ピノ・ブランを口に入れた時、苦味の受容体であるTAS2R38が活発化し、ウイルスと闘う一酸化窒素を放出します。しかしケール(青汁の原料に使用される野菜)の苦味をも知覚しないノン・テイスターは一酸化窒素を放出できないため、ウイルスが鼻から吸収されると防御されずに繁殖を続けてしまいます。(”苦いものを食べよ”という中国のことわざがありますが、ついにことわざの真意を科学が証明したようです)
Barhamは、スーパー・テイスターがコロナウイルスに対する免疫があると信じるのは間違いだと指摘していますが、その逆は重要だと言います。もし多くの人がネオンのように強い味覚を感じる時にあなたがパステルのような弱い味覚を感じるのであれば、あなたはコロナウイルスに対して脆弱である可能性があるので、特別な策を講じる必要があります。
「多くの人々がワクチンに警戒しています。味覚による判断は、ワクチンやその他の感染対策を促進するのに効果的かもしれません」とBarhamはまとめています。
引用元:https://www.wine-searcher.com/m/2021/06/wine-supertasters-and-covid-resistance
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