南アフリカワインを再度脅かす容赦なきコロナの影響

南アフリカワインを再度脅かす容赦なきコロナの影響
この国のワイナリーはコロナと政府の対応によりもう1つのシャットダウンに直面しており、業界は身動きが取れなくなる恐れがあります。

西ケープ州の市民に計り知れない悲惨さと苦難をもたらす致命的な病気がありますが、それはコロナではありません。世界的な過剰反応、無能な制度、コロナに対する目先の対応がこの大失敗の背後にある真の敵です。

 

物事は今から2週間ほど前、11月26日に起こりました。この日は、南アフリカの2021年のカレンダーの中でも最悪の日とみなされることになるでしょう。英国が(再び)南アフリカへの旅行を事実上禁止し、何千もの企業が切望していた収入が奪われたためです。ケープ地方の住人が渡航禁止例により感じる既視感はまるで日焼けと同じほど当たり前になりつつあります。

 

通常であれば、南アフリカは夏の繁忙期の真っ只中にあり、伝統的に何百万人もの観光客が地元経済にお金を注ぎ込んできた重要な時期にあたります。最近では英国政府が南アフリカへの(比較的)手間のかからない旅行を再度容認していましたが、2021年12月時点では、米国および  EU  からの旅行者への渡航禁止令は引き続き継続されています。

 

「どこもかしこも人で溢れていたのに、それが急に止まってしまいました。私は夏の時期の主要な観光地であるシーポイントに住んでいます。何週間もの間、歩道は沢山の人で賑わい、レストランには行列ができ、ケープタウンの最高のレストランには観光客が押し寄せていました。それが今では道に出て呼び込みをしています。」ケープタウンを拠点とするソムリエ兼ワイン・エデュケーターの  Eric Tayler  はこう語ります。

 

「長期的に見た最も大きな問題は、(政府のコロナに対する)思慮のない反射的対応により、多くの人々が南アフリカでの休暇から急いで家に帰ろうとする混乱が起きた事です。皆、空港などで立ち往生する可能性を恐れていました。これからも私たちがコロナと戦い続ける限り、この騒動による持続的な影響が波及していきます。大慌てでどうにか南アフリカから脱出した人は、その経験を他の人に話し、それを聞いた人々は南アフリカに滞在すると同様の事が自分にも起こるのでは、という不安を持つようになるでしょう。私たちは多くの脱出者を目の当たりにしており、規制の解除があまりにも限定的で遅すぎたと感じています。既に海外からの旅行者は次々と旅の予約をキャンセルしているため、レストランは国内の旅行者を期待していますが、国内の感染者数が増えており再度緊張感が高まっています。私たちは着陸したくてもできない飛行機のように空中の待機経路の真っ只中にいるような状態です。」

 

実際に、南アフリカのワイン(及び密接にかかわりのある観光産業)が最近苦戦しているのは周知の事実となっています。国内のアルコール販売に関し、次々と実施された計4回に及ぶ販売禁止令は、国際的な旅行制限と相まって、ケープのワイン産業とそれが支える生計に重大な害を及ぼしました。監視団体の  Vinpro  によると、政府による相次ぐ禁止令は、2,100を超えるワインの雇用を危険にさらし、税収は50億ランド(約3億4千万ドル)減少したといいます。

さらに内部関係者は、旅行の禁止とロックダウンにより、2020年に西ケープ州では少なくとも75,000の観光とホスピタリティの仕事が失われたと試算しています。

 

しかし、4回目の国内の禁止要請は2021年7月に終了し、短期間ですが10月~11月の間海外旅行が許可されました。秋に入り、経営者達は危機を脱したと期待を持ちましたが、悲しいことに彼らの将来は今とても厳しいものに見えます。

 

「渡航禁止令は、間違いなく私たちの顧客と、キャンセルされた予約の量に大きな影響を与えたと私は見ています。今シーズンは大勢の観光客が訪れていました。昨年のシーズンはキャンセルにより多くの仕事が危機に晒されていたので、ホスピタリティ業に従事する誰もが大勢の観光客を楽しみにしていました。」とソムリエの  Le Roi van de Vyver  は説明します。

 

「ほとんどのホスピタリティ企業は、オフシーズンにあたる冬がそれほど壊滅的でないように、ハイシーズンの時期の大規模な観光客の到来に依存しています。Vinpro  や他のホスピタリティ団体は、完全な渡航禁止令に対し、他の生き残りの道をかけて絶え間ない努力をしてきましたが、過去2年間で成就したことはなく、何の変化も見られないのが現状です。」

 

ケープで働く内部関係者によると、南アフリカでのコロナ感染者数が増えているため、5度目の禁酒令が出るという噂があると言います。

 

「私たちはアルコールの規制が迫っていることを知っています。感染者数は毎日2倍以上になっており、その数は制御不能となっているのは事実です。」と  Taylor  は言います。

 

厳格な対応

南アフリカ政府の取る唯一の道徳的アプローチが、市民の命を最優先する事だけであることは明白です。残念なことに南アフリカの非効率で腐敗した悪名高き官僚制度により、ワクチン接種の実施は非常に遅く(接種済み人口は全体の25%以下)、人々の生活は制限され続けてきました。しかし、最近のパニックの原因であるオミクロン株は、他の変異株に比べ軽度の症状にとどまると言われています。地元の報道機関によると、南アフリカでの最近の入院の多くはコロナ以外によるものです。

 

ではなぜ大統領は国際渡航禁止令での悲惨さをさらに増すかのように5度目の禁酒令を検討しているのでしょうか?

 

「私が見る限り、禁酒令は政府にとってマウントを取るのに都合の良いツールのようなもので、なにか深刻なことが起こらない限り、禁酒令を手放すことなないでしょう。コロナ以前から存在していた規制であるため、コロナが過ぎ去っても禁酒令がなくなることはないと思っています。」と  van de Vyver  は主張します。

 

彼はこう続けます。「私たちはワイン、ブランデー、アルコール生産の豊富な歴史を持っています。それでも、その存続と進歩のために政府が何か関心を向けたことを見たことがなく、いつか変わってくれることを願っています。近いうちに次の禁酒令が実施される見込みですが、販売を完全にロックダウンしてしまうようなものじゃないよう願っています!政府は、代替案の提案・実施や、人々の生活維持を助けるための検討さえしていません。ここに禁止が機能しなかった理由があるでしょう。」

 

Erica Taylor  は次のように付け加えます。「感染者の数はこれまでで最も多いですが、死者数と入院者数はこれまでで最も少ないです。実際、大統領も今コロナに感染しています。」

 

これはおそらく、逆境の中において希望の光を見つけるのに最適な機会です。2021のヴィンテージは素晴らしい品質となり、2021年の最初の6ヶ月間のケープワインの総輸出量は非常に好調でした。最近の売上高によると中国への出荷額は2倍に増え、米国でのワイン愛飲家のケープワインへの注目はさらに高まっているようです。

 

問題は、この国際的な成功が、友人や隣人との間に分裂を生み、拡大し続ける不平等を明らかにするのでは、という点です。南アフリカは持つ者と持たない者の境界線がはっきりしている国の1つであり、貧困街であるケープフラットの状態と、ステレンボッシュの宮殿のような邸宅との差は明らかです。そしてケープにはもう1つの境界線があります。それは、輸出する余力のある企業と国内所得に依存する企業です。

 

「問題は、コロナがワイン業界に存在する構造的弱点を明らかにしたことです、」と  Constantia Glenのオーナーである  Alexander Waibel  は認めます。「ケープのワイン農園の大部分は国内のワイン販売に依存しすぎており、輸出市場での評判を築くためのリソースやドライブが不足しています。コロナの大流行により、人々は自身の思い描くビジネスモデルの将来の持続性を検討する必要性に直面しています。」

 

ウォーカーベイの  Paardenkloof estate  のオーナーである  Daphné Neethling  は2021年の初め頃に私にこの問題について語ってくれました。彼女は、自身のワイナリーが「100%黒人女性が所有するワイナリーであり、売上と収入のほぼ99%は地元の観光市場に依存する」と言います。さらに、5回目の禁酒令の見通しがあれば、恐らく彼女の事業は崩壊するだろう、と付け加えます。

 

「多くの生産者は輸出市場を構築する能力を持っておらず、売れ残ったワインの量は大幅に増加しています。」と  Hamilton Russell Vineyards  のオーナーである  Anthony Hamilton Russell  は言います。「売れ残ったワインは”洗い流し”のため、おそらく来年1~2年は世界中のいたるところで値引きがなされるでしょう。しかし真に同情すべきはこの状況下で仕事を失った人々であり、彼らの多くは低技能であることが多いです。実際に、ワイン業界ではかなり大幅な人員削減が行われています。」

 

業界全体が不安に包まれた状態の中、5度目の禁酒令の施行をただ待つだけとなっています。これは単なる愚策かもしれないし、ケープの多様で経済的に活気のあるワイン産業を破壊するための政府側の組織的な努力かもしれません。この中で確かに言えることが1つあるとすれば、政府は事業存続の危機に直面する  Neethling  のような人々に一切の恩恵を与えていないということです。

 

 

引用元: https://www.wine-searcher.com/m/2021/12/covid-clobbers-south-african-wine-again

この記事は引用元からの許諾をいただき、Firadisが翻案しています。
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CTA-IMAGE ワイン通販Firadis WINE CLUBは、全国のレストランやワインショップを顧客とするワイン専門商社株式会社フィラディスによるワイン直販ショップです。 これまで日本国内10,000件を超える飲食店様・販売店様にワインをお届けして参りました。 主なお取引先は洋風専門料理業態のお店様で、フランス料理店2,000店以上、イタリア料理店約1,800店と、ワインを数多く取り扱うお店様からの強い信頼を誇っています。 ミシュラン3つ星・2つ星を獲得されているレストラン様のなんと70%以上がフィラディスからのワイン仕入れご実績があり、その品質の高さはプロフェッショナルソムリエからもお墨付きを戴いています。 是非、プロ品質のワインをご自宅でお手軽にお楽しみください!
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