ブルゴーニュの赤、そしてバローロ

ブルゴーニュの赤、そしてバローロ
ブルゴーニュに対するイタリアの答えはバローロであり、ボルドーへの答えはブルネッロ・ディ・モンタルチーノでしょうか?

バローロとブルネッロは問題を抱えています。イタリア以外のワイン愛好家は、ボルドーやブルゴーニュの方が遥かに飲み慣れているからです。とはいえ比較は難しいですが、これは彼らの利点にもなり得ます。

 

それぞれの新しいヴィンテージが間もなくリリースされます。ブルネッロは2017年、バローロは2018年です。前者が生産されるモンタルチーノにとっては非常に困難な年となり、遅い霜害と干ばつ、そして低収量に苦しみました。しかし、少なくとも私が試飲したワインはかなり成功しています。素晴らしい年となった2016年ほどの深みはないですが、それでも飲みがいのあるワインです。

 

2017年にトラウマを抱えたバローロは、2018年は遥かに穏やかな時間を過ごしました。ワインはよりブルゴーニュ風の仕上がりです。

 

バローロをボルドーと比べると、タンニンと酸が多すぎると感じるでしょう。しかしブルゴーニュとの比較は、そのクリュ・システム、淡い色、そして香りの両方において、より良い類似点を見せます。

 

理想としては、フランスの先入観なしにこれらのワインにたどり着くことです。英国では、(フランスワインへの)先入観の少ない人々は50歳未満である場合が多いです。彼らはボルドーが全てであり最後であるとは考えていません。よりオープンで実験的です。フロリダの  Artisanal Fine Wines SGWSのLaura Depasquale MS  は、アメリカの彼女のいる地域では、バローロとブルネッロはベビーブーマー世代(1946~1964年に生まれた世代)やX世代(1965年から1980年に生まれた世代)のワインであるといいます。彼らはイタリアワインを愛し、恐らくイタリアを訪れたことがあり、ボルドーやブルゴーニュ、そしてナパ・カベルネやスーパータスカンなども好む傾向があるといいます。

 

アジアはどうでしょうか?ほとんど同じようです。中国にある  TasteSpirit  の  Ian D’Agata(ワイン評論家)に、アジアでバローロとブルネッロを好む層について尋ねました。「彼らはほぼ40~50歳以上で、ほとんどがブルゴーニュ、そして少しボルドーを飲みます。そして彼らは常に最高のものに焦点を合わせています。」ここでいう最高のものとは  Soldera  と  Gaja  を指します。もしアジアで誰かが  Cappellano、Giacosa、Aldo Conterno、Giacomo Conterno、Biondi-Santi、Il Marroneto、Poggio di Sotto  や  Stella di Campalto  を飲んでいるのを見かけたら、彼らはきっと若く、よりワインに興味があるに違いありません。

 

しかし、これらのワインに高額なお金を払うほどには興味がないと、D’Agata  は無念さをにじませながら付け加えます。そのお金はハイエンドのブルゴーニュワイン、あるいはナチュラルワインに向けられます。ステータス?それは大きな要因の一つだと彼は推測します。

 

それでもバローロ愛好家は、ワインの持つ赤いバラや牡丹の高貴なアロマ、フレッシュさと後を引く美味しさ、多様な料理への適応性を愛しています。クリュ・システムは複雑さではなく魅力となり、才能はあるがあまり知られていない生産者を見つける事は、彼らが夢中になれるゲームになっています。

 

時代による変化

どちらのワインも、過去10~15年の間に起こった大きな変化に助けられてきました。バローロで変化したのはタンニンです。かつてはレンガの如く強靭でしたが、”モダニスト”ムーブメントにより新樽や短い熟成期間を導入することで、これらのタンニンを和らげようとしてきました。

 

この流行がおさまるにつれて、「マセラシオンの期間」が少しずつマニアの領域になっていったとイタリアのスペシャリストである  Walter Speller  は語ります。「マセラシオンの時間が長くなるほど、タンニンが柔らかくなると考えられるようになり、マセラシオンの時間はカルトとなりました。人々は少なくとも40日間、ほとんどで66日ほどマセラシオンするようになりました。しかしマセラシオンが長ければ長いほど、タンニンがシンプルになるため仕上がるワインもシンプルになります。必要なのは15-20日程度なのですから。」

 

今日では、ワイン造りはより無干渉になり、栽培ではオーガニック寄りの農法が増え、醸造に用いる木樽はより大きく古い傾向があるといいます。それでも彼は今日のバローロに多くの類似点を見つけています。「ワインは非常に高品質です。消費者はバローロを選べば高品質のワインを得られる事がほぼ保証されています。」

 

これは明らかにバローロの持つ魅力の1つです。バローロは信頼性が高く、価格もお値打ちです。我々一人一人がトップレベルをどのように測るかは別問題ですが、最も高価なワインでは「価格レベルに相応する風格を持っている」と  Speller  は言います。

 

ではブルネッロは?ブルネッロは常に成功しており、いつの時代もトスカーナで造られるサンジョヴェーゼの頂点と見なされてきました。しかしその後、サンジョヴェーゼ以外のブドウを許可すべきかどうかという議論が巻き起こり、国際品種をブレンドすべきではないという結論が出ました。「彼らはテロワールゲームに強制されました」と  Speller  は言います。しかし、現在もクリュのシステムは存在しておらず、(市場に出回るワインの)品質は不均一の可能性もあります。

 

これが、中国のワイン愛飲家がよりバローロを好む理由の1つであると  D’Agata  は言います。またブルネッロの持つ高い酸も彼らの味覚にはあまりフィットしないようです。米国では、ブルネッロの大手ブランドがブランド・ロイヤルティーを高めているのに対し、バローロは全てのクリュと生産者についてより多くのワーク、リサーチ、調査が必要であるとアメリカ在住の  Depasquale  は言います。「米国の多くの  Gaja  愛飲家は、Gaja  がどこにあるか、ブドウ品種は何かを実際にはよく分かっていません。彼らはただそれが素晴らしく、高価で、イタリア産だという事を知っているだけです。」

 

当然のことながら、これらの愛飲家にとってヴィンテージは、1997年や2000年、2010年、2016年など、マスコミで宣伝されている場合にのみ重要となります。これは中国でも同じで、”著名なワイン”の愛好家は有名なヴィンテージの愛飲家でもあります。また、まだ飲んだことがないワインに挑戦しようとしている若いワインビギナーたちは、ネッビオーロとサンジョヴェーゼの理解に頭を悩ませているところなので、ヴィンテージについてはまだ考えたくもありません。

 

英国でもそれほどの違いはない、と  shippers Vinexus  の  Nick Bielak  は言います。「ヴィンテージは人々があまり知らないので、それほど重要な要素ではありません。2016年のブルネッロのように素晴らしいヴィンテージを手に入れ、その後困難な年が続いた場合、重要なのは人々がヴィンテージへの期待に頼るのではなく、それらをただ味わうことです。ヴィンテージへの期待は良くも悪くもあります。人々はそこまで偏見を持っていないのです。」他の市場-おそらくドイツ、イタリア-では、2017年はなかったものとして片づけられるかもしれません。

 

2018年のバローロはこれらの不利な点に苦しむことはないでしょう。素敵な年となり、エレガントで、絹のようなタンニンのワインになったのですから。また、今後協会のチャリティーオークションが市場にどのような影響を与えるかも非常に興味深いです。オークションで販売されているワインの知名度が遥かに低いため、ブルゴーニュのオスピス・ド・ボーヌの場合のように市場価格を示すものではありませんが、将来的には成長する可能性があります。

 

・プリムール・オークション

今起こっていることを簡単に挙げるとこうです。このオークションは  ”Barolo En Primeur”  と呼ばれ、10月30日にピエモンテのグリンツァーネ・カブール城とニューヨークで行われます。バローロ協会からの認可を受けて行われますが、銀行の非営利部門である  Fondazione Cassa Di Risparmio di Cuneo (CRC)  によって開催されます。CRC  は2020年に  Gustava  の畑を購入し、チャリティーのためにワインをオークションにかけることにしました。各バレルは指定した慈善団体に届き、このチャリティーにより合計で €900,000 (約1億1500万円相当)を上げることを望んでいます。そのためにはボトル1本あたり約 €200での落札が必要です。ライブストリーミングは行われませんが、誰でも入札が出来ます。将来的には他の生産者も自身のワインでオークションに参加できるようになる構想です。

 

バローロとブルネッロはそれぞれ既に第二のマーケットを確立していますが、ワインへの投資はスコア各誌での高ポイント獲得者に集中しています。D’Agata  は、アジアで投資のために購入されるイタリアワインはほんの一握りであると考えています。それはGaja, Soldera、 Quintarelli、 Masseto、 Sassicaia 。「そして他には何もありません。」これ以外のワインがあるとしたらたった4人しかいない評論家のうちの1人から99-100点を獲得するしかなく、この中の1人がD’Aagataです。高得点は良いリターンを意味する可能性があるため、そのような高得点を獲得できれば彼らはワインを購入するでしょう。米国での投資対象はというと、きっとGaja, Gaja, GajaだとDepasqualeは言います。

 

それでも、もし興味があれば、オークションで他の生産者や古いヴィンテージを見つける事が出来るでしょう。ワインを愛する人にとって、オークションは一見の価値があり、ビッグネームハンターとの競争もありません。

 

 

引用元: https://www.wine-searcher.com/m/2021/12/burgundys-red-barolo-is-too

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CTA-IMAGE ワイン通販Firadis WINE CLUBは、全国のレストランやワインショップを顧客とするワイン専門商社株式会社フィラディスによるワイン直販ショップです。 これまで日本国内10,000件を超える飲食店様・販売店様にワインをお届けして参りました。 主なお取引先は洋風専門料理業態のお店様で、フランス料理店2,000店以上、イタリア料理店約1,800店と、ワインを数多く取り扱うお店様からの強い信頼を誇っています。 ミシュラン3つ星・2つ星を獲得されているレストラン様のなんと70%以上がフィラディスからのワイン仕入れご実績があり、その品質の高さはプロフェッショナルソムリエからもお墨付きを戴いています。 是非、プロ品質のワインをご自宅でお手軽にお楽しみください!
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