ロワールで復活の兆しを見せる忘れられた品種
ピノ、カベルネ、メルローといった同じようなワインに飽きて、何か変化が欲しいと思ったことがありませんか?
そんな時、新たに発見された品種を検討してみてはいかがでしょうか。
ロワールのスター醸造家が、忘れられていた品種の栽培を開始しました。
人の手の介入を最小限に抑えた醸造で大きな知名度を誇るロワールのビッグネーム、Clos du Tue-BoeufのThierry とZoë Puzelat親子は、19世紀にこの地で栽培され、長い間忘れられていた黒ブドウ品種の試験栽培に着手しました。4月上旬、Puzelat家はLignage(リナージュ)の若木82本を植え、10年に渡るこの品種の試験栽培を開始しました。
この「Lignage」という品種は、非常に珍しく、数年前にモンペリエのINRAの苗床で唯一残っていた植物体(1本)がウイルスに感染し、ほぼ絶滅状態にあったほど希少なブドウです。(※INRA・・フランス国立農学研究所の事で幅広い品種の保管でよく知られる)この品種を健全かつ大規模に繁殖させるため、INRAは4年の歳月をかけてようやくウイルスの除去に成功しました。
先月、82本の苗木がトゥーレーヌ東部、ブロワの南にあるレ・モンティル村のClos du Tue-Boeufの元に届けられました。この品種はPuzelat家にとって特別な意味を持ちます。なぜなら、かつてこのドメーヌでは、Lignageが栽培品種の1つであり、さらに彼らは長いことこの品種の復活を検討してきたからです。
「この品種を復活させたかったのは、これはPuzelat家にとって私の父の失敗したプロジェクトで終わってしまっていたことと、敷地内に数本のブドウの木があればよいと思ったからです」とThierry Puzelatは語ります。公式には、この植栽は実験的なプロジェクトであり、まだこの品種はどのアペラシオンのタイトルにも記載されていません。
Lignageの復活は、François Bonhomme氏が率いる地元の団体サントル・ヴァル・ド・ロワール遺伝資源連合(URGC)が統括する幅広いプロジェクトの一部でもあります。
「(URGCは)この地域の生物多様性を考える唯一の地域活動で、この地域にある幾つかの団体の集合体です。ある人は特定の動物の保護に、またある人は野菜や果樹の保護に目を向けたりと様々です」とBonhomme氏はWine-Searcherに語りました。
彼が言うに、このグループの目的は、19世紀末にフィロキセラが飛来する以前にこの地方で栽培されていた古いヴィティス・ヴィニフェラ種を守り、その価値を認めることにあると言います。
また彼は「私は既に約50の品種を確認しました」と付け加えます。
Lignageのこの地における歴史は古く、1427年の文献に初めてその名が記されています。Macé Doux、Macédoux, Massé Doux もしくはLignage de Bloisとも呼ばれていました。この品種は一般的にブロワ周辺に見られ、19世紀初頭から半ばにかけては、コート・デ・グルエと呼ばれるワイン生産地でその名を知られるようになりました。
この品種はピノ・ノワールに似ていて、比較的淡い色の赤ワインを造り、白ワインさえも造る事が出来ます。ブドウの樹は比較的小さな房に紫色の卵型の実をつけ、房にはほとんど肩はありません。
この品種からのワインはほぼ知られておらず、文献によると、Lignageは繊細なアロマと低いアルコール度数を持つ、淡い色の上品なワインを造ると記されています。
ブドウ樹の芽吹きは遅く、特にうどん粉病に弱いという特徴を持ちます。19世紀末から20世紀初頭のフィロキセラの被害を除けば、この品種の人気が落ちた理由の1つは、収量が少ないことと、暖かい場所にしか適さないことが明らかになったからだと考えられています。
最初の試験的なワインが生産される2024年には、より多くのことが明らかになるでしょう。2026-28年までには、この品種は公式なブドウのカタログに掲載され、より多くの植え付けに必要な苗木が入手できるようになることが期待されています。
ロワール地方には他にも、Red Gascon(1ha)、Genouillet(4ha)、Gouget Noir(7ha)、Meslier-Saint-Francois(9ha)などの珍しい品種が残っています。
引用元: https://www.wine-searcher.com/m/2022/04/forgotten-grape-revived-in-the-loire
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