Roederer、気候の変化に対応

Roederer、気候の変化に対応

温暖化するシャンパーニュはアプローチの変更が必要になり、ある生産者にとってはノン・ヴィンテージ・ブレンドをやめることを意味します。


「私たちが学んだルールはもう通用しません」とRoedererの醸造責任者、Jean-Baptiste Lecaillonは語ります。彼が言っているのはもちろん気候変動のことであり、彼が明言するように、シャンパーニュの果実の性質が変化する“信じられないスピード”のことです。実際、それに対処する方法を学ぶためには、数百年前の変化を見なければならないほどのものすごいスピードです。

 

Roedererのアーカイブを1832年まで遡り、Lecaillonは言います。「果実味という点では、その頃に近いワインを造っている」。もしそれは違うと思われるなら、当時のシャンパーニュがどんな味だったかは定かではないが、当然のように食事と一緒に飲まれていたことを思い出してみてください。

 

つまり、シャンパーニュにはある程度の重みがあったということが推測できます。Lecaillonによれば、シャンパーニュではピノ・ノワールは白ブドウ、それもシャルドネよりも熟しやすいということです。

 

「今日では、シャルドネは開花から収穫まで92~93日ですが、ピノ・ノワールは86~88日です。昔は、ピノは早く熟し、シャルドネは完熟が困難、プティ・メリエは難しく、アルバンヌはもっと難しかった。その結果、後者2品種は生産者からの人気がなくなりました。しかし、それは白ブドウが気候変動に対する武器になり得ることを意味するのです。「我々は気候変動に対抗するたくさんの手段を持っています」と彼は確信します。

 

Roedererが行った最も明白な変化は、ノン・ヴィンテージの生産を終了し、代わりにKrug や Jacquessonのようなマルチ・ヴィンテージ・ワインの『Collection』を発表したことです。マルチ・ヴィンテージは、ベースとなる年のワインや、バランスをとるために使用するリザーヴ・ワインによって、異なるワインになります。一貫性を重視することはなく、どのリリースも同じ味のワインを造るつもりはないのです。「ハウス・スタイルはもはや目標ではありません」と彼は言います。「結果なのです」。

 

そしてシャルドネは、Brut Premierでは40%のブレンドでしたが、Collectionでは主要品種になっています。

 

数年前、実際には2019年の時点で、Lecaillonは酸味の追求とは対照的にフレッシュさの追求について語っていました。今、彼はフレッシュさの上にさらに、フィネス、軽快さ、低アルコールを求めていると言います。現在、Roedererの自社畑で収穫されるブドウの潜在アルコールは9%ではなく、10.5~11%です。つまり、最近のブドウには補糖は必要なく、エキス分とフェノール類は多いが、酸と窒素は少ないということです。
対照的に1970年代は、酸は高かったが、アルコールとストラクチャーは低かったのです。「私たちは、自然が与えてくれない果実の成熟感を作り出さなければならなかった。我々はそれをBrut Premierで行ったのです」。

 

ブレンドは当時も今も武器となっています。プティ・メリエ、アルバンヌ、ピノ・ブランを試験的に植え、フィールド・ブレンドも試しています。伝統的なシャンパーニュのコルドン仕立ではなく、シャブリ式の剪定を採用しています。樹液の流れを完璧にするため、そして房を保護するために、できるだけ垂直なキャノピーにしたいのです。全てはブドウの樹をゆっくりと成長させるためです。

 

彼はパーマカルチャーを試したことがありますが、あまり好みません。5年間は良いのですが、その後はブドウ木の勢いがなくなり、収量も減ってしまう。そのため、4月から7月の間に4回、5~7cmだけ耕し、雑草と表面の根を取り除きます。Roedererのブドウ畑は現在、すべてビオディナミ農法で栽培されています。「実際、ブドウ木はより深く根を張っています」と彼は言います。「最初の数年間は馬が畑を耕すので、土壌が固まらず、ブドウ木は深く根を張ることができるのです」。しかし、これは単一の解決策となるものではなく、成功には様々な角度からの解決策が必要です。

 

トップ・シャンパーニュにはキュヴェだけで十分だという古い考え方はもう通用しません。「タンニンが熟していないときは、キュヴェだけを使うのがよかった。しかし、良いタイユは塩味と余韻を与えてくれます」と彼は言います。今はCollectionに5%のタイユを使っています。

 

樽使いも変わってきました。樽は丸みを与えるために使うこともできますが、丸みではなく、活気と長い余韻を与えるために使うこともできます。樽発酵についての話です。Roedererは20年物の円錐形の樽を4つ所有しています。円錐形というのは、木を曲げるのではなく、木を切ることによって得られる形だからです。Lecaillonは、ステーヴ(樽のパーツとなる木片)を曲げることで得られるオークの風味を好まず、Roedererのために特別にデザインされた非常に軽くトーストされた樽を使います。

 

しかし、樽が40年経つ頃には、コニャックのような味がし始めるので、その時点でポルトガルに出荷されます。Ramos Pintoの生産者はこの樽を気に入り、この樽で熟成させたトゥニーポートはよりフレッシュでミネラル感があると太鼓判を押すので、win-winの関係です。

 

重要なブレンド

様々な要素がありますが、ブレンドが重要です。

「ワインの未来は、ますますブレンドが重要になるでしょう」と彼は言います。「もちろん今後も単一畑のワインは存在するでしょうが、マルチ・ヴァラエタル、マルチ・テロワールのワインには生き抜く力があります」。しかし、これまで見てきたように、それは一貫性を生み出すことではなく、毎年最高のワインを造ることなのです。「それはブレンドの新たなビジョンです」。

 

それは、ヴァン・クレール(ベース・ワイン)のラインナップの中で、最もわかりやすいワインではなく、最も内気なワインを探すことであり、またベースとなる年とリザーヴ・ワインのつながりを作ることかもしれません。ワインによっては、ブレンドする前にもっとエレヴァージュ(熟成)が必要なこともあります。

 

「シャルドネがその例です」と彼は言います。「イースターの前にヴァン・クレールをテイスティングするのは時間の無駄です。バランスが悪く、還元的なワインになりかねません。イースターの前にシャルドネの醸造について判断することはありません。なので6月までにその年のヴィンテージを瓶詰めすることはありません」。

 

もちろん、リザーヴ・ワインをどう使うかが重要です。Roedererは2012年に新しいリザーヴ・ワインRéserve Perpertuelleをスタートさせましたが、この年はBrut PremierからCollectionへの移行を始めたのと同じ年です。Réserve Perpertuelleはスモーキーな香りやローストしたコーヒー、塩味やワックスのようなテクスチャーを与えます。現在、Réserve Perpertuelleの使用比率を高めています。また、オークのリザーヴ・ワインもありますが、これは酸化的なニュアンスを与えないように設計されており、そのために最近のオークは8年樽ではなく4年樽と若くなっています。リザーヴ・ワインを使うことで、天候の影響を和らげることができます。

 

マロラクティック発酵は減少、そしてお察しの通りドサージュの量も少なくなっています。1970年代には1lあたり13gだったドザージュは、9g/l、8g/lと徐々に下がり、最新のCollection 244では7g/lになりました。

 

ボトル内の圧力も武器のひとつで、圧力が高ければ高いほどフレッシュ感が増します。Brut Premierでは5気圧だったものが、Collectionでは5.8気圧になりました。しかし、ブドウの成熟度が低い年には圧力を下げることもあります。

 

Lecaillonによる各年のブレンドの分析を見れば、新しいワインの進化を実感できます。私たちは、シャンパーニュの生産者がワインの並外れた美しさについて叙情的に語ることに慣れていますが、この分析は厳格であり、少しも詩的ではありません。Collectionの最初の試みである238は2013年をベースにしており、テイスティングしたワインは2017年にデゴルジュマンされたものです。全てのサンプルは収穫から4年後にデゴルジュマンされたものです。
このワインはマロラクティック発酵をやりすぎ、オーク・リザーヴの熟成期間が長すぎ、9g/lとドサージュが多すぎました。「マロラクティックのインパクトが強すぎる」という批評です。「力強いが固く、テクスチャーと旨味に欠ける」。

 

次のワイン239は2014年をベースにしていますが、やはりマロラクティックが多すぎ、オーク・リザーヴの熟成期間も長すぎます。しかしドサージュは8g/lで適正と判断されます。「マロラクティックによる丸みのあるクリーミーなテクスチャーでより精巧ですが、少し甘味がある。スムーズな統合に欠ける。よりエレガントでフレッシュですが、フィニッシュは酸味があり、ドライで固い。まだBP[Brut Premier]のラインで、もっと美味しくなる可能性があります」。

 

自分のワインに対して一切遠慮がなく、シビアですよね。Collection241だけは、全て完璧に準備をして、良い出来です。しかし、次のブレンド、242には欠点があります。オーク・リザーヴが効きすぎ、ピノ・ノワールのタイユとオーク発酵が足りていません。「非常に難しいヴィンテージで、ボトリティスが多く苦労し、特にピノとムニエで顕著だった」とのコメント。しかし実際には、絹のように滑らかで、精妙で、撫でるように美しいワインです。私はLecaillonほど烈しい判断はできませんが。

 

Lecaillonは、試作品の238から241までのCollectionの最初のバージョンを、この物語の第1章と位置づけています。Brut Premierからは離れましたが、やはりピノ主体でした。242以降のワインについて、Lecaillonは “伸びやかなフィネス”と呼び、シャルドネがポールポジションを取っています。

 

そのシャルドネを発酵前に酸化させると、恐ろしいほどに色が黒くなり、フローラルや柑橘系の香りを失いますが、強烈なチョーキーさが手に入ります。以前にも行われており、「1959年にも果汁を酸化させていました」と彼は言います。「私がそれに気づき、発明したというわけではないですが・・・。これ以上は企業秘密です」。

 

引用元: Roederer Rings the Climate Chang
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