2021年ボルドー:皆が笑顔のヴィンテージ

2021年ボルドー:皆が笑顔のヴィンテージ

2021年はトリッキーで忍耐が報われた年となりましたが、それが価格に反映されるのでしょうか?


ワイン市場とは何とも不思議なものです。昨年の秋、ボルドーの2021年ヴィンテージに対する主な反応は、明らかなほどに興奮が欠如しており、そのような反応が広く行き渡っていました。しかし今、ボルドーの面々は満面の笑みを浮かべています。なぜなら多くの人がワインを買っているからです。2021年のボルドーは問題なく売れていくでしょう。

 

人々がワインを買い求め、ボルドー地方に笑顔をもたらす理由は、世界を取り巻く“不確実性”が要因だと言えるでしょう。もし将来に不安を感じているならワインを開ければいいじゃないですか。しかも、いつもよりいいワインを。・・・これが全ての理由です。

 

ボルドーのワイン商  Millésima  の取締役を務める  Fabrice Bernard  は「高級ワインのマーケットは非常に好調だ」と話しますが、ボルドーにとってファインワインマーケットとクリュ・ブルジョワマーケットは別物である点は強調しています。ファインワインの場合、「我々が10ケース買いたいと言っても1~3ケースぐらいしか購入できません。人々は素晴らしいワインをこれまで以上に求めているのです。コロナやウクライナ情勢による不安のさなか、人々は“先のことは分からないし困難があるかもしれない、でもいいボトルを開けるのは簡単だ”と話しています」

 

「コロナにより、人々は様々なワインを試飲するようになりました。ブルゴーニュしか飲まなかった人が、ボルドーやイタリアワインを飲むようになったのです。以前は8~10人で夕食を取っていましたが、それが今では4~6人、それ以上にはなりません。だから、より良いボトルを開けるようになったのです。需要はかつてないほどに高まっています」

 

その証拠に、Millésima  の平均的なボトル価格は、コロナ以前はおよそ 43 – 44 ユーロでしたが、今では 54 - 55 ユーロになっており、熟成したワインの需要も非常に大きくなっているといいます。彼はシャトーに頼んで、1982年、88年、90年、95年、96年のワインを分けてもらったので、Millésima  ではこれらのワインを1本単位で販売できます。「シャトーからのワインなので、品質と信頼性は間違いありません。コロナの時に思いつき、ウェブサイトで販売を開始しましたが信じられないくらい売れています」
シャトーのオーナー達も同意見です。
Smith Haut Lafitte  のオーナー  Florence Cathiard  は「昨年はコロナ禍でも素晴らしい販売実績でした。ボトルワインも売れており、信じられないほどです」と語ります。

 

Phélan-Ségur  の  Veronique Dausse  も同様に「どこもかしこもお金に溢れている」と話します。

 

では、インフレの影響はどうでしょうか?どこの国でも光熱費の高騰が同様に見られ、さらに  Cathiard  は、ワイン用の木箱が65%も値上がりしている点を挙げます。Dausse  はこう言います。
「ボトル、ラベル、ケース、エネルギー、あらゆるものが値上がりしています。インフレでは物価と同様に金利も上がりますが、物価ほどの上昇率ではないため預金にしておくと実質的にお金の価値が下がってしまいます。それならば、と人々はワインを買おうとするのです。投機のためではありません」
人々は消費するためにワインを買うのです。消費主導の需要の高まりです。

 

そして、いくつかの国では、若いワインが少なくなっています。例えば、Smith Haut Lafitte  では、霜が降りなかったのに、2021年の収量は通常の半分となりました。ワイン商の  Bernard  はこう言います。
「この傾向は、、ブルゴーニュ、ロワールといったフランスの主要ワイン生産エリア全てに言えることです。2018年、19年、20年、21年と生産量が少ない年が続きましたが、スペインやイタリア、フランス全土でも生産量が減るというのは、私も初めての経験です。通常はどこか1つの国ですが、3つの国全て同時にということはありませんでした。だから2021年のワインを求める全ての人に供給できる十分なワインがないのです」

 

また、余談ですが、生産者達はケースやボトルなどの備品を取り揃えることにも苦労しています。Dausse  によると、Phélan-Ségur  では6月に2020年のボトリングを行いますが、「シャトー全体が、事前に注文したパレット(輸送の際に用いる荷役台)に囲まれています。それは価格上昇を見越して早めに注文したからではありません。必要数を確実に入手するためです。供給とインフレ、そして2021年が我々にとって過去最低の収量になった事などが重なり、ドミノ倒しのような状況がどのワイナリーでも起こっています。Phélan-Ségur  の2021年の収量は1haあたり35hlを下回っています」と話します。

 

価格の不透明感

ここまでの話を見ていくと、2021年ボルドーは大幅な値上げが控えていると予想される方もいるでしょう。実際にはどうなるのでしょうか?

 

多くの人が -実際に私が話をした全員が-   価格に関しては何が起こるか分からないと話しています。インフレと需要を考えると、価格の下落を期待するのは非現実的でしょう。誰もそんなことはしない、と  Ch. Picque Caillou  の  Paulin Calvet  言います。しかし、販売には楽観的です。「2021年のワインは売れるでしょう。良いヴィンテージだから自動的に、というわけではなく、ネゴシアンが沢山販売したからです。この売れ方はクレイジーな程です。彼らはシャトーのオーナーにメッセージを送りたくないからあまりこの点を明らかにしませんが、とにかく物凄く売れているんです」

 

そして、オーナーがワインを売るというのは、ネゴシアンに売るという意味であることを忘れてはなりません。その後どうなるかは、繋がっているとはいえ別問題なのです。Picque Caillou  の  Paulin Calvet  はこう続けます。「唯一の問題は、トップドメーヌ達が2020年の価格にもう少し上乗せしてくることでしょう。しかし我々はそれはしません。昨年の価格で売れれば問題ないからです」

 

Smith Haut Lafitte  の  Cathiard  も同意見です。
「値付けは繊細な問題ですが、価格の引き下げは恐らく難しいでしょう。収穫量は少なく、ワインの品質も良いのですが、2021年はパラダイムの転換期となりそうです。アルコール度数は1%ほど低くなります。このような状況での値付けは慎重を要します」

 

価格の質問に対して、ワイン商の  Bernard  は「分からない」と答えます。
「価格はリーズナブルにすべきだし、多少の増減はあるにせよ以前と似た価格でなければいけません。しかし我々は慎重にならざるを得ません。シャトーも適切な値付けが分からないのです。全てのものが値上がりしていますが、同様の上り幅での値付けは難しいと理解しています。多少の値上げは必要でしょうが、大きく上げることは出来ないのです」

 

トップエンドでは、この年の難しさにもかかわらず、非常に良いワインがいくつかあるでしょう。
ですが、誰も2021年を極上のヴィンテージとは言っていませんし、セラーに無条件に持っておくべき年とも言っていません。聞くのは、とにかく買ってくれる人がいるヴィンテージだということです。

 

Pichon-Comtesse  のワインメーカー  Nicolas Glumineau  は、2021年は非常に骨の折れる年だったと回想します。「2021年は、経験はなくとも対処法を知っていると思っていた事が最初の数か月でたくさん起きました。2021年に直面した条件を知らなければ、“準備は出来ている”と言うのは簡単すぎるほどでした。オーガニックやビオディナミを取り入れてからの10年間の経験で、困難な状況に対しても準備は出来ていると思っていましたが、このような厳しい条件に直面したのは2021年が初めてでした」

 

霜やカビ病の脅威に晒された年だったので、化学薬品に頼れる人ならともかく、オーガニックやビオディナミ栽培を実施しているワイナリーにとっては二重の意味で大変な年だったでしょう。ビオディナミを取り入れている  Smith Haut Lafitte  の  Cathiard  は「コロナのおかげで、ブドウ畑がこれほどまでに手入れされる事はなかった」と付け加えます。普段は集まっておしゃべりしながら作業を行っていたブドウ畑のスタッフ達は、社会的に距離を置いていました。そして、野外で仕事ができるということで、収穫の際には皆が集まってきたと言います。しかし  Pichon-Comtesse  のワインメーカー  Nicolas Glumineau  はこう続けます。
「あの大変な収穫を忘れもしません。我々の畑は川と海、2つの大きな水塊の間に挟まれており、これが収穫を困難なものに大きく変えました。常に畑には湿度があったため、2021年のような年が20年前に起きていたらワインは1本も生産できなかったでしょう」

 

しかし、ワインは生産されました。Picque Caillou  の  Paulin Calvet  は「2021年の問題は、人々が霜のせいで良いヴィンテージになるはずがないという考えを持っていることだ」と指摘します。
これは2017年も同様でした。しかし、2021年は2017年よりも味わいに厚みがあります。2017年は9月の最後に10日間にも及ぶ大雨が降り、ブドウは希釈されましたが、2021年は冷涼で簡単な年ではありませんでしたが、このような大雨はありませんでした。

 

そして勿論、霜は品質には影響せず、生産量だけに影響します。だから霜の降りた2021年はそんなに売るものがないのです。

 

では2021ヴィンテージは誰が購入するのでしょうか?
明らかにロシアではありません。「ロシアはもともと市場が小さいので、さほど問題ではありません」とCalvetは言います。

 

では中国は?
ワイン販売にとって、コロナと上海の封鎖措置は明らかな問題です。中国はプリムールの巨大市場というわけではありませんが、ボトルワインを大量に購入しています。ボルドー全体では、2021年に最大の輸出市場となっています。

 

アメリカは2021ヴィンテージを買うでしょうか?
「分かりません」と  Bernard  は言います。「恐らく、ゆくゆくは購入するでしょう。2019ヴィンテージの時は、プリムールの時点では買わなかったため、彼らはマージンの一部を失いました。2014年の時も同様に最初は購入しませんでしたが、今彼らは2014年を買っています」

 

さて、ここまで話に出ていない辛口の白ワインですが、2021年は極上の年です。これまで造った白ワインの中でも2,3本の指に入る出来だと  Smith Haut Lafitte  の  Cathiard  は言います。もしこれらのワインの価格がお手頃で、銀行にお金を預けてもインフレで失ってしまうくらいなら、この優れたワインを購入しない理由などあるでしょうか?

 

 

引用元: https://www.wine-searcher.com/m/2022/04/forgotten-grape-revived-in-the-loire

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