生活費の上昇でその魅力を増すクレマン

生活費の上昇でその魅力を増すクレマン

 

シャンパーニュと同じ製法で造られるのに、はるかに手ごろな価格のクレマンの人気が高まっています。


フランスのスーパーマーケットやハイパーマーケット※では、クレマンの販売がシャンパーニュの販売を上回り始めています。
(※注釈:ハイパーマーケットは衣食住全てを扱う郊外に建てられる大型スーパーマーケットの意)

 

クレマンの輸出は好調で、現在販売の40%を占めています。シャンパーニュと同じ伝統的な方法で、厳格な生産ルールの下で作られており、クレマンの人気の高まりは、生活費の急騰、価格に対する品質の向上、消費者の嗜好の変化に大いに関係しています。ますます高価になるシャンパーニュを買うよりも、同等、あるいはそれ以上の品質のクレマン・ダルザスをより低価格で購入する方が賢明ではないでしょうか。

 

クレマンの成長は歴史的な規模であり、シャンパーニュの販売が依然としてはるかに大きな価値を生み出しているとしても、クレマンの現在の人気には終わりが見えません。このカテゴリーは過去5年間で19%成長しました。昨年フランスでは、スーパーマーケットやハイパーマーケットでシャンパーニュが2970万本売れたのに対し、クレマンの販売は2960万本でした。今年はクレマンの販売がさらに増加し、シャンパーニュの販売が減少しています。

 

2023年に販売されたクレマンの総数1億810万本のうち、4030万本(前年比5.7%増)が、シャルドネとピノ・ノワールに加えてオーセロワ、リースリング、ピノ・グリ、ピノ・ブランなどのブドウから作られるクレマン・ダルザスです。アルザスは依然として最大のクレマン産地で次点にロワールが続きます。現在、アルザスのワインのうち3本に1本はクレマンであり、その販売は過去5年間で20%成長しました。かつてはフランスで主に消費されていたクレマン・ダルザスの輸出は2023年に15%増加、今年は20%以上増加しており、米国は成長市場です。

 

大手生産者や協同組合がティラージュ後1年でクレマンをリリースする中、アルザスの丘陵地帯には、ビオディナミの職人であるKleinknechtやAlbert Hertzのように長期熟成させた豊かで鮮やかな酸味を持つテロワール主導のクレマンを作っている小規模生産者も多く存在します。

 

・ド・ボルドーの台頭

]アルザス、ロワール、ブルゴーニュ(シャティヨネなどの地域を含む)は、フランスの8つのクレマン産地の中でも強力な地域です。特にロワールは輸出量と生産量の成長の観点から重要ですが、ボルドーは比較的無名だったところから新たなクレマンの注目産地へと変貌しました。

 

2003年にプロデューサーのLionel Lateyronがクレマン・ド・ボルドーAOCを創設した時には、クレマンの生産量は約200万本でした。しかし、クレマン・ド・ボルドーの生産量は2010年の10,000hlから2022年には91,000hlへと急増し、2023年にはブドウ畑の面積が35%増加して1825ヘクタールになりました。2023年の販売は12%増加して1000万本に達しています。

 

Lateyronによれば、赤ワインの販売減少により、ボルドーの生産者はメルローとカベルネ・フランから作られるブラン・ド・ノワールのクレマン・ド・ボルドーにますます賭けるようになったと言います。

 

「経済的な要因や、赤ワインの販売に関する困難な状況がありますが、私たちの消費者調査では、新しい消費者はクレマン・ド・ボルドー・ブラン・ド・ノワールの豊かな風味と力強さを好んでいることがわかりました。」
そう話すLateyronは、澱とともに8年間熟成させるクレマンを生産しており、サン・テミリオン近くのモンターニュにある3キロメートルにも及ぶ石灰岩の地下セラーでワインを熟成させています。

 

昨年11月、上昇する販売を背景に、最大のボルドー・クレマン生産者であり、Louis Vallonブランドも手掛ける協同組合Bordeaux Familiesは、アントル・ドゥ・メールでのクレマン生産を2023年の250万本から今年は400万本に増やすために200万ユーロ(220万ドル)を投入すると発表しました。ボルドー・クレマン生産者協会の会長であるDominque Furlanによれば、クレマンはボルドーのジェネリックな赤ワインよりも生産者にとってより収益性の高いものとなっています。サン・テミリオンのグラン・クリュ生産者、Château La Renomméeは、クレマン専門家に委託してクレマンを作らせるようになりました。

 

変わりゆく気候の中では、収穫時に適切な酸味とpHレベルを確保するために、赤ワイン用のブドウよりも約10日早く収穫される必要があるクレマン・ド・ボルドーは、より適したワインと言えるかもしれません。ただ、ボルドーの生産者は、これまで赤ワイン用のブドウのフェノール成熟に焦点を当てていたため、これはなじみのないことだとLateyronは言います。

 

「クレマン・ド・ボルドーの生産者の数は毎年約10%増加しています。我々は良い状況にあり、シャンパーニュよりも厳格な生産ルールを持っているため、最高のスパークリングワインを作るチャンスがあります。温度管理された貯蔵と二次発酵(プリーズ・ド・ムース)のプロセスが義務付けられており、通常、収穫量も少ないです」とLateyronは述べています。

 

名前に何があるのか?

クレマンという名前は、1970年代にシャンパーニュから借りられましたが(歴史的にはシャンパーニュの二次発酵が十分に完了していない泡を指していた)、クレマンの生産は、そう呼ばれる前の19世紀以前にさかのぼる独自の歴史を持っています。

 

1990年、シャンパーニュは「クレマン」という名前の使用を放棄することに満足していましたが、その条件として、シャンパーニュ地域外のクレマン産地が同じ製法で作ったワインには”Champagne Method(シャンパーニュ製法)”ではなく“Traditional Method(伝統的な製法)”という用語を使用することが求められました。今日に至るまで、クレマン・ド・ロワールはヴーヴレイやソミュールのスパークリングワインよりもよく知られ、人気があります。

 

ラングドックのクレマン・ド・リムーは、現在ブランケット・ド・リムーよりもよく知られるようになりました。良い響きのシンプルな名前と高品質な生産に支えられて、クレマンの世界的な認知度は高まっています。(そして、ワインの名前を世界的に確立することは、まだイギリスのワイン業界には厳しい課題ですが、一部の人々は”イングリッシュ・スパークリング・ワイン“という名前に満足しています)

 

クレマン・ファミリーの不安

世界のワイン消費量が減少している中で、クレマンの進化の物語は数少ないポジティブな話の一つですが、8つの地域から成るクレマン・ファミリーすべてが順調なわけではありません。

 

昨年、フランスのクレマン生産者連盟を脱退したアルザス・クレマン生産者組合(SPCA)は、品質生産を確保するために厳格なクレマンアペラシオン規則が守られる保証がない限り、復帰しないと誓っています。

 

SPCAは、フランスでクレマン用ブドウの選別と収穫に機械を使用する試みがあることに懸念を表明しており、それが全房プレスという規制された技術で得られるジュースの品質を脅かす可能性があるとしています。クレマン生産では、EU法により手作業での収穫が義務付けられています。

 

「全房の長時間かけての穏やかな圧搾から得られるワインの香りのプロファイルに影響を与えるような収穫規則の変更は望んでいません。1970年代以来、品質生産を確保するために行ってきたすべての努力を無駄にし、クレマンを低品質のスパークリングワインのカテゴリーに落としたくありません。」
アルザスのエギスハイム村にあるビオディナミ生産者、Domaine Albert Hertzのワインメーカー、Frederic Hertzはこう話します。

 

クレマンワインのリリース前の最小熟成期間の短縮も生産者を怒らせました。

 

今年7月、フランス政府は、2021年春の霜害によってブドウ畑が被害を受けた結果、通常の12ヶ月の熟成期間ではなく、10ヶ月の熟成期間を経たクレマンを販売することをブルゴーニュのクレマン生産者に許可しました。同様に、昨年は、悪天候のために通常の1年ではなく、9ヶ月の熟成期間を経たワインを販売することがロワールのクレマン生産者に許可されました。

 

アルザスのクレマン生産者は、生産の近道や基準の引き下げを望んでいません。分裂を軽視しているようにも見えるクレマンの生産者団体FNPECの会長、Fabien Branchuはこう語りました。
「熟成に関する規則の例外はその期間だけの特別なものであり、今年のロワールでは続けられません。私たちは皆、クレマンに対してより大きな価値を創造したいと考えています。」

 

最後にクレマンを取り巻く数字データで締めくくりましょう。

 

クレマンの統計: (情報元FNPEC)

  •  販売量: 2023年に1億810万本(2022年比で5.7%増加)
  • 総ブドウ畑面積: 2023年に14,414ヘクタール(2022年の12,473ヘクタールから増加)

 

2023年の主要クレマン産地の成長:

  • アルザス: 4173ヘクタール(2022年比で13.6%増加)
  • ロワール: 3500ヘクタール(2022年比で16%増加)
  • ブルゴーニュ: 3344ヘクタール(2022年比で14%増加)
  • ボルドー: 1824ヘクタール(2022年比で35%増加)

 

2022年の生産量:

  • アルザス: 3,760万本
  •  ロワール: 2,300万本 
  • ブルゴーニュ: 2,260万本 
  • ボルドー: 990万本

 

 

引用元: Cost of Living Adds to Crémant’s Charms

この記事は引用元からの許諾をいただき、Firadisが翻案しています。
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