シャンパーニュ、厳しいヴィンテージに備える
- 2024.08.29
- ワインニュース
- シャンパーニュ、2024年、収穫、マーケット、スパークリングワイン
天候不順、販売不振、病害により、シャンパーニュの生産者は厳しいヴィンテージを迎えています。
2024年ヴィンテージの収穫が目前に迫った今、シャンパーニュ地方は正念場を迎えています。
毎年7月、シャンパーニュはアペラシオンの商業収量を決定します。これは、その年の収穫に向けて、生産者がどれだけ収穫しボトリングできるかを決めるものです。販売見込みとブドウ畑の収量(ブドウの木1本あたりの平均房数×予想房重量)の両方に適用されます。今年、シャンパーニュ委員会(CIVC)は、2024年のアペラシオンの商業収量を、2021年に設定された収量と同等の10,000kg/haと発表しました。
この2つのヴィンテージにはいくつかの類似点があります。どちらも春の遅霜と雹嵐が収量に悪影響を与えました。
現在の予測では、2024年の被害は潜在収量の10%程度です。より正確には、CIVCの品質および持続可能な開発担当ディレクターのSébastien Dubuissonによると、霜による被害は潜在的な損失として9.2%で(主にオーブ県で、バール・シュール・セーヌとバール・シュール・オーブの両地域が大きな打撃を受けている)、残りはエーヌ県とマルヌ県の境にあるマルヌ渓谷で500haの70%を破壊した激しい雹嵐によるものだということです。
2021年と2024年のもうひとつの共通点は雨です。どちらの場合も冬は温暖で雨が多く、春は涼しく、降雨量は非常に多く、このパターンは夏まで続きました。2021年には7月中旬に大雨となりましたが、今年は今のところ起きていません。しかし、今年の降雨量は、2021年並みと(それ以上ではないにしても)なるでしょう。気温の高い日が続いたかと思えば、数時間続く暴風雨に見舞われるという状況です。
雨と湿気の多い天候は、2021年と同様、極度のベト病の脅威をもたらしました。開花期間が延びたことで、リスク要因はさらに増大しました。今のところ、ベト病による収量の損失がどの程度になりそうか誰も予測したがらないですが、収穫時の損失が大きくなることは誰もが認めるところです。しかし、2021年よりは小さな被害になることを願っています。
商業収量発表後の記者会見で、ブドウ栽培醸造業組合(SGV)会長でCIVC共同会長のMaxime Toubartは、収量も10,000kg/ha程度になると見積もっています。しかし、2021年がどうであったとしても、現在のベト病の流行にウドンコ病の脅威が加われば、この数字は下がるかもしれません。
特に昨年の腐敗による品質問題を考えると、今年の商業収量が実際の収穫量とどう合致するのかを見るのは非常に興味深いでしょう。公式には、昨年のヴィンテージの10%は「タンクレベルで選別され交換される」もしくは今年の果汁に置き換えられる必要があるとされています。昨年のワインの品質が著しく低いからです。しかし、非公式には、誰が答えるかにもよりますが、そうした使用できない果汁量は40%に上ることもあり、これは大量の余分なブドウを見つけなければならないことを意味します。
通常のプロセスでは、品質の低いワインはDPLC(商業収量を超えて収穫されたアペラシオンを名乗れないブドウ)とRI(商業収量を満たすために使用できるリザーヴワイン)によって交換されます。
収穫ごとのRIは通常3000kg/ha(最大8000kg/ha)に設定されており、理論上生産者がDPLCの品質交換を行うためには12,000-13,000kg/haの収量が必要ということになります。DPLCの交換はシャンパーニュ地方では一般的に行われていますが、生産者が翌年にDPLCを販売できることを知っているために、質の悪いブドウを収穫して販売し、二重の報酬を得ることを誘引しているとして、依然として議論の的となっています。
販売不振
さらに、商業収量が販売見込みに基づいて設定されていることから、10,000kg/haは少し過剰であるとも言えます。シャンパーニュ地方から出荷されるボトルは16ヶ月連続で減少しており、移動年間販売本数(MAT)は2億8,000万本にとどまり、2021年6月のMAT2億8,100万本を下回っています。さらに、2020年のコロナ禍の損失により、2021年6月のMATは例年より大幅に低かったことは指摘しておきます。
昨年と比べ、シャンパーニュの売上は3,930万本減少しました(2023年6月のMATは3億1,930万本)。さらに、2024年第1期の販売量は、過去20年以上にわたって2番目に少ないのです。
商業収量10,000kg/haで換算すると2億8,000万本強となりますが、第1期の売上が15.2%減少していることから、この半年でこれ以上の売上減が発生する可能性は極めて低いです。
輸出売上が減少の原動力となっており、昨年と比較して18.2%減少していますが、フランスの売上は10.2%の減少にとどまっています。欧州の輸出は22.1%減少し、その他世界の地域への販売は16.4%減少しています。過去3ヶ月の売上減少幅は、今年最初の3ヶ月間と比較するとやや鈍化していますが、6月の減少幅(12.7%減)が5月(10.2%減)と4月(12.6%減)よりも急であったことは指摘する必要があるでしょう。
Union des Maisons de Champagne 組合(UMC)の会長であり、CIVCのもう一人の共同会長であるDavid Chatillonは、楽観的な商業収量について質問された際、思わしくない売上高の数字については昨年上半期の売上実績が良すぎたからだとしました。これは2022年に次いで過去2番目に高い数字です。とはいえ、1億670万本という2024年の第1期は、2020年を除く過去10年間のすべての年を引き離す不振です。
Chatillonは、コロナ危機の後、輸入業者やディストリビューターが過剰に在庫を抱えたことが売上減少の原因だと説明していますが、この減少が16ヶ月連続で続いているのを見ると、この言葉はあまり信憑性がありません。さらに、過去10年間の市場ごとの数字を見ると、フランスの売上が毎年数%ずつ減少し、減少傾向を続けていることは明らかです。輸出売上高は、コロナ危機以前の輸出売上高が最も高かった2018年よりも少し高い水準を維持していますが、欧州の売上高が減少し続ければ、同程度かそれ以下になる可能性が高く、総売上高は前年比で減少し続けることになります。
メゾンと協同組合が売上減少の矢面に立たされ続けており、第1期でそれぞれ17.1%と15.2%の減少となっていて、ノン・ヴィンテージのカテゴリーが苦戦を続けていることを明確に示しています。明らかな理由のひとつは、ブドウの品質には関係ないブドウ価格の上昇によるワインの値上げです。そして、より低価格、同価格帯のシャンパーニュ以外の代替品が豊富にあることです。
両共同会長は、シャンパーニュは他のスパークリングワインよりもプレミアムなカテゴリーであり、それゆえ高価格帯は正当化されると主張していますが、いくつかのメゾンや協同組合は、英国と米国の両方でノン・ヴィンテージの販売量を少しでも増やそうと、急激な値引きを始めています。この戦略は暫定的に功を奏していますが、消費者がより刺激的なスパークリングワインの代替品に移ったためか、今のところ販売不振を回復させるまでには至っていません。
IWSR(International Wine and Spirits Report)によると、米国のスパークリングワイン市場は2019年以降急激に拡大しており、2023年にはワイン愛飲者のほぼ4人に1人が定期的にスパークリングワインを選んでいるとして、報告書はこう述べています。「消費者は、スパークリングワインの新しいスタイルを探求するために、ブランド以外にもますます目を向けている」。これまでのスパークリングワイン探訪の大きな勝者はプロセッコ、クレマン、カヴァと米国のスパークリングワインであり、特に55歳以下の男性はスパークリングワインの選択においてより冒険的になっています。
一方英国では、2019年からの伸びは2023年には少し鈍化したものの、それでもワイン愛飲者の3人に1人は定期的にスパークリングワインを飲んでいます。しかし、英国人は選択にこだわりがあり、スパークリングワイン愛飲者の41%は有名ブランドに固執しているようです。とはいえ、これはシャンパーニュが市場シェアを維持することにはつながっていません。代わりに、イギリスのスパークリングワイン、クレマン、低アルコールのスパークリングワインが成長を牽引しています。
引用元: Champagne Prepares for a Sobering Vintage
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