ボルドー2024年: 市場は待っている
- 2024.12.27
- ワインニュース
- 2024ヴィンテージ, ボルドー
ボルドー2024年は楽なヴィンテージではなかったが、最も大きな問題となっているのは必ずしもブドウ畑だとは言えません。
「チャレンジ」。これは生産者が2024年のボルドーの収穫を表現するのに使っている言葉です。市場を表現するのにも使えるのですが、それについては後述します。
天候の面では、ボルドーにとってまさにジェットコースターのような年でした。年間平均雨量を約100%も上回るほどの雨が降りました。開花にはばらつきがあり、その結果花ぶるいやミルランダージュが多発しました。あちこちで雹が降り、ベト病が大発生しました。
ベト病はヨーロッパ北部と沿岸部の大部分でこの年問題となり、その灰色のカビはブドウを収縮させ、収量を激減させました。主要紙はこれを質の悪い収穫と報じましたが、実際は収穫量が少なかったということです。そしてとても労力がかかる年でした。というのも、ベト病を抑えるには、常に監視し、常にスプレー散布する必要があるからです。ちょっと目を離した隙に、ベト病は蔓延してしまったのです。
「集中したチーム作業が必要でした」と、マルゴーに位置するRauzan-SéglaのJean-Basile Rolandは言います。「しかし、我々は先回りして走ることができた。花ぶるい、ミルランダージュ、ボトリティスと全部管理できました」。
サンテミリオンのCanon la Gaffelièreは有機栽培なので、大量の銅を使用することになりました。17kgのスプレーと4kgの銅を使用したとStephan von Neippergは言います。「7月は雨が多かった。とても厳しかった。メドックとサン・テミリオンのいくつかのエリアの有機栽培の造り手は、ほとんど収穫がなく壊滅的だった」。
雨は、最近の傾向通り、不均等な降り方でした。ペサック・レオニャンの川沿いにあるPicque-CaillouのPaulin Calvet は言います。「8月27日までは非常に楽観的だった。かなり乾燥した2ヶ月があり、ものすごく暑かったとは言えないが、十分な暖かさがあった。そして8月27日から2週間雨が続いたが、ブドウ木は全ての雨を吸収したわけではない。メルロが最も苦しんだ。しかし、9月最後の10日間と10月最初の6日間は乾燥し、晴れて涼しく、ボトリティスの発生を遅らせた」。
多くのシャトーでは、カベルネ・ソーヴィニヨンが様々な困難を克服し、ヴィンテージの救世主になったようです。「カベルネ・ソーヴィニヨンは素晴らしい」とCalvetは言います。「カベルネ・ソーヴィニヨンのおかげで正常なヴィンテージにできる。5つのメルロのタンクのうち、2つはグラン・ヴァンに入れます。カベルネ・ソーヴィニヨンはタンク7本のうち、5本をグラン・ヴァンに入れるでしょう」。
サン=ジュリアンの Léoville Poyferréでは、Sara Lecomte Cuvelier が「今年はシャトーによって、各畑での働き方や困難への対処の仕方により大きな違いが出るだろう」と予想しています。「メルローの収穫が終わってからカベルネ・ソーヴィニヨンの収穫が始まるまで、私たちは待ちました。カベルネ・ソーヴィニヨンはまだ熟していなかった。天気予報は嵐だったので、とても心配でしたし、予報は常に変わりました。私たちはリスクを冒さなければならなかった。ヴィンヤード・マネージャーはいつも、収穫してすぐにワイン醸造に進めたいと言います。しかし私たちは4~5日待って、その間にカベルネ・フランとプティ・ヴェルドを収穫しました。カベルネ・ソーヴィニヨンの最良の区画を最後まで残したことは大きなリスクでした。でも、他の人よりも良いワインを造るためには、リスクを冒さなければならない」。
同じくサン=ジュリアンのBranaire-Ducruでは、François-Xavier Maroteauxがブドウの成熟を待ち、生産量減少という結果になりました。
「昨年より35~40%減です。畑のブドウが少ないと、いつもさらに生産量は少なくなり、逆に畑のブドウが多いと、いつもさらに生産量は多くなります」。しかし、フルーティーで、繊細な骨格があるので良いと彼は言います。
補糖(シャプタリゼーション)
今年は至る所でシャプタリゼーションが行われました。 「いくつかのタンクで行う」というのが大方の方向性です。ボルドーでは、シャプタリゼーションはもうほぼやらなくなっていましたが、ポムロールのGazinのInes de Bailliencourtは言います。「やるしかなかった。雨が多く、日照不足で、ボトリティスも発生した。醸造技術を試される年でした。急いで収穫しなければなりませんでした」。
Rauzan-SéglaのRolandはこう言います。「ワインが自らを表現するような完璧な状況に到達させるためには、シャプタリゼーションが必要だった。アルコール度数を0.5%上げるためのシャプタリゼーションを数ロット行いましたが、それ以上は行いませんでした」。
成熟度は良好で、アルコール度数は13~13.5%。「果皮はかなり厚い」とRolandは言います。「房は小さめで、果肉と果皮の比率が面白い。アルコールは低めで、アロマがとても豊か。抽出に関しては容易な年とは言えないだろう。最初の数日はルモンタージュをたくさん行い、その後は少なくした。ルモンタージュを軽くすればするほど、プレスワインはデリケートになる」。
総じて言えば、赤ワインにとっては良い年だが、偉大な年ではない。ヴァリエーションのある年で、均一性はほぼない。Canon la GaffelièreのNeippergは2004年や1999年と比較して言います。「2022年や2020年とは違う。また、1997年、1992年、2004年はとても難しい年で、それらの年と比べると今年は一番難しい年の部類ではない」。
白ワインは、花ぶるい、ミルランダージュ、雹、雨、ベト病といった同じ条件にさらされながらも、適切な熟度とフレッシュさを持ついくつかの生き残りを生み出しました。ソーテルヌ・GuiraudのCoralie Bernard によれば、辛口の白ワインは良い出来で、2023年よりも甘口は少なかったということです。
「ボトリティスが多く、雨も多かった。何年も同じ収穫人を使っていて、彼らは畑での選果に慣れている。セミヨンは繊細なので、今年はソーヴィニヨン・ブランを多く使った。いずれにせよワインは十分に醸造できています。通常はソーヴィニヨン・ブランの使用率は甘口35%、辛口30%です」。
しかし、全ての人が気にかけているのは市場の状況です。商人は高値に怯え、消費者は以前ほどボルドーに熱狂していません。2022年のプリムールは価格高騰のため大成功とはいえず、2023年のプリムールはほとんど失敗に終わりました。価格についての批判があり、値下げはあったものの、十分に購買意欲をそそるほどではありませんでした。
通常、プリムールが低調だった場合、その責任を背負うことになるのはネゴシアンです。2023年のプリムールでは、多くのネゴシアンが割り当てを拒否しました。たとえそれが二度と元には戻れないという深刻なリスクを伴うものであったとしても。彼らのセラーは満杯であり、金利の上昇もあり、借りたお金でワインを維持し続けるのは高くつきすぎるのです。彼らの多くは財政的にぎりぎりの状態です。
Picque-CaillouのCalvetは語ります。「ストックが多すぎます。問題は、私のような€25や€30のワインではなく、飲まれていない1本100€や200€のワインなのです。ネゴシアンはこれらの在庫を持ちすぎていて、それが動いていない。そして、彼らはこれ以上買いたいくないのです」。
結局のところ、ネゴシアンは必要であれば損失覚悟で売ることもできるが、そうして生き残れるかどうかは別の問題だ、と彼は言います。「しかし、私の生産コストは下げられない。私のプロジェクトで重要な点の99%は生産コストです。樽の値段は毎年10%ずつ上がっています」。
プリムール市場は常に、関係者全員が適正な利益を得られるよう、長年にわたる価格の緩やかな上昇に依存してきました。そのシステムは今、ダメージを受け、おそらくすでに崩壊しています。多くの一流シャトーは、プリムールへのリリースを減らし、より熟成の進んだものをリリースするために、より多くのものを保管しています。プリムールで購入する消費者は、通常、後で売却しても利益は期待できません。では、なぜプリムールで買う必要があるでしょうか。
春になれば、多くのバイヤーがこの疑問を抱くようになるでしょう。そして、まずまずのヴィンデージではあるがが、偉大とは言えない。小規模なシャトーは、この課題にどう取り組むのでしょうか……。
引用元:Bordeaux 2024: The Market Awaits
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