ローヌ2023:地球温暖化を乗り越え、流行りに乗れるか?
- 2025.05.12
- ワインニュース
- 2023ヴィンテージ, ローヌ, 地球温暖化

ローヌ渓谷の人気は上昇中ですが、気候変動の問題が先をいくのでしょうか?
ローヌについて英国の商人と話していると、20年前にブルゴーニュについて話したことを思い出します。彼らは小規模生産者で、価格を高騰させることには興味がありません。彼らは顧客に忠実なのです。
それはお好きなようにすれば良いのですが、歴史は必ずしも繰り返すものではありません。ローヌの品質は改善され、どんどん良くなっています。生産者にとっての悩みの種は、ローヌのワインが本格的にファッショナブルになる前に、気候的にローヌがワインブドウ栽培適地のゾーンを出てしまう可能性があるということでしょう。
生産者は自分たちの産地がファッショナブルになることを望んでいるのだろうか?たいていの生産者はそうではないと言います。昔のブルゴーニュの生産者もそうでした。彼らが望んでいるのは、気候がもう少し穏やかになることなのです。
「毎年極端な天候に見舞われています」と、クローズ・エルミタージュの作り手、Domaine Yann Chaveを兄と共に引き継いだDaphné Chaveは言います。「2018年、2019年、2020年、2022年は猛暑だったが、2021年、2023年、2024年は定期的に雨が降った。 「今のところ、穏やかと言えるような年はない」。
そして、今回のテーマである2023年は?
「最終的には大丈夫だった。2021年と2022年よりもスプレー散布量は少なかった。ミストラルが強かったので、散布量を減らす必要があった。生育期は大変でした。芽かきを行い、ミストラルを通過させるために副梢を落としました。しかし、今はすぐに季節の状況が変わってしまう。
もし葉を落としすぎて暑くなったら……でも、もし落とさずに雨が降ったら……今は畝の東側で葉を落としているので、ブドウは日焼けの心配はない朝日を浴び、西側の葉は午後の傘になる。天気予報はかなり信頼できるが、『300mmの雨』と言って100mm降ることもある。雹の方が正確な予報が出る」。
全体的に2023年は2022年よりは暑くなかったが、急に猛暑になり、年初には1月末から2月末まで雨が降りませんでした。南部では5月ににわか雨が降ったが、北部ではより激しい雨が降り、ブドウ木の成長を狂わせました。7月にはミストラルが吹き荒れ、8月には北部で2週間、南部で1週間、40℃を超える暑さが続きました。このような状況下でのブドウ木の回復力について、私たちは皆、古木を賞賛するのではないだろうか?しかし、Chaveは指摘します。「ル・ルーヴルには古木がある。酸のあるブドウができる最高の畑の一つだ。しかし、副梢を切り取っても、40℃の気温が1週間続けば、何をしても葉は落ちる。古木は大丈夫だが、若木は苦労している」。
暑さが収穫を早め、白ブドウの収穫は8月に始まりました。9月18日、エルミタージュは嵐に見舞われました。最大200mmの雨が降り(天気予報は30mmの雨を予想していたらしい)、土砂崩れでブドウ木、支柱、ワイヤーが丘の下に滑り落ちて行きました。とはいえ、これは非常に局地的な嵐で、コート・ロティとコンドリューの降雨量はわずか20mmでした。
アンピュイのDomaine Graeme & Julie Bott のGraeme Bott は言います。「雨の中、収穫を止めた。収穫の最中にワイナリーの床が水浸しになっていることに気づいたんだ。こんなシーズンの終わり方は初めてだった」。
「生産者は異常気象に適応しなければならなかった」と、Lea & Sandeman のDerek Robertson は言います。「しかし、今ではそれが普通のことになった」。
ヴィンテージの天気予報は身の毛もよだつようなものだが、ワインについては、まるで何事もなかったかのように感じられます。フレッシュで、厚みがあり、熟したタンニン、バランスが良い。やはり2023年は美味しい。Domaine Remi Nieroは、2023年は、2021年の低アルコールと2022年のアロマティックなジューシーさの間に位置するワインだと言っています。Bottは、「2023年は糖度とフェノールの熟度が非常に近いものになった。タンニンは熟し、糖度は低めだった。2023年のワインをまた飲みたい。雨季もそんなにひどくなかった。 私たちの段々畑は水が必要で、すぐに乾いてしまう。私たちのブドウ木の根本はびしょびしょになるようなことはない」。
南北格差
しかし南部では、アルコール度数という問題があります。
これを問題と思うかどうかは人によります。南のワインを愛する人々は、その幅の広さと寛大さを愛し、15.5%が16%になったとしても、バランスが取れていれば気にしないでしょう。どちらの言い分もあるが、ここはそれを再確認する場ではありません。南部の生産者全てが、アルコールが高くなりすぎること(強い抽出の方がもっと問題だろう)を受け入れているわけではないが(あるいはジャーナリストに対して認めているわけではないが)、気候の変化への適応はここでも見られます。
標高が高いことも役立っています。標高200~300mのDentellesにあるDomaine la Bouïssièreでは、ジゴンダスの他のドメーヌがほとんど収穫を終えているときに、やっと収穫を始めたところだとイギリスの商人Charles Taylor は指摘します。今はフレッシュさを出すためにクレレットやピクプールがより多くブレンドされるようになり、AOC地域外のブドウを使用されることもあります。IGPの畑の方が酸をもたらすケースがよくあります。また、シャトーヌフでは、有名なガレ・ルレ(その名声からどこにでもあるように思われるかもしれないが、AOCの一部にしかない)は、もはや気候に最適な土壌ではないのかもしれません。今は砂質の土壌の方が良いかもしれないのです。
北部の生産者は、より高い標高と房の遮光に目を向けています。どこの国でも同じですが、生産者は天候について騒ぎ立てていますが(皆そうではないか?)、それでも適応してやっています。そしてワインを飲んでみたら、問題があるなんて信じられないと感じるでしょう。
ところで、誰がローヌのワインを買うのでしょうか?大金持ちではないでしょう。英国のローヌ専門店、Yapp BrosのTom Ashworth は言います。「超一流のワインは£100-150 =$130-195でリリースされる。ボルドーやブルゴーニュの場合は、それにゼロを足すことができる」。Liv-Exに掲載されているローヌの数はほんの一握りで、この状況はここ数年変わっていません。
「リラックのようなワインの価格はそれほど変わっていません」。とAshworthは言います。「シャートーヌフは価格上昇しているが、北部と南部のワインを購入する消費者層は異なる」。
多くのシャトーヌフが米国で買い占められ、それが今問題になっているかもしれないとTaylorは言います。あるいは、この記事が投稿される頃には状況が変わっているかもしれませんが、誰がそれを予期できるでしょうか。
「抽出の少ない低アルコールワインへの流れは、シャトーヌフの売り上げには良くない。しかし、シャトーヌフのバルク価格は、ベーシックなサンテミリオンに比べてまだ高い。どちらも大きなAOCであり、知名度も高く、同じ価格であるはずなのに、シャトーヌフのバルク価格はサンテミリオンの約4倍もするのです」。
北部の生産者は、主にフランス国内で販売する小規模な家族経営のドメーヌが多いため、国際的な危機から守られていると、Taylorは指摘します。このような家族経営のドメーヌとワインのスタイルは、ブルゴーニュが好きな人と北ローヌが好きな人は、ある程度交わり合っています。
「変化を求めるブルゴーニュ愛好家は北部を好む。南はたっぷりとしたワインが好きな人向けです。彼らは生産者よりもAOCを重視します。北部はどちらかというと愛好家のための産地です」。
白と赤の違いは?Ashworthは「価格帯は同じにして売っていますが、赤の方が需要があります」。
もちろん、Château Grillet は例外です。Artemisが所有権を持つということは、価格が大きく跳ね上がることを意味します。そして Thomas Jefferson※は、 Hermitage Blancを「一流」と捉えていたことを思い出しました。あぁ、流行…
(注釈: Thomas Jefferson・・ワイン愛好家として知られるアメリカ合衆国第3代大統領のこと)
引用元:Rhône 2023: Still Tragically Unhip
この記事は引用元からの許諾をいただき、Firadisが翻案しています。
文責はFiradisに帰属します。

-
前の記事
古木の力を利用する 2025.04.26
-
次の記事
記事がありません