イタリアの勢いを牽引するシチリアワイン

イタリアの勢いを牽引するシチリアワイン

イタリアワインが消費者の関心を集めていますが、その中でもシチリア島のワインが最大の勝者になる可能性があります。


シチリアからのブドウほど国際的な成功を収めている土着品種はないでしょう。

さまざまな土壌や微気候で栽培されるこれらの土着品種は、ワインの世界の中でも、最も多面的で、食事に合わせやすく、飲みやすいワインの骨格となっています。他のブドウ栽培地域にも多くの土着品種が存在しますが、シチリアほどに市場を支配している地域はあったとしてもごくわずかです。その理由を、9人のワイン業界の専門家が分析しています。

 

Dolce Vita (甘い生活)への憧れ

多くの専門家が、シチリアへの旅行熱が、その土着ワインに対する消費者の興味へも大きな役割を果たしていることに同意しています。

 

Skurnik Wine and Spirits  に勤める  Charlotte Berdensey  は、イタリアは歴史、料理、旅行、ワインの面で本質的に強い魅力を持っており、(その中でもシチリアの)地理、美しさ、テロワールに魅了される人が多くいると指摘します。 そして、こういった背景が、シチリアの土着品種ブドウを試してみよう、という消費者への働きかけに繋がっていると推測しています。

 

シチリア生まれのソムリエ、Elio Sofia  は、ニューヨークの  Lucciola  でワイン・ディレクターを務めていますが、この意見に同意しています。
「かつてゲーテが『シチリアを知らずしてイタリアを理解することはできない』と言ったように、シチリア島を入口とするイタリア文化への憧れは世界的なものです。シチリア島は、ギリシャ人からアラブ人(いずれもワインを愛した人たち)まで、さまざまな介入と侵略を受けながらも、独自のアイデンティティと影響力を保ち続けています。私たちの土着ブドウは、火山の噴火、アフリカの熱風、雪を乗り越え、この島で生き残ってきました。それを味わいたくない人なんていないでしょう?」

 

小売の立場については、ソムリエの  Susan Ellis  がこう説明しています。
「特に誰も旅行できなかったコロナ禍では、シチリアについて口にすること自体が魅力的に映りました。水、歴史、そして火山性土壌のアイディア…… 全て魅惑的で、消費者はシチリアについてもっと知りたいと感じているようです」

 

ブドウ栽培の進歩

シチリアワインに対する消費者の関心が高まっている背景には、品質重視の農業やワイン造りがあるとシチリア出身のソムリエである Sofia は考えています。

 

「過去20年間でブドウ栽培の繁栄がこの島に戻ってきています」
Sofia は、何世代にもわたるワイン造りの歴史を持つ一族やブドウ畑の所有者が、ブドウ栽培方法の改善のためにワインや技術に投資してきたと説明し、土着ブドウから造られるワインが増加した理由として、剪定ではアルベレッロ仕立てへの回帰や、各区画固有の土壌を重視した醸造を行うようになった点を挙げています。
「トスカーナやピエモンテ、フランスにあるようなワインに関する知識、重要性、保存、コミュニケーションは、以前はありませんでした。ですが、エトナに進出した生産者達が投資してくれたおかげで、シチリアは品質の面でも名を馳せるようになったのです」

 

ニューヨークにあるイタリアンレストラン、Ci Siamo のビバレッジディレクターである Robin Wright は、Cerasuolo di Vittoria が最近 DOCG に昇格したことも重要な要素であると指摘します。
「2005年、Cerasuolo di Vittoria  はシチリア初で唯一の DOCG となり、シチリアワインが世界的に認知されるきっかけとなりました」 そして、生産されるワインの多様性を同様に協調しながら彼女はこう続けます。
「エトナの溌剌としながらもフルボディの白ワイン、マルサラの甘口ワイン、ジューシーなネロ・ダーヴォラやヴィットリアのフラッパートなど、この島には誰にとっても楽しめるワインがあり、高品質の生産者がこの地域の至る所で頭角を現しています」

 

多様性のある土地

シチリアの地形、微気候、土壌の多様性は、多くの土着品種を栽培するための完璧なモザイクであり、その結果、生産されるワインの風味も多様であるというのが、業界関係者の共通認識となっています。

 

Wilson Daniels  社の社長、Rocco Lombardo  は、シチリアの土着品種を探す際には、ブドウ畑のロケーションを意識するようアドバイスしています。
「標高の高い畑からのワインは、複雑さ、凝縮感、エレガンスが備わります」
その一例として、Feudo Montoni  の  Lagunsa Nero d’Avola  は、海抜およそ 460mの高さで栽培されており、彼らのグリッロの畑は約 730mという驚異的な高さに位置しています。
「標高の高い畑に植えられたグリッロは、高い酸度を持ちながら美しく明るいトロピカルなトーンを帯びることができます」 

さらに、標高の高い畑の土着品種から造られる多くのシチリアワインが、驚くべき熟成能力を示すと指摘します。
「これらのワインの果実味は、15年以上寝かせてもまだ生き生きとしており、テクスチャーやブーケには、フランスやドイツのワインに似たペトロールのノートが見られます」

 

料理との親和性、親しみやすい類似性

Ci Siamo のソムリエである Wright は、店を訪れるゲストの多くはイタリアの有名産地(バローロ、キャンティなど)のワインを注文する事が多いと言いますが、もう少し南のシチリアまで足を伸ばしてもらうことはそれほど難しくないと指摘します。
「シチリアのワインは食事に合わせやすいのが魅力です。おかげでさらに南に目を向けてもらうことに役立っています」

 

Taub Family Vineyards のオーナーである Taub は、シチリアの土着品種から造られるワインの飲みやすさ、一貫性、バランスについて言及します。
「特にグリッロ、、カリカンテは、地中海の明るい太陽から生まれる熟した果実味を損なうことなく、おいしいピリッとした味わいを持つことが多いです」

 

Delicious Hospitality Group  の飲料ディレクターである  Theo Lieberman  は、シチリア原産のブドウへの関心が高まっている原因として、人気のある産地や国際品種との類似性を挙げています。
「シチリアの多くの赤ワインは、ブルゴーニュ以外ではなかなか見られない質感と、ピエモンテに求められる酸味を兼ね備えています」

さらに、シチリアの白ワインは、質感のあるシャブリと、アルバリーニョによく見られる塩味という異なる特徴を上手く繋ぎ合わせた素晴らしいワインだといいます。
「レストランの現場では、シチリアのワインは、値段を気にせずにブルゴーニュワインを飲む人たちに心からお勧めできる選択肢となります」

 

手に取りやすい代替品

Lieberman の前述の指摘をさらに強調すると、“シチリアの土着品種は、より一般的に認知されているブドウ品種によく似た特徴を持つ代替品として、満場一致で推奨できる” と言えるでしょう。

Lieberman  は、高地で栽培したシチリアの土着品種の多くは、よりエレガントなスタイルのワインになると言います。
「適切な条件で栽培すれば、ヨーロッパの他の地域から生まれる、よりニュアンスのあるワインの素晴らしい代替品となり得るのです」

 

ワインショップの店頭では、ピノ・グリージョに代わるワインを求めるお客さまにグリッロを勧めることが多いとEllisはいいます。
「味覚的に1対1の比較にはなりませんが、イタリアのもう一方の端に行くという発想が人々を惹きつけるのです」 

 

同様に Porter は、ソーヴィニヨン・ブランやピノ・グリージョのファンにはカタラットを勧めています。
「これらは明るく、フレッシュで、とても飲みやすいワインという共通点があります」 

 

Wright は、ブルゴーニュのシャルドネを飲む人には、エトナのカリカンテをよく勧めるそうです。
「カリカンテは、溌溂として、よりパワフルなシャブリを思わせます」

ピノ・ノワールの愛好家には、ブルゴーニュのフィネスと複雑さを示すことがあるエトナのネレッロ・マスカレーゼがオススメだと Wright は言います。

 

マンハッタンにあるワインショップ、Le Dû’ に勤める JT Robertson も、ネレッロ・マスカレーゼの明るい赤果実のフレーバーと暗い土壌由来のミネラルが、ピノ愛好家にピッタリだと評価します。

 

Porter は、カリフォルニアのピノや果実味豊かなミディアムボディの赤ワインのファンには黒ブドウのペリコーネを、Berdensey は、より凝縮感があり少しボディが濃いものを探している人にはネロ・ダーヴォラを薦めています。

 

消費者の好奇心

Robertson は、今日の消費者は以前にも増して冒険に対しオープンになっていると考えています。
「人々はより好奇心が強く、新しいことを試したいと思っています。そうすることで新しいお気に入りを見つけることができるのです。シチリアにはそのようなワインが沢山あります」

さらに、彼は、「クラシック」とは逆に、現代のワイン愛飲者の多くは、未知のものや未踏のものに、より高い品質的な価値を見出すようになっている、と話します。

 

現場のソムリエである Porter も同意見です。
「消費者は聞いたことのないブドウに興味を持っており、更に手頃な値段であることがシチリアのワインを食卓に定着させたのです」

 

“現時点”での品質と価格の比率

Liberman は、消費者がシチリアワインの価値をますます認識し始めていることを実感しています。シチリアのワインは今日、素晴らしい価値を提供しており、
「白ワイン、ロゼワイン、赤ワインすべてにおいて、シチリアワインのコストパフォーマンスはトップクラスにあります」
と話します。

 

Taub もこれに同意し、シチリアのワインは世界の偉大なワインと肩を並べるに値するといいます。
「エトナのワインは年々値上がりしていますが、島には今後何年にもわたって素晴らしい価値を提供する未発見のエリアがたくさんあります」

 

シチリアワインの未来

Lombardo  は、シチリアワインもインフレ圧力と無縁ではないといい、インフレに加え、需要の増加により、将来的に10〜20%の値上がりを予測しています。しかし、価格が上昇しても、シチリアワインは多くの価格帯で素晴らしい価値を提供するといいます。

 

Sofia もこの点に同意し、エトナの幾つかのワインはすでにピエモンテやトスカーナの一流ワインと同じような価格で取引されていると指摘します。

 

Wright は、近年シチリアワインの価格が上昇していますが、それでもこの地域から生まれるワインには“素晴らしいほどの価値がある”と断言します。
「イタリアで生産される最高の白ワインのひとつ、Benanti の Etna Bianco Pietramarina  は、信じられないほどの熟成能力と複雑な個性を備えたワインです」 
そして、これほどのワインでありながら、その値付けは平均的な村名レベルのブルゴーニュと同程度の価格帯に例えています。

 

彼女にとって、シチリアワインに対する答えは明確です。「迷うことなくシチリアワインを飲みましょう!」

 

 

引用元: https://www.wine-searcher.com/m/2022/08/sicilys-wines-leading-the-italian-charge

この記事は引用元からの許諾をいただき、Firadisが翻案しています。
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