ミシュラン、ワインスコアの世界に参入
- 2025.11.04
- ワインニュース
- Robert Parker, ミシュラン・ガイド, ワイン・アドヴォケイト
世界で最も有名なフードガイドがワイン業界に進出します。これは、100点満点評価を行う業者にとって何を意味するのでしょうか?
もし私がブルゴーニュを「一つ星ワイン」と呼んだら、あなたはそれを購入するでしょうか?これは重要な問いです。なぜなら、10月上旬、ミシュランがワインのレビューを開始すると発表したからです。
この発表は驚きです。2019年にミシュランは、議論の余地なく世界をリードするワイン評価誌であった The Wine Advocate を買収しました。しかし、創業者の評論家 Robert Parker は売却時に引退し、それ以来 The Wine Advocate の影響力は以前ほどではなくなっています。
10月上旬、ミシュランレストランガイドの国際ディレクターである Gwendal Poullennecは、La Revue du Vin de France 誌に対し、「ミシュラン・ブランドは、現在Robert Parker Wine Advocate と呼ばれている同誌よりもはるかに強力だ」と語りました。Poullennecは、The Wine Advocate を廃止する計画はないと述べましたが、そこの11人のワイン評論家たちへ、賢明なアドバイスとして、“履歴書を磨いておいた方が良い。外の世界は厳しいから。”との言葉を残しています。
ミシュランがなぜこの分野を席巻できると考えているのか、よく分かります。現在のワイン評論家の中で、Parker のようなフォロワーを集めた人物はいません。わずか10年前でさえ、ワイナリーは実際に Parker の好みに合わせてブドウ栽培や醸造を変更していました。今や真の主導的な評論家はおらず、ワイナリーは、メールが来るまで聞いたこともなかったような個人メディアの配信プラットフォームからの98点というスコアを自慢するメールを送っています。
残念ながら、筆者の私自身はミシュランの意図について疑問を持っています。しかし、それについては後ほど詳しく述べます。
当初、私はこの発表を聞いて興奮しました。なぜなら、ミシュランがレストランを評価するのと同じ3つ星のスケールでワインが評価されるのを見たいからです。私は100点満点評価を嫌う論客の一人ではありません。それは単なるデジタル形式の情報に過ぎません。
しかし、3つ星のスケールは、ワイン愛好家がワインを体験する方法をよりよく表現しています。一つ星のワインは、気軽に飲める、気取らない、楽しくておそらく複雑ではないワインでしょう。二つ星のワインは、一段上の優れたワイン、三つ星のワインは、その分野で最高のワインの一つとなるでしょう。
時間と場所
私たちのほとんどは、三つ星レストランよりも一つ星レストランで食事をすることが多いです。その理由に皆さんも納得頂けるでしょう。特別な記念日には、三つ星でピンセットを使って盛り付けられた17皿のコースを望むこともありますが、それよりも多くの場合、白い手袋のサービスなしに、よく焼かれた肉の塊や完璧にスパイスの効いたカレーを食べたいだけなのです。これはお金の問題ではありません。例えば私がイーロン・マスクほどのお金を持っていたとしても、昼食には「スマッシュバーガー」を食べたいと思うことが頻繁にあるでしょう。レストランを一つ星と呼ぶのは侮辱ではなく、いつ、なぜそこで食べたいかを説明するものです。
対照的に、100点満点のワイン評価を人々にどう上手く使うか説明するのはいつも難しいものです。時には、98点のワインよりも89点のワインを飲みたいと思うことがあります。98点のワインが求める「集中力」に常に応える気分ではないからです。
さらに、正直な評論家であれば、ある日は92点だったワインが、別の日には90点になったり94点になったりする可能性があることを認めるでしょう。理論上、これらの評価はすべて2つ星になり、その方がワインを飲んだ実際の体験をより正確に反映しているといえます。
ミシュランがこれを一般の人々にうまく説明できることを願っています。私が米国西海岸の主要紙であり、ワイン報道でも知られるサンフランシスコ・クロニクル紙で働いていたとき、ワインを4つ星のスケールで評価していました。2.5つ星は私たちが本当に気に入ったワイン意味していましたが、読者はそれを決して理解していなかったと思います。
私たちが愛するワインを人々に試してもらうため、もっと3つ星評価を出せるよう、5つ星評価への切り替え望んでいましたが、そのシステムは映画評論のために作られたもので変えることはできませんでした。ですから、私はミシュランの挑戦を応援すべきでしょう。
しかし、大きな注意点があります。
「私たちは伝統的な国々で紙のガイドブックを維持していますが、私たちのビジネスモデルにとってそれはごくわずかなものです」と、ミシュラン・ガイドの国際ディレクターPoullennecは La Revue du Vin de France 誌に語りました。「今日の私たちの主な収益源は二つあります。一つは、自国の観光地やブランドを宣伝したい政府とのパートナーシップ、もう一つは、特にホテルにおける予約です。」
ミシュラン・ガイドは40カ国と有償のパートナーシップを結んでいることが判明しました。サウジアラビアは来年、ミシュラン・ガイドを刊行する予定です。La Revue du Vin de France 誌はまた、ミシュラン・ガイドが10月下旬に世界的なホテルランキングを発表することも報じました。ガイドは、そのプラットフォームを通じて行われた予約に対して10〜15パーセントの手数料を受け取ります。
今、私はRobert Parkerが恋しいです。
私は彼のテイスティングの好み、特にキャリアの後半では、常に同意していたわけではありませんが、Parkerの個人的な倫理観は非の打ち所がありませんでした。フランスには売り捌く必要のある大量のワインがありますが、それはフランスだけではありません。政府と提携するワイン評価組織や、売上からの手数料で利益を得るワイン評価組織を信頼できるでしょうか?
また、ミシュラン・ガイドが国際展開する前は、ナプキンの糸の密度に至るまで、特定のサービススタイルを要求する極めてフランス的なものであったことを指摘しないといけません。日本に住んでいた者として言わせてもらえば、ミシュラン・ガイドの国際化はほんのわずかです。日本版のガイドは、いまだに裕福な欧米人向けであり、日本の料理を真に知る人々のものではありません。
ミシュランのフランス人評論家たちが、カリフォルニア州で最も温暖な高級ワイン産地、パソ・ロブレスに降り立つ時、あるいは、もっと良いのは、果実味豊かで強烈なピノ・ノワールを生み出し、ブルゴーニュとは全く似ていないサンタ・リタ・ヒルズに降り立つ時、私はその場に居合わせたいものです。これは欠点ではなく産地の特徴ですが、彼らにはそう捉えられるのでしょうか。
いろいろと不安はありますが、ミシュランがワインへの関心を高めようと奮闘している事は歓迎です。私はこの試みに3つ星を付けたいと思います。今後の展開に注目しましょう。
引用元:Michelin Burns Rubber on Wine Scores
この記事は引用元からの許諾をいただき、Firadisが翻案しています。
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