ブルゴーニュ2025年:栄光と失望

ブルゴーニュ2025年:栄光と失望

2025年ヴィンテージの品質は申し分ないのですが、問題は生産量でしょう。


気候変動をデマだと主張する者もまだいますが、ワイン生産者は現実を熟知しています。ブルゴーニュは2025年、またもや荒波に翻弄されました。

 

Domaine Taupenot-Merme Romain Taupenotは語ります。「気候変動は日常の課題となったが、近年は天候がほとんど休む間も与えてくれない」。Domaine de l’ArlotGéraldine Godotoはこう付け加えます。「収穫時期を決めるには、ますます多くの要素を考慮する必要があるため、今や戦略家としての鋭い判断が求められる」。

 

2025年ヴィンテージは不均一な出来栄えとなりました。

 

Louis JadotFrédéric Barnierは「収穫量については皆と同様で少し失望しているが、ワインの品質については楽観視している」と語りました。シャブリとヨンヌ県では例外的に、現地BIVB責任者のFrançoise Roureが収穫量を「不均一」と評したものの、全体的な収量は平均以下から非常に低い水準にある。それでもシャブリからマコネに至るまで、ブルゴーニュの生産者たちは2025年の品質に大きな期待を寄せています。Domaine Tupinier-BautistaのAnthony Bautistaは簡潔に「素晴らしい」と評しました。

 

シャブリ

Simonnet-FebvrePaul Espitaliéは生育期を「比較的穏やか」と表現します。春の霜害も夏の雹害もありませんでした。6月の開花期に発生した熱波により、花振るい(房内の果実発育不良)とミルランダージュ(同一房内に大小の果実が混在)が生じました。水分ストレスは8月の熱波まで顕在化しませんでしたが、その後成熟を加速させ「特にピノ・ノワールは干しぶどうのようになった。降雨は遅すぎて収量回復には至らなかった」ということです。

 

収穫はクレマンが8月25日頃、シャブリが8月28日頃から始まった。Domaine Samuel BillaudSamuel Billaudは「我々は31日に開始し、1週間で全て収穫した。果実の健康状態が悪化し始めたため、収穫の選択肢は少なかった」と語ります。9月上旬の10日間にわたる大雨は、機械収穫のチームを含む収穫作業を混乱させました。

 

Domaine William FèvreDidier Séguierは収量を「適正だが特筆すべきものではない。35~50hl/ha」と表現します。昨年の雹害を受けた区画は低収量で、被害を受けなかった区画はもっと高い収量でしたが、いずれも地域の最大値を下回りました。Espitaliéはイランシーで20~35hl/haという低収量を記録しました。立地が収量に大きく影響しました。Domaine Louis MichelGuillaume Gicqueau-Michelは「収穫量は良好。朗報だ」と語ります。

 

Billaud はワインを「凝縮感とバランスに優れる」と評しました。Espitaliéはクレマンから赤ワインまで全てが魅力的だとコメントしました。赤ワインは「果実味豊かで凝縮感があり、色調も素晴らしい…。 遅摘みのシャルドネも十分なフレッシュさを保っている」と言いました。このヴィンテージは、生き生きとしてしなやかな果実味があり2020年や2010年を想起させるということです。

 

コート・ドール

平穏な冬を経て、早い時期の高温と適時の降雨により、ブドウ畑は急速な成長軌道に乗りました。

 

5月中旬までに、史上最も早い収穫期の一つとなることが明らかになりました。そして8月が訪れました。Domaine Fontaine-GagnardCéline Fontaineは説明します。「8月8日から10日間の猛暑に見舞われました。蒸発と凝縮により、8日から15日の間にブドウの潜在アルコール度数が3℃上昇した。稀な現象だ」。幸いなことに酸味も凝縮されました。

 

Fontaine は2020年の収穫を8月20日に開始しました。2025年は8月19日開始。若木畑は他の多くの畑同様、酷暑で深刻な被害を受け、干しぶどう状態になり葉を落としました。Louis JadotのBarnierによれば、有機認証を受けた自社畑の収量は赤が平均30hl/ha、白が35hl/haだったが、雨がなかなか降らなかったので総重量の最大20%、7月中旬の房重量から10%減少したということです。

 

Domaine Génot-BoulangeGuillaume Lavolléeは、自社畑が多様なアペラシオンにまたがり収量が15~40hl/haと幅があることを説明し、畑は2つの様態に分かれたと述べました。

 

「水はけの良い石灰岩土壌は開花期に早期の降雨に見舞われ、ミルランダージュが発生し、夏の暑さからはより深刻な影響を受けた。他の土壌では深層の粘土質土壌が乾燥の影響を軽減し、開花状態が良好だった。整った房になり、また収穫期の降雨が上手く働き、より高い収量をもたらした」。

 

Domaine Joseph Voillot Etienne Chaix はこう語ります。「ヴォルネイのプルミエ・クリュの収量は2024年よりわずかに上回った。ありがたい」と言います。

 

ここでも立地が重要でした。Domaine Boris ChampyBoris Champyはこうコメントします。「コート地区では2025年は小規模な収穫となったが、オート・コート地区では良好な収穫だった」。

 

 Domaine Georges LignierBenoît Stehlyは微妙なニュアンスに言及し、「コート・ド・ニュイでは7月最終週にモレ・サン・ドニからジュヴレ・シャンベルタンにかけて80mmを超える激しい雷雨に見舞われた。コート・ド・ボーヌでは深刻な水分ストレスを回避でき、コート・シャロネーズではさらにその傾向が強まった。果実は大きく収量も適正で、熟成にあと数日必要だった。9月1日から10日にかけて収穫した」。

 

Fontaineは付け加えます。「シャサーニュではミルランダージュが広範囲に発生したため、大量収穫は不可能だった。雨の後に収穫した者たちも同様で、収穫量は増えなかった。そして、コート・ド・ボーヌはコート・ド・ニュイに比べて2024年の収穫量が多かった。これが、コート・ド・ニュイの2025年の収穫がより多いとされるもう一つの理由である」。

 

自身のドメーヌ名を冠するEdouard Confuron は、収穫量が増えたことにより発酵槽内の温度が自然に高まったことで赤ワイン醸造が容易になったと成果を喜びました。さらに全房の割合を増やし、非常にフローラルでフレッシュなアロマに満足しています。

 

濃厚な赤ワインの色調について語る者がいる中、Domaine JessiaumeWilliam Waterkeynは、色の濃淡は必ずしも強いとは言えず、2020年ほどではないと感じています。さらに彼はアルコール度数について「高すぎない。12.5%前後だ」と述べました。

 

現段階では、ほとんどの醸造家が2025年を単一のヴィンテージとして特定できず、複数の年を組み合わせることで説明を試みています。Domaine des Lambrays のJacques Devauges は、過去のヴィンテージとの類似点を捉えにくいと感じています。「特に近年のヴィンテージはテクスチャーが優れている。赤ワインは良好な色調、タンニンは繊細で、香り高い。pHも低すぎず、アルコール度数約13%で中盤の口当たりが優しい」。

 

コート・シャロネーズとマコネ

Domaine Vincent Dureuil-Janthial Dureuil-Janthialは、コート・シャロネーズの2025年収穫を「2-in-1」と表現します。降雨を境に前後で収穫時期が分かれたためです。Domaine Tupinier-Bautistaの Anthony Bautistaは、8月24日から31日にかけて全収穫を完了したのは初めてだと述べました。2018年と2020年は8月に収穫を開始し、9月までかかりました。

 

シャロネーズ地区でも収穫量は依然として最大の関心事となりました。Domaine du Cellier aux MoinesPhilippe Pascalは「9月に天候が悪化する前に収穫できたブドウにはかなり満足している」と言いながらも、収穫量には失望しています。Domaine François Lumpp Nicolas Blessonは、収穫量は2024年より少ないが2021年よりは多いと語りました。

 

マコネ地区は甚大な被害を受けました。収穫期を「試練の」(Cordier家のChristophe Cordier)、「非常に困難な」(Domaine J.A.FerretのClément Robinet)と表現する者から、収穫を「壊滅的」(Domaine Clos des RocsのOlivier Giroux)と評する者までおり、同氏の畑では収穫量が少なくとも80%減少しました。

 

Château Fuisséの Antoine Vincentは、穏やかな冬の後「激しく頻繁な雨の春が続き、ベト病が大発生した」、そしてブドウ畑が「歴史に残るくらい急速に成長した」と述べました。5月中旬の開花期の嵐が花振るいを引き起こし、6月1日には大規模な雹害が発生しました。Château des RontetsのFabio Montrasiは、ベト病被害がなかったにもかかわらず、平均収量が15hl/haと極めて低かった原因をこの雹害だと結論づけています。

 

Vincentは、豊富な降雨があったため、8月の暑さ自体は水分ストレスを引き起こさなかったと説明しました。それでも、ブドウは焼かれ、葉は萎れ、生産者が収穫期を前倒しする中、蒸発による凝縮が始まりました。Vincentは8月26日、(過度ではない)暑さと雨(約150mm)という「ほぼ熱帯気候」の中で収穫を開始しました。手摘み収穫は有利で、希望するタイミングで畑に入ることができました。機械収穫は土壌が乾くのを待たねばならなりませんでした。

 

Cordierは「品質は期待に応えるものだった」と述べ、 Robinet はワインを「有望」と評価します。酸度がアルコール度数や凝縮度とバランスを保っていることに、誰もが安堵しています。Montrasiはワインが「まだ少し荒々しい」と言い、アルコール度数はやや高いが酸度も同様に高く、時間が必要だと指摘します。Parinetは「2019年に似ている。強烈で凝縮され、熟成に耐える」と2025年のヴィンテージを評価します。

 

今後の見通し

収穫量の減少は供給量と価格に重大な影響を与えます。ブルゴーニュワインの需要は世界的に依然として高いのです。2025年1月から7月までの販売量は前年同期比5.6%増、販売額は2.7%増となりました。これは第1四半期が15年ぶりの最高販売本数を記録したことによる結果です(ただし、新たな米国関税への懸念が後押しした面もある)。

 

過去5年間で史上最小規模となった2021年と2024年に続き、今回で3度目となる極端な凶作(特に一部地域)が発生しました。シャブリやヨンヌ県の大部分は比較的良好な収穫であったものの、Espitaliéは「全体として在庫補充には十分な収穫量だったが、備蓄を増すには至らなかった」と述べました。

 

Fontaineは2025年の収穫量が2024年を下回るとし、「今後2年以内に市場で白ワインが深刻な不足に陥るだろう」と予測。Domaine de MontilleのEtienne de Montilleは言います。「小収穫が2年連続したことで、ブルゴーニュは1~2年でワインが枯渇するだろう。価格がどうなるかはさておき、人々が合理的で責任ある行動を取ることを願っている」

 

2025年ヴィンテージの品質は良いのかもしれませんが、さて、価格はどうなることやらです。

 

 

引用元:Burgundy 2025: Triumph and Disappointment

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