接ぎ木されていない自根のブドウ木「フラン・ド・ピエ」の意義ある最初の一歩

接ぎ木されていない自根のブドウ木「フラン・ド・ピエ」の意義ある最初の一歩

2025年、フラン・ド・ピエ協会は、フラン・ド・ピエのブドウ木を称えるためにデザインされた2つの新ラベルを発表します。


どの業界においても、新たな取り組みの認知度を向上させるのは困難なことです。伝統に根ざしたワイン業界においては、その困難は計り知れません。

 

しかし、あるワイン生産者グループは毎年集い、まさにその課題に取り組んでいます。

 

フラン・ド・ピエ協会は、情熱的なワイン生産者、科学者、アンバサダーからなるグループであり、大企業のMonte-Carlo Société des Bains de Merやモナコ大公アルベール殿下をはじめとする多くの支援者に支えられています。

 

彼らの使命は、(直訳すると「自由な足」、つまり接ぎ木されていないブドウ木)から造られるワインを称え、保護することです。

 

この協会は2022年、会長であるLoïc Pasquet(ボルドーのDomaine Liber Pater所有者)によってモナコで設立され、ディレクターのCélia Calcagnoと共同で運営されています。

 

現在、世界で350名以上の協会会員がおり、ヨーロッパと新世界の52のワイン生産者が名を連ねています。

 

飛躍的な進展

設立から3年間で、協会は重要な目標を達成してきました。

 

接ぎ木なし栽培技術をユネスコ無形文化遺産(場所ではなく実践によって定義されるカテゴリー)として認定するための取り組みは継続中です。

 

接ぎ木されていないブドウ栽培技術の保護は、2025年にアゼルバイジャンでユネスコ登録候補として受理され、数十年に及ぶ可能性のある壮大な計画の重要な転換点となりました。

 

特に重要なのは、2025年が「フラン・ド・ピエ」ラベルの発表年となったことです。

 

認定レベルに応じた2種類のラベルがあります。いずれも科学委員会による検証を経ており、同委員会はブドウ品種DNA検査の世界的権威であるJosé Vouillamoz博士と、フランスブドウ・ワイン研究所(IFV)のOlivier Yobrégatが共同で主宰しています。

 

「フラン・ド・ピエ」ラベルは、完全に接ぎ木されていないブドウ木から生産されたワインに授与されます。委員会は葉と根の両方のサンプルを採取し、遺伝的に一致するかどうかブドウ木を検証します。

 

二つ目のラベルは「フラン・ド・ピエ・ヘリテージ」です。この認証を受けるには、歴史的な接ぎ木されていないブドウ木(フィロキセラ発生以前のものも含まれる)のみを使用し、品種・樹齢・保存状態に関する厳格な基準を満たす必要があります。

 

フラン・ド・ピエ・ヘリテージの審査要素には、当該区画における数世紀にわたる醸造文化の評価や、使用品種が地域固有種であるかどうかも含まれます。

 

これらのラベルは、フラン・ド・ピエのワインだという認知機能と同時に、消費者に情報を提供することを目的としています。

 

申請手続き

両ラベルの申請受付が開始されました。申請料は€500です。

 

両ラベルとも、申請には詳細なブドウ畑の説明に加え、地上部と根系のDNA検査、および/または接ぎ木されていないことを確認するブドウ品種学アンペログラフィー分析を行い、科学委員会による検証を受ける必要があります。

 

接ぎ木箇所は経年によりほぼ不可視となるため、視覚的証拠だけでは不十分です。

 

最後に、認証されるためには、生産者は使用規定とガイドラインを遵守しなければなりません。

 

ラベル自体は任意の形でボトルに貼付できるようカスタマイズ可能で、有効期間は2年間です。

 

なぜ接ぎ木するのか?

世界中でワイン醸造用に植えられているブドウの約97%は、私たちが好んで飲むヴィティス・ヴィニフェラ種とは異なる台木に接ぎ木されています。

 

つまり、私たちが飲んでいるワインの大部分はヴィティス・ヴィニフェラ種の実を使用していますが、根は全く異なる種のブドウである傾向があります。

 

なぜでしょうか?その理由は、フィロキセラと呼ばれる特に悪質なアブラムシにあります。おそらくホモ・サピエンス現生人類を除けば、これほど環境に甚大な影響を与えた生物はほぼいないでしょう。

 

この害虫(アメリカ原産)は1860年代にフランスで初めて大発生し、その後ヨーロッパ全土に広がり、30年以内に大陸のブドウ畑のほぼ全てを破壊しました。

 

19世紀末、解決策が見つかりました。接ぎ木です。

 

科学者たちは、ヨーロッパとアジア原産のヴィティス・ヴィニフェラを、アメリカ原産の台木に接ぎ木すれば、ブドウ畑が枯死しないことを発見しました。アメリカ原産の台木はフィロキセラと共に進化してきたため、天然の抵抗力を持っていました。こうしてフィロキセラは回避できるようになったのです。

 

これはヨーロッパのブドウ畑の大部分、そしてほどなく世界中のブドウ畑が、接ぎ木栽培に移行したことを意味するのです。

 

フラン・ド・ピエに適した場所

フィロキセラが定着しにくい稀な地域が今もいくつか存在します。

 

立地の孤立性が要因となることが多いです。ギリシャのサントリーニ島、キプロス島、スペイン・カナリア諸島のランサローテ島などは今もフィロキセラに侵されていません。

 

しかしカナリア諸島でさえ無敵ではありません。2025年8月にはテネリフェ島でフィロキセラが確認され、広大な海に守られていることや厳格な検疫対策にも限界があることを証明しました。

 

オーストラリア、アルゼンチン、チリの一部地域もフィロキセラの被害を受けていません。幸い、フィロキセラは泳ぐことも山を登ることもできません。土壌の種類も重要な防御手段になり、粘土分が3%未満の土壌では生存できません。シチリア島のエトナ山のような火山性土壌を持つ地域は自然に保護されています。

 

地理的隔離(これはほぼ運による)や適切な土壌条件以外、この害虫に対する本格的な防御策はほとんど存在しません。

 

結果として、フラン・ド・ピエのブドウ木は稀少かつ高価な存在であり続けています。

 

ブドウについて

ユネスコ無形文化遺産への登録申請と「フラン・ド・ピエ」ラベルの誕生を記念し、協会はロワール渓谷の壮麗な Château de Chambord で一連のイベントを開催しました。

 

城内の大広間では、José Vouillamoz博士によるブドウの過去・現在・未来をテーマにした講演が行われました。

 

博士はブドウの旅路を解説しました。野生の蔦のような蔓植物が木の上部へと這っていき、鳥に果実を食べられ、そして拡散されながら、現在の栽培品種へと至る過程を。

 

Vouillamoz博士は、ブドウ栽培が二つの起源地から世界へ広がった経緯を説明しました。それは人類の言語拡散と密接に連動し、現代の形態へと至ったのです。

 

現代のブドウ栽培では、安定した収穫を得るためブドウ木に強いストレスを与えることが一般的ですが、 Vouillamoz博士によれば、これは盆栽と似通った手法で、美学的な植物操作の芸術なのです。

 

博士はさらに、クローン技術・交配・突然変異など、自然的・人為的にブドウ品種が創出される多様な方法について論じました。Vouillamoz博士は、気候変動が地域とブドウの両方に影響を与え、未来も不確実であることを指摘しました。暑さ、湿度、干ばつ、あるいは増加する害虫などの問題です。

 

地域における伝統的なブドウ品種の一部はもはや生育不可能となり、それまでは全くなかったような他の品種に置き換えられる可能性があります。

 

しかし、希望はあります。Vouillamoz博士が説明したように、地球の気候史を考察することで見出されるものがあります。

 

ローマ時代と中世の両方の温暖期には、ブドウ栽培がブルターニュ地方まで北上し、ネッビオーロとピノの両方の記録が残っています。最も古い品種は千年以上前の歴史を持っています。

 

古代のルーツを持つ忘れられた品種には、Loïc Pasquetの「リベル・パテル」の一部にブレンドで用いられるボルドーのマンサンがあります。

 

これらの古代品種は気温の上昇と下降を経験し、数々の嵐を乗り越えてきました。Vouillamoz 博士は、これらのブドウが持つ遺伝的記憶こそが、不確実な未来への鍵を握っていると説明します。

 

その地域固有の品種である忘れられたブドウを復活させることは、自然と生物多様性の両方を回復させる助けとなるかもしれません。

 

Vouillamoz博士が探求したもう一つの道は、遺伝子編集です。これは特定のブドウ品種内の関連遺伝子を操作し、切り替えをすることで、病気や暑さといった課題に対する耐性を高める技術です。

 

そして、様々な耐性のあるハイブリッドの活用は、日常的に飲まれるワインにとってますます重要になるでしょう。除草剤の使用量を抑えられるので、ブドウ畑の近隣住民にとってもより健康的であることが証明されるかもしれません。

 

これらの解決策はすべて、11,000年にわたるヴィティス・ヴィニフェラの歴史と、過去8000年にわたるワイン造りの歴史を継承していくのに役立つのです。

 

フラン・ド・ピエの試飲

フラン・ド・ピエを保存する文化的意義は明らかですが、それは味覚にどう反映されるのでしょうか?

 

フラン・ド・ピエ協会主催による、二ツ星シェフChristophe Hayの特別ディナーが、壮麗なシャンボール城で開催されました。

 

ロワール地方の険しいおとぎ話の森、鹿や猪が生息する場所にあるシャンボール城は、フランス王フランソワ1世によって築かれました。

 

ユネスコ世界遺産に登録されたこの城は、中でも特に素晴らしい二重螺旋階段を誇っています。非凡な夜にふさわしい会場です。

 

モナコ公国アルベール2世殿下をはじめ、アルゼンチンCatena ZapataのAdrianna Catena、イタリアDomaine BasiliscoのViviana Malafarina、オーストラリアChâteau TanundaのJohn Geberら、数々のワイナリーと醸造家が参列しました。

 

各醸造家が紹介した傑出したフラン・ド・ピエのワインは、郷土料理に着想を得た料理とペアリングされました。

 

サンセールの生産者Domaine Vacheronは、接ぎ木されたLes Romains 2019と共に、フラン・ド・ピエのL’Enclos 2019を提供しました。

 

両者とも卓越したワインですが、醸造家Jean-Laurent Vacheronが説明したように、接ぎ木はフィルターのように作用し、特定の特性を強調しつつ他の特性を抑制すると考えられています。

 

Vacheronによれば、ソーヴィニヨン種におけるフラン・ド・ピエは成熟度をより高いレベルに引き上げます。香りは異なり、緑のニュアンス(ピラジン)が少なくなり、シロップのような果実香、柑橘系の香り(チオール)、テルペン(マスカットやトリュフ)が増すということです。

 

科学的に証明されているわけではないが(その検証には多額の資金と長年の研究が必要)、協会は、風味に大きな影響を与えるという見方を強く支持しています(私も心から同意する)。

 

フラン・ド・ピエの生産者たちと同様、ブルゴーニュの生産者Thibault Liger Belaireもこのテーマに情熱を注いでいます。彼はボジョレーのムーラン・ナ・ヴァンで古木畑を発見し、現在ではその区画からフラン・ド・ピエのガメイを2樽だけ醸造し、友人たちにのみ提供しています。

 

フラン・ド・ピエの次なる歩み

シャンボール城の素敵なホールで、夜は「バン・ブルギニョン」の歌声(手拍子を盛んに打つ伝統歌謡)と共に、まさに騒がしい盛り上がりで幕を閉じました。古木の枝を纏ったアルベール王子殿下は、フラン・ド・ピの騎士に叙任されました。

 

あらゆる価値ある使命にとって、道程には必然的に課題が待ち受けているものです。消費者の認知度向上がその一つとなるでしょう。

 

過剰なラベル表示に悩まされがちな業界において、ワイン業界には既にオーガニック、ビオディナミ、ナチュールワインなど様々なラベルが存在しています。フラン・ド・ピエのラベルを消費者の意識に浸透させるためには奮闘せねばならないでしょう。

 

とはいえ、小さな一歩から始めるわけです。興味をそそられ、ワインを試飲し、そして願わくはファンになる消費者こそが、フラン・ド・ピエの伝道師となり、その名を広めるかもしれません。

 

フラン・ド・ピエ協会ほど、文化的遺産の保護、消費者への体験提供、環境保全への取り組みを誇れる団体は稀です。協会と、その自由奔放なブドウ畑の仲間たちこそが、その使命を担っています。

 

興味のある方へ、メニューとワインのご紹介

ミシュラン二つ星シェフChristophe Hayはロワール渓谷の料理界を牽引する存在です。

以下は、その夜の素晴らしい料理と、同様に素晴らしいワインの数々です。

 

アペリティフは、Champagne Nicolas MaillartのLes Coupés – Francs de Pied 2020と Domaine de Chambord Romorantin 2023より始まりました。

 

続いて、ソローニュ産キャビア・セレクション&ロワイヤル・ド・キャロット、葉野菜のピストゥーソース・レモングラスを、Domaine Vacheron L’Enclos 2019 Francs de Pied とDomaine Vacheron Les Romaine 2019 Grefféとで合わせました。

 

地元産アンディーヴ、トゥレーヌ産ゴーダチーズ、大麦を、Bodega Cerrón El Cerrico 2023と。

 

トリュフ&ザリガニ シュヴェルニー・ワインソースは、 Domaines des Roches Neuves Thierry Germain 2022 と供に。

 

自家飼育の和牛のサツマイモ添え魚醤ガルムは、Domaine Basilisco Storico 2013 と供に。

 

 Domaine de Chambord のムフロン羊、熟したビーツのキャビア・グラン・ヴヌールソースは、Domaine Thibault Liger Belair Moulin a Vent, les Vignes Centenaires 2018と供に。

 

王様風ウサギのロースト アントナン・カレーム風、グリーントマトと西洋ゴボウ添えはDomaine Liber Pater 2018とペアリング。

 

クール・ド・デメー(ウォッシュタイプ・チーズ)のトリュフ添え、シソの葉添えは Tetradrachm 2021 (リベル・パテル)と。

 

ペルー産、カカオの花のクレーム、カカオニブのクランブル、コーヒーチェリーのソルベには、 ポートNiepoortの Bioma Rolf & The Collectors Vintage 2017が供されました。

 

 

引用元:Best Foot Forward for Francs de Pied

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