ワイン業界、中アルコール市場への大きな転換
消費者の意識変化を背景に、多くのワイン生産者が中程度のアルコール度数「ミッド・ストレングス」のワインへと舵を切り始めています。
昨今、アルコール消費量の減少が報じられ、新たな法規制もその流れを抑えるどころか後押ししている現在、低アルコールカテゴリーは飲料業界の将来を担う、最も有望な分野の一つとして浮上しています。
しかし、スピリッツやビールと比べると、ワイン業界はノンアルコールや低アルコール市場への対応で出遅れてきました。ワイン業界特有の保守な特徴に加え、良い風味をもつ低アルコールやノンアルコールワインを生み出すための技術的な課題が多く、進展を妨げてきたのです。
これまでとは異なる局面へ
「特に、節度ある飲酒や健康意識の高い若い世代を中心に、気軽な飲酒への需要が急速に高まっています」と語るのは、Carles Escolar氏。彼は、カタルーニャ州の大手ワイングループであるRaventós Codorníuが所有する、D.O. コステルス・デル・セグレのワイナリー、Raimatの醸造・生産マネージャーであり、同社は直近、アルコール度数8%のワインシリーズを発売しています。
業界内でささやかれる声の一つとして、Escolar氏は、ミッド・ストレングスこそが、NoLo(ノンアルコール・低アルコール)市場においてワインが巻き返すための最も現実的な選択肢であり、消費量が急減しているワイン市場に再び活力をもたらす鍵だと考えています。
アルコール度数0.0%や0.5%のワインは、完全にアルコールを避けたい人々には適していますが、味わいやワインらしさを損なわずに摂取量を抑えたいと考える従来のワイン愛好家からは、敬遠されることも少なくありません。
その点、中アルコールワインは、節度を保ちながらも、ワインに不可欠な複雑さ、アロマ、個性を備えた、理想的な妥協点となり得るのです。
「これらのワインはアルコール度数こそ低めですが、味わいはあくまで“本物”で、非常にバランスの取れた選択肢です」とEscolar氏は言います。
「世界的な節酒トレンドとも合致しており、新たな飲用シーンを生み出す可能性があるため、このカテゴリーには大きな成長余地があります」
規制が後押しする意識の変化
近年の規制改正も、このカテゴリーの追い風となっています。
EUでは、加盟国において地理的表示(GI)付きワインに対する脱アルコール処理が、最低アルコール度数0.5%まで認められるようになりました。これはEU諸国にとって極めて重要な意味を持つだけでなく、低アルコールワインが世界的に受け入れられていく上での、意識の大きな転換点を示しています。
アペラシオン(産地呼称)付きの低アルコールワインが可能になったことで、このカテゴリーはもはや大量生産ブランドだけのものではなくなりました。テロワールや地域性、生産者の哲学を反映したキュヴェが成立し、通常のアルコール度数のワインにより近い存在となりつつあります。
Escolar氏によれば、DOカタルーニャを含むスペインの複数の原産地呼称(DO)では、中アルコールワインに対応する新たな法整備に向け、生産者や関係者が積極的に協議を進めています。「このカテゴリーを明確に位置づけ、特定の原産地呼称の枠組みに組み込むことは、業界全体にとって非常に前向きです。認証された品質という付加価値を消費者に示すことで、カテゴリーへの信頼も高まるでしょう」
2024年春、EUの新規則をいち早く導入したフランスでは、すでに具体的な動きが見られます。
「私たちの検証では、0%ワインは説得力に欠けるという結論に至りました。慎重に検討した結果、最適なバランスとして6%に落ち着いたのです」と語るのは、ガール県のDomaine Grand Cheminでコマーシャル・ディレクターを務めるCharlotte Duverdier氏です。
同ドメーヌのアルコール度数6.5%の「JMF」シリーズが生産されるIGPセヴェンヌは、新たなEU規制をいち早く活用したGIの一つです。
「このワインは、この地域を代表するカベルネ・ソーヴィニヨン、サンソー、グルナッシュ、コロンバールから造られています。南フランスらしい個性を備え、地域性をしっかりと表現しています。バランスを取るために、ごく少量の糖分を添加しているだけです」
こうした流れはポルトガルにも広がっています。
テージョ地方では、従来から「Leve(レヴェ)」と呼ばれる、自然にアルコール度数が低い(9.5%)ワインが造られてきました。今年、現地のワイン委員会であるCVR Tejoは、Leveの最低アルコール度数を7.5%に引き下げました。これは脱アルコール処理ではなく、糖度の低いブドウを用いることで実現可能な水準です。
さらにCVR Tejoは、部分的に脱アルコールを行う新たなカテゴリーも創設し、こちらは最低0.5%まで認められます。最初のワインは、早ければ現行ヴィンテージから市場に登場すると見られています。
「生産者は市場の変化をしっかりと認識しています」と語るのは、CVR Tejo会長のLuis De Castro氏。
「特にイギリスや北欧などの輸出市場では低アルコールワインへの需要が高く、輸入税がアルコール度数に連動するケースも増えています。そのため、今回の変更は非常に前向きに受け止められています」
大手生産者の参入
セヴェンヌやテージョの取り組みは、世界全体で見ればまだ小規模かもしれません。しかし、より影響力の大きい産地の参入が目前に迫っており、業界全体、そして中アルコールカテゴリーに対する消費者の認識に、大きな変化をもたらす可能性があります。
ボルドー全域およびその南部をカバーするIGPアトランティックでは、すでに最低アルコール度数を9%に引き下げており、さらに6%への引き下げが、間もなく正式決定される見通しです。
「まだ最終決定ではありませんが、議論は確実に進んでいます」と語るのは、300の栽培農家から成る協同組合Bordeaux Familiesでマーケティング・広報を担当するAnne-Sophie Sobecki氏。同組合は最近、新たな脱アルコール設備に250万ユーロを投資しました。
「脱アルコールは、ボルドーの生産者にとって明確なチャンスです。需要が落ち込む中で、従来通り赤ワインだけを造り続けるわけにはいきません。成長市場に参入し、プレミアム化を図るための有効な多角化手段です。すでにヴィンテージ表記のある低アルコール、あるいはノンアルコールワインを求める声も出ています」
ピレネー山脈の南に位置するリオハでも、中アルコールワインの可能性が模索されています。
昨夏、規制委員会は生産基準を改定し、白・ロゼの最低アルコール度数を10.5%から9%へ、赤は11.5%から10%へ引き下げました。さらに、アルコール生成ポテンシャルの低い赤品種を試験的に導入するプログラムも始まっており、今後さらなる低度数化が進む可能性があります。
同様の取り組みは、スペインのDOテラ・アルタや、イタリアのプロセッコDOCでも進行中です。現在のイタリアのスプマンテ規定では、8.5%までの中アルコールはデミ・セックに限られていますが、プロセッコDOCでは、グレーラ主体で8〜9%のブリュットやエクストラ・ドライを造る実験が行われています。
「初期段階の結果は非常に前向きで、期待通りの内容です」と語るのは、プロセッコDOCと共同研究を行うパドヴァ大学のSimone Vincenzi教授。
「これらのワインは脱アルコール処理によるものではなく、発酵や炭酸ガス化の管理を工夫することで実現しています。つまり、ブドウに自然に含まれる糖分だけがアルコールに変換されているのです」
脱アルコール装置に頼らず、より“自然な”方法で中アルコールワインを実現できることは、ワイン業界にとって大きな恩恵となるでしょう。
スピニング・コーン・カラム*などの脱アルコール機材の使用を伴わないこれらのワインは、重視する従来の愛好家にとっても受け入れやすく、保守的な生産者層にも広がっていく可能性を秘めています。
*高速回転するコーンの遠心力で液体を極薄の膜状に広げ、低温で香りとアルコールを別々に分離する機材。
引用元:Wine’s Big Move Towards the Middle
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