Abruzzo(アブルッツォ)

「フルーティーで気軽なものから熟成を経て花開くものまで

モンテプルチアーノの奥深さが堪能できるアブルッツォ

コストパフォーマンスでは他の追随を許さない」

アブルッツォはイタリア中東部、アドリア海沿岸にあるワイン産地である。北はマルケ、西はラツィオ、そして南はモリーゼに面している。

モンテプルチアーノからの赤ワインと、トレッビアーノからの白ワインが有名である。生産量ではピエモンテやトスカーナを上回るイタリア第五位の州であり、多くのワインが協同組合から作られる。

ワイン造りの歴史は長いもののメインストリームを走るようなことはなく、長い間脇役に転じてきた。しかし、ここ40-50年においてワイン造りにルネッサンス的な動きが起こり、それまで長い間この地を支配していたバルクワイン生産に転機が訪れた。大量生産だけでなく、徐々に品質にフォーカスする造り手が現れてきたのである。こうした中にはブティックワイナリーとして現在世界的に高い評価を得る生産者もおり、ヴァレンティーニ(Valentini)やエミディオ・ぺぺ(Emidio Pepe)がその筆頭である。

 

アブルッツォの地形は非常に特徴的である。西側は起伏に富む山岳地帯(アペニン山脈)が連なり、東側はアドリア海沿岸地帯となっている。

畑は文字通り海と山の中間に広がっており、山の麓の丘陵エリアと平坦な海沿いエリアの2つに分けることができる。丘陵エリアは温暖な大陸性気候を持ち、雪の降る寒い冬と温暖で短い夏を持つ。海沿いに比べて日較差も大きくなる。標高も高く山からの冷気の影響を受けるが、これがブドウの生育期を引き伸ばし、糖分蓄積のスピードを低減させる。これによってしっかりとアロマやフレーバーが完熟する時間を確保できる。しかし、畑では春の霜害と収穫時の雨がリスクとなり、また傾斜があるためブドウの管理や収穫は基本的に手作業が求められる。

一方で、海岸沿いエリアでは気候はよりマイルドな地中海性となり、春の霜も秋の雨もそれほど心配にはならない。丘陵エリアよりも気温が高く、地形はなだらかで土壌はより肥沃となる。つまり、畑は基本的にはより大量生産型のブドウ栽培に向くと言える。このため仕立ても機械で管理しやすいコルドンまたはグイヨが多く見られ、収穫も機械を使う人が多く見られる。しかし、モンテプルチアーノという品種にフルーティーさあるいは柔らかなボリューム感を求める場合は、丘陵エリアだとかっちりしすぎてしまうケースもある。ある程度肥沃な土壌の方が理想とする味わいに近づけるため、必ずしも海側と山側ではっきりと優劣をつけることは難しい。

 

味わいの特徴

アブルッツォと言えば、まず思い浮かぶのがモンテプルチアーノの赤ワインである。この品種は晩熟で、同じ房内であっても粒の成熟が不揃いになることで知られている。ブドウに備わるタンニンとアントシアニン量が多いため、生産者は求めるスタイルによってマセラシオンの期間を変える必要がある。例えば4-5日などの短期間ではよりシンプルで軽やかなスタイルとなる。レッドチェリーなどの赤系果実を持つミディアムボディで、中程度のタンニンを持つ。このスタイルでは樽を使用しないことが多く、価格はカジュアルなものが多い。一方で、20日などの長期に渡るマセラシオンでは、深く濃い色調に力強いフレーバーを持つ本格的なワインとなる。レッドチェリーにブラックプラムなどの力強い黒系果実が現れ、フルボディでタンニンの量も多くなる。このため多くの生産者がオーク樽での長い熟成、またはリリース前の長い瓶熟を取り入れている。こうしてタンニンが見事に和らげられる。オークは大樽が一般的だが、一部では上級キュヴェにバリックが用いられることもある。

白ワインはトレッビアーノ・ダブルッツォが有名である。このワインはトレッビアーノ・アブルッツェーゼまたはトレッビアーノ・トスカーノから作られる。一般的には後者の方がフレーバーが弱く、質も劣るとされている。いずれの品種であっても、樹勢が強くかつDOCの収量規定が寛容(最大98hl/ha)なため、多くのワインはライト〜ミディアムボディの比較的軽やかなフレーバーを持つ。典型的なスタイルは嫌気的なアプローチで低温発酵を行い、酸を保つためにMLFは通常行われない。ワインはステンレスタンクでリリースまで寝かされる。多くがカジュアルな価格と品質になるが、ごく一部の生産者は眼を見張るような素晴らしいトレッビアーノ・ダブルッツォを生み出しており、ヴァレンティーニやエミディオ・ぺぺ、マシャレッリ(Masciarelli)らがその代表である。

ロゼも生産されており、チェラスオーロ・ダブルッツォの名で知られている。モンテプルチアーノが最低85%必要となる。元来、このワインは中程度の濃さを持つピンク色で、現在主流の淡いロゼワインよりも遥かに濃い色をしていたが、最近では軽やかなスタイルに移行している。多くが最大12時間という短めのマセラシオン、あるいは直接圧搾法よる抽出の優しい淡いスタイルが見られる。一部の生産者はセニエ方式でロゼを作るが、これはややボディが強くなる。モンテプルチアーノでロゼを作る際は、豊富なアントシアニンをいかにコントロールするかがポイントで、色素が出すぎないようにマセラシオンの時間を調整することが生産者の腕の見せ所となる。

モンテルプチアーノ・ダブルッツォにあるチトラの畑

 

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