Gevrey-Chambertin (ジュヴレ・ジャンベルタン)
みんなに愛されるブルゴーニュの王様 見るべきはまずグラン・クリュ所有の生産者から 力強く肉厚なスタイル
目次
■特徴
ブルゴーニュ最古のぶどう畑であり、最大の栽培面積を誇り、かのナポレオン皇帝も愛したジュヴレ・シャンベルタンは『ブルゴーニュの王様』と呼ばれる。
グラン・クリュを有する村の中では最北に位置するため、涼しい気候の中ブドウはゆっくりと熟し、緻密なタンニンと酸、果実味を手に入れる。
厳格で豪傑、どちらかというと寒い時期に飲みたくなるような力強い味わいが多くの消費者に好まれ、その味わいのスタイルも王様と呼ばれる由縁の1つだろう。
地形の影響で個性がばらばらなプルミエ・クリュ
広大なアペラシオンの中心には谷があり、その谷に大きく切り込んだ扇のような形をしている。
谷間を吹き抜ける冷涼な風にさらされる一帯、つまり扇の柄の部分にはプルミエ・クリュが広がる。
ブルゴーニュの他アペラシオンのプルミエ・クリュは、傾斜の角度が少し違ったりするだけで地形的に大きな違いがあるわけではない。
しかしジュヴレ・シャンベルタンは谷間の部分とその北部、グラン・クリュが密集する南部に分かれ、気候と日照量に差が出る。
例えばグラン・クリュを超えると呼び声高いクロ・サン・ジャック(格付けの取り決めの時、当時の所有者が適当な性格で、申請書類をめんどくさがって提出せず特級になり損ねたらしい)は谷間の入り口にあるが、谷側にクロ(=石壁)があるため風の影響を受けにくい。
さらに南東を向くため日照量は十分でじっくりブドウが熟され長熟で重量感のあるワインができる。
対してプルミエ・クリュとしては最北にあるシャンポーは、東向きの斜面で谷から離れているため風の影響もない。
良く熟したサクランボを頬張ったときのような果実感が味わえる。
村名ワインの選び方
コート・ド・ニュイでは唯一斜面の下部、国道をまたいだ平坦な土地にも畑名を名乗れる区画が存在する。
実は村名ワイン全体の約40%がこちら側で造られるのだが、それは斜面側と比べると不利なテロワールとなる。
どうしてもジュヴレ・シャンベルタンに求める厚みや強さというのが一回り小さくなってしまう。
その中で優れたワインを見つけるコツは1級と特級の区画で素晴らしいワインを生み出す生産者を選ぶことで、彼らは村名ワインでも同じように高い品質の作品を造ろうとする。
ブルゴーニュ最多のグラン・クリュ
斜面沿いに南に進むと偉大な9つのグラン・クリュが並ぶ。
斜面上部に位置する9のグラン・クリュと28のプルミエ・クリュを所有するジュヴレ・シャンベルタンは、言わずもがなブルゴーニュで最多の格付け数を誇る。さすが王様。
その中でも最も優れていると言われるのが特級のシャンベルタンとクロ・ド・ベーズ。
それぞれシャンベルタンは15、クロ・ド・ベーズは18軒の所有者がいる。
どの生産者も毎年の生産本数はわずかで世界中のワインラヴァーたちが手に入れようとするため、価格は天文学的な値段を叩きだす。
クロ・ド・ベーズはシャンベルタン=クロ・ド・ベーズと呼ばれシャンベルタンとブレンドすることも規定上可能だがそれを実行する生産者はほぼいない。彼らの認識はあくまで個々のテロワールの表現であり、2つの区画は数メートルしか離れていなくてもやはり同じではないのだろう。
シャンベルタンは斜面がなだらかで谷の間を吹く涼しい風にさらされ、土壌は粘土も混じる重い泥なのに対し、クロ・ド・ベーズは急斜面で風から守られ、粗い砂や小さな石が多く含まれる土壌。
なのでシャンベルタンは骨格がありフィネスに富みたくましく男性的で、これぞジュヴレ・シャンベルタンという威厳を感じる。
クロ・ド・ベーズは凝縮度でシャンベルタンに劣るが、肉厚で品があり余韻が長く女王の優美さがある。
ブルゴーニュ専門家のジャスパー・モリスMW(マスター・オブ・ワイン)は、この2つのアペラシオンを比較するときにはドメーヌの元祖ともいえるアルマン・ルソーが最高というが、誰がそんな贅沢な飲み比べを実現できるのだろうか。
広大なアペラシオンに伴って生産者も多いが、それだけ個性が広がるジュヴレ・シャンベルタン。
眉間にしわを寄せながら長熟で厳格なスタイルのワインを造り続けるドメーヌ・セラファンもいれば、ワインに必要なものはパッションと豪語するフィリップ・シャルロパンもいる。
ぜひジュヴレ・シャンベルタンとひとくくりにせず、その中でも自分が仕えてみたい王様を見つけてほしい。
■データ(出典:ブルゴーニュワイン委員会)
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