Hunter Valley(ハンター・バレー)

オーストラリアを語る上で欠かせない重要産地

ハンター・バレーの熟成セミヨンは飲むもの全てを虜にする

オーストラリアの東海岸に横たわるニューサウスウェールズ州は、人口が最も多い州として知られており、州都は最大都市のシドニーである。ワイン生産は1980年代から急速に伸び、現在ではオーストラリアで二番目のワイン生産量を誇る。この州において最も名高いワイン産地がハンター・バレーである。ハンターバレーは単に有名なだけでなく、オーストラリアのワイン産業にとって歴史的に重要な産地でもある。というのも、オーストラリアやニュージーランドのブドウ栽培の「ゴット・ファーザー」であるJames Busbyの故郷だからである。彼が1830年代にヨーロッパから運んできたフィロキセラ以前のブドウ木は、現存するオーストラリア最古のブドウ樹の祖先として知られている。

シドニーまで約200kmというアクセスの良さがあるため、多くの会社が観光客向けにテイスティングツアーを実施しており、この地の産業の重要な稼ぎ頭となっている。

緯度の低さ(南緯32-33度)、トロピカルな気候、比較的高い湿度、昼夜の気温差が少ないといったハンター・バレーの土地柄は、一見するとクオリティワインの有力な候補地には成りえない。しかしながら、ハンター・バレーでは海から穏やかな風が吹き、午後になると定期的に雲が発生する特徴がある。この2つの条件が暑さを和らげてくれるおかげで、気温と湿度が高くなりすぎず、ブドウは焼けるようなオーストラリアの太陽の日差しの中でも成長することができる。

ハンター・バレーは、気候や地形がほぼ同じであるにも関わらず、ローワー(下部)とアッパー(上部)の2つのエリアに分けられている。ローワーはより海岸に近く、海風のメリットをより享受できるため、アッパーよりもわずかに涼しくなる。

土壌は砂質ロームから粘土質ロームが見られる。雨の多くは生育期に降り、生産者たちはカビの被害に頭を悩ませることも少なくない。しかしながら一方で、保水性の高い土壌のおかげで乾燥の年であっても灌漑は不要となる。

■味わいの特徴

ハンター・バレーのワインはセミヨンを抜きに語ることはできない。この地のセミヨンは特にその熟成ポテンシャルの高さで知られ、ベストなものでは20年近くも進化し続ける。典型的な造り方は、早摘みしたセミヨンをステンレスタンクで醸造しすぐに瓶詰めするという極めてシンプルなもの。アルコール度数は10-12度と低く、ライトボディで高い酸を持つニュートラルなワインという印象を受ける。これだけではあまり魅力的に感じないが、熟成させると全くの別物に化けるのが興味深いところである。熟成を経ると黄金色に輝き、ナッティーでハニーやバターを感じさせるふくよかな口当たりのワインになる。オークは使用せず、MLFも行っていないにもかかわらず、熟成したセミヨンはプロのテイスターであってもしばしば樽のシャルドネと間違えるほどの変貌を遂げる。この地の重要な生産者はTyrrell’s(ティレルズ)やMount Pleasant(マウント・プレザント)などが挙げられる。

ハンター・バレーにおけるシャルドネの歴史は100年に満たないが、それでもなおこの地を抜きにオーストラリアのシャルドネを語ることはできない。なぜなら、オーストラリアで最初のシャルドネが造られたのはここハンターバレーだからである。Tyrrell’sによって初の試みがなされたのは1968年。樽を使ったシャルドネのスタイルはすぐに注目され1970-80年代にオーストラリア全土に広まった。現在のシャルドネのスタイルは様々で、ミディアムボディに高い酸(涼しい畑か早摘み)を持つものから、より熟度の高いフルボディで酸低めのタイプなどがある。オーク樽を使うもの、使わないものどちらも生産されている。

シラーズはセミヨンのライバル的な立ち位置で、極めて個性のはっきりしたワインを生む。心地よいタンニンの長熟タイプで土やタールのニュアンスにしばしば湿った革のアロマを伴う。20-30年の熟成を経て、ベストなものはシルキーで艶のあるテクスチャーを得て、不思議なことに熟成したローヌのシラーを彷彿とさせる。

 

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