La Pousse d’Or(プス・ドール)

プス・ドールはヴォルネイを語るうえでは欠かせない大御所ドメーヌであり、1erクリュに3つのモノポールを所有する。

歴史

ワイナリーのルーツは18世紀頃にまで遡ることができ、かつてのオーナー・デュヴォー家はロマネ・コンティを所有していた歴史を持つ。オーナーの死後、畑は娘たちに相続され、その後も分割と細分化が進んでいった。1964年、投資家たちの手によって再構築され、ドメーヌが設立。この時に醸造責任者となったのがジェラール・ポテルであった。

ジェラールの突然の死によって1997年にドメーヌはビジネスマンであったパトリック・ランダンジェの手に渡る。彼はすぐにセラーの刷新と畑の拡張に着手した。Jaboulet-VercherresからのCortonを皮切りに、2004年にはDomaine ChartronからPuligny 1er Le Cailleretを購入。さらに2008年にはシャンボールのDomaine Moine-Hudelotを買い取り、生産ラインナップを拡充した。その翌年にはRemy家からClos de la Rocheを購入。

2013年にはパトリックの息子ブノワがドメーヌに参画。2017年にはOlivier LeflaiveからChevalier-Montrachetを購入した。その翌年2018年にブノワはドメーヌを引き継いで現当主となる。近年ブノワはさらにニュイに畑を購入しプス・ドールのポートフォリオを強化した。

 

バックボーンはヴォルネイにあるものの、ニュイやボーヌに幅広く畑を所有するプス・ドール。約17haの畑には7つの特級と11の一級が含まれる。

特級はCorton Clos du Roi(1.4ha)、Corton les Bressandes(0.5ha)、Bonnes-Mares(0.3ha)、Clos de la Roche(0.34ha)、Chevalier-Montrachet(0.2ha)そして近年ブノワが購入したEchezeauxとCharmes Chambertinとなる。

一級はフラッグシップとなるヴォルネイの3つのモノポールClos de la Bousse d’Or(2.1ha)、Clos des 60 ouvrees(2.4ha)、Clos d’Audignac(0.7ha)に加えてEn Caillerets(2.2ha)も所有する。ヴォルネイ以外ではPommard 1er Cru Les Jarollieres (1.4ha)、Santenay 1er Cru Clos de Tavannes(2.1ha)、さらにはPuligny-Montrachet 1er Cru Le Cailleret(0.7ha)もある。一方、コート・ド・ニュイでは2008年のドメーヌ購入によって加わったChambolle-Musignyの1er Les Amoureuses(0.2ha)、Les Charmes(0.19ha)、Les Groseilles(0.52ha)、Les Feusselottes(0.42ha)、そして近年ブノワが購入したGevrey Chambertin 1er Cru La Perriereとなる。

 

栽培

ジェラール・ポテルが畑を見ていた当時、息子ニコラもプス・ドールで父のサポートしていた。このニコラが有機栽培を推し進めたおかげで一部の畑はすでにオーガニックに転換していた。パトリックがドメーヌを購入した後もそのアプローチは受け継がれ、除草剤や殺虫剤は使用していない。畑を全面的にオーガニックに転換させたパトリックは、さらに2014年からビオディナミを導入し、2018年にDemeter認証を取得した。

 

醸造

パトリックが行ったセラーでの改革はいくつもあるが、とりわけ品質向上に大きく貢献したのが光学選果台の導入と独自開発したウイヤージュ・カラフェである。

パトリックは2011年の収穫前にVistalysと呼ばれる光学選果台を購入。最新型のマシンで非常に高価だったため当時ヴォルネイでこのマシンを持つのはプス・ドールのみで、ブルゴーニュ全体でもLouis JadotとVinecent Girardinのみであった。振動型の選果台で葉、虫、小さなゴミ等を払い落とした後に除梗したブドウがこのマシンに入っていく。光学選果台にはコンピュータとカメラが搭載されており、形や色の悪い粒を選別して空気ではじき出してくれる。無論収量は減るが、最高品質のブドウが手に入る。

次にセラーでひときわ目を引くのがガラス製のビーカーのようなウイヤージュ・カラフェである。それぞれの樽の上にワインの入ったカラフェが直接取り付けられており、このカラフェのワインが樽内の目減り分を自動補填してくれる。これによって従来のトップアップにおける不必要な酸素との接触が避けられる。またカラフェ自体が透明なためワインの減りもひと目で分かる。

現当主ブノワは父パトリックの手法をしっかりと継承している。現在セラーでは、光学選果台を含む二度の選果が行われ、除梗されたブドウは重力フローでタンクへと移す。温度管理機能付きのタンクで自然発酵させ、熟成はフレンチオーク樽(新樽20-30%)で12-15ヶ月。ブノワは近年新しい取り組みとしてCaillerets、Clos de la Bousse d’Or、Clos des 60 Ouvreesにアンフォラを導入した。樽を使わずに樽と同じ量の酸素を得るというのが目的で、「樽由来の味やタンニンを加えずにワインが与えてくれるものをそのまま表現したい」という。2015年から通常版とアンフォラ版の2キュヴェを作っており、それぞれ分けて生産することでその影響を比較検討していくねらいがある。醸造ではほとんどSO2は添加されず、全てのワインは重力フローによって無清澄・無濾過で瓶詰めされる。

 

味わい

プス・ドールの味筋は同じヴォルネイのスタードメーヌMarquis d’Angervilleと逆だと言える。d’Angervilleは果実味が控えめでよりストラクチャーを感じるスタイルで、甘さよりも透明感というタイプである。一方、プスドールはより甘やかな果実と重みがあり、リッチさを感じる。つまり、果実を楽しむならプスドールである。Vinousの記事でパトリックは「ヴォルネイでいつも収穫が最後」だと自身を表現しているが、これがプスドールの果実の甘さや凝縮感を生み、赤果実よりも黒果実を強く感じさせる。温暖な年は力強さがブーストされてテロワールの個性がややマスキングされてしまうこともなくはないが、逆に冷涼年では見事な満足感が得られる。

味わいはブラックベリー、ブラックチェリー、ブラックラズベリーなどのフルーツが主体で、そこにスレミとブラウンスパイスが混ざる。クラシカルなヴォルネイよりも甘みと果実味が強く、テクスチャーもより厚みと柔らかさが感じられる。一方で上質で直線的な酸とやや粒感のあるグリッピーなタンニンが噛みごたえのあるフィニッシュを作る。リコリスやペッパー、ハーブのタッチを感じる非常に長い余韻が楽しめる。

 

 

 

 

 

 

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