L’Arlot(ラルロ)

「ニュイ・サン・ジョルジュで美味しいワインを探しているなら、ラルロがその答えである」 WS誌のこの言葉に偽りはないだろう。ニュイ・サン・ジョルジュといえば、Robert ChevillonやHenri Gougesなどの優良生産者が目立つが、近年のラルロの洗練された味わいは、彼らの中でも頭ひとつ抜きん出ている。

 

歴史

ラルロの中核をなす2つのプルミエ・クリュ(Clos de l’ArlotとClos des Forets St-Georges)はプレモーのDomaine Jules Belinによって長い間所有されていたが、1987年に保険会社大手のAXAに売却され、ラルロが誕生した。初代醸造責任者となったのはジャン・ピエール・ド・スメ。彼はもともと会計士だったが、Dujacのジャック・セイスを訪問した際にワイン造りに魅せられてしまう。それからディジョン大学で醸造を学び、自らのワイン造りを実践する機会を探していた。そんな中、ジャンはAXAとパートナー関係を結び、新生ラルロの指揮を取ることになった。その後1991年、AXAはヴォーヌ・ロマネに畑を少し買い足し、これによってラルロは現在の規模(約14ha)となった。

 

1998年には研修生としてオリヴィエ・ルリッシュが入社する。彼はジャンとともに懸命に働き、その情熱と才能を認められていく。ジャンは2006年に引退を決め、醸造責任者の座をオリヴィエに引き継いだ。しかし、自身のドメーヌを持つ夢を諦めきれなかったオリヴィエは、2011年にアルデッシュでDomaine Des Accoles設立のためにラルロを去ってしまう。

 

オリヴィエの後任となったのはDomaine de la VougeraieやMichel Magnienで研鑽を積んだジャック・ドヴォージュ。しかし、2014年ジャックはClos de Tartにヘッドハンティングされ、わずか数年でラルロを去ってしまう。

 

その後ボーヌのAlex Gambalでワインメーカーとして働いていたジェラルディーヌ・ゴドーが後任として抜擢され、才能あふれる彼女のもとでラルロは進化を続けている。オーナー=ワインメーカーというパターンが大半のブルゴーニュにおいて、そうではないラルロ。激しい人事異動をもろともせずに名声を維持し続けていることは誠に偉大である。

 

所有する約14haの畑のほぼ全てがモノポールという極めて特殊なポートフォリオを持つ。Clos de l’Arlot (4ha)、Clos des Forets St-Georges (7.2ha)に加え、プレモーのさらに南にあるコンブラシアンにもClos du Chapeau (1.55ha)を単独所有する。

 

Clos de l’Arlotは、プレモー最南端にあるJ-F MugnierのClos de la Marechaleの一つ手前に位置する。4haのこの畑では区画と樹齢で様々なバリエーションが見られる。北西の斜面上部にはピノの若木が植えられており、以前はLe Petit Arlotとして知られたが、現在はMont des Oiseauxとしてリリースされている。メインとなるClos de l’Arlotの高樹齢のブドウは北寄りの斜面中腹〜下部に植わっている。一方、Clos de la Marechaleに隣接する南部には若木のシャルドネが植えられており、これがLa Gerbotteを作る。高樹齢のシャルドネは斜面中腹あたりにバランスよく点在しており、これらをブレンドしてClos de l’Arlot Blancが作られる。

 

一方、Clos des Forets St-Georgesはプレモー北部にあり、上から下まで斜面全域を広くカバーしている。斜面下部の粘土の重いリッチなワインと上部の石灰が強いハイトーンなワインはそれぞれ分けて仕込まれる。以前は若木専用のキュヴェ(Les Petits Plets)や味わいの性格が異なるもの(Hors Ligne)が別キュヴェとしてリリースされていたが、現在はClos des Forets St-Georgesのみがリリースされている。

 

ニュイ・サン・ジョルジュ以外ではヴォーヌ・ロマネにRomanee St. Vivant(0.25ha)と1er Les Suchots(0.85ha)を持ち、さらにCote de Nuits Villages Aux Leureys(0.26ha)とHautes Cotes de Nuits Le Mont(0.33ha)も所有する。

 

栽培

自然の産物であるブドウとそれが生み出すワイン、その個性を解き明かすためには自然への尊敬が不可欠である。こう考えていたジャンは、2000年から有機栽培を開始し、2003年からは全面的にビオディナミを導入した。これによって入手当時はお世辞にも良いとは言えなかった土の状態が改善し、ブドウの品質が大幅に向上した。現在もジェラルディーヌによってこの考えは継承され、畑のエコサイクルは好循環を続けている。ラルロではこの高品質なブドウを一つ一つ丁寧に手摘みし、ブドウが潰れないよう小箱で収穫。その後、厳しい選果が行われる。

 

醸造

ジャンの時代はDujacの全房スタイルに色濃く影響を受けていたが、その後オリヴィエ、ジャックと醸造責任者が変わる中で味わいの路線が変わっていった。具体的には全房の比率が下がり、ワインの密度をアップさせるためより糖度の高いブドウが収穫されるようになった。こうして先代とは異なるスタイルでラルロは進化していき、現在ジェラルディーヌは年やキュヴェごとに全房比率を変動させるという最も柔軟なスタイルを取り入れている。また、抽出を最小限に抑え、新樽比率も下げた。ブドウの味わいを最大限に引き出すためのLess is moreなアプローチを実践している。

 

セラーでは重力フローによって果汁を移動させ、自然酵母での発酵、最低限のルモンタージュとピジャージュで極めて優しい抽出をする。年やキュヴェによって異なる全房比率でプレスし、ラッキングは最大でも2回まで。熟成期間は12-18ヶ月で、新樽は最大40~50%までに抑える。

 

味わい

伝統的にラルロのワインは他のニュイ・サン・ジョルジュと比べてやや色が淡い特徴があった。これは茎が発酵中に色素を吸収するためである。また、ラルロはがっしりとしたタニックなストラクチャーという一般的なニュイのイメージとも異なっている。初期から多くの全房が使われてきたということは、とりもなおさず果実やマストの扱いに人一倍の注意が注がれてきたということでもある。なぜなら茎は雑に扱うとすぐに苦味やエグミが出てしまうからである。この結果、ニュイらしからぬ非常にデリケートで香り高いワインが生まれる。茎がもたらす複雑味、上品なアロマ、シルキーなタンニンがありながらも躍動感あふれるピュアな果実が共存する。この見事なバランスこそ、ラルロの醍醐味と言える。近年は特に抽出が優しく、新樽率も控えめになったおかげで、味わい全体に見事なツヤ感が現れ、液体の上質感が強まった。ニール・マーティンが「ジェラルディーヌがドメーヌに落ち着き、今までで一番のラルロを作っている」と評したのにも大いに頷ける。

 

フラッグシップとなる2つのワインはそれぞれ性格が異なり、Clos des Forets St-Georgesはより男性的なスタイル。赤系というよりはブラックカラント、ブラックベリーなどの黒系果実にスパイスが混ざり、年によってはリコリスやレザー、ブラッドオレンジのニュアンスのあるアロマ。密度と力強さを感じさせる味わいで、グリッピーなタンニンに支えられた厳格なストラクチャーが感じられる。このため全房比率や新樽率は基本的に高くなる。一方、Clos de l’Arlotはフィネスとエレガンスのワイン。黒系ではなくラズベリー、レッドカラント、チェリー、ストロベリーといった赤系主体にフローラルなニュアンスを持つアロマ。デリケートでエレガントなストラクチャーを持ち、中心部に力強さを秘める。力強さというよりはバランスのワインでしなやかなタンニンを持つ。

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