Pierre Yves Colin Morey(ピエール・イヴ・コラン・モレ)

ピエール・イヴ・コラン・モレは、誕生とともに瞬時にトップドメーヌの仲間入りを果たしたシャサーニュのスーパースターである。

 

歴史

サン・トーバン名手Marc Colinの長男として生まれたピエール・イヴ。彼は1994年から家業のドメーヌで働く一方、2001年に妻カロリーヌ(シャサーニュ名手Jean Marc Moreyの娘)とともにコラン・モレという名でネゴシアン・ビジネスをスタートした。当初はわずか6樽という生産量だったが、両者ともに名のあるドメーヌ出身であったため、ブドウ購入先のツテにも恵まれ2005年には生産量が35樽にまで増えた。意を決したピエール・イヴは2005年の収穫後、6haの相続分とともに家業を離れ、ピエール・イヴ・コラン・モレとして本格的に生産をスタート。これ以降、自社畑と買いブドウのダブル生産が続くが、妻カロリーヌの相続分7haを手に入れると、自社ブドウからの生産にシフトしドメーヌよりのスタイルに変わっていく。その後2015年には生産の約80%が自社畑からとなった。2015年はセラーを新設した年でもあり、これによって容器のサイズ、熟成期間、ワインの移動回数、瓶詰めのタイミングといった旧セラーの狭さ問題が解決された。2021年や2022年はCorton CharlemagneとMeursault以外は全て自社ブドウのワインとなっており、ピエール・イヴは「ネゴシアンビジネスを終わらせたい」と語る。現在はピエール・イヴとカロリーヌの息子マティス(と弟のクレモン)がドメーヌに参画している。マティスはまだ二十代前半と若いが、すでに多くの経験を積んでおり、Jean-Louis Chave、Domaine Tempier、Dujacなどで研鑽を積んだ。

 

約13haある畑は主にサン・トーバンとシャサーニュからなり、サン・トーバンはヴィラージュのSaint-Aubin(1.64ha)に加え、1er Champlots(0.65ha)、1er Chateniere(0.86ha)、1er En Remilly(0.64ha)、1er Perrieres(0.44ha) などを所有する。シャサーニュはヴィラージュのChassagne-Montrachet(0.75ha)、Chassagne-Montrachet Ancegnieres(0.26ha)に加え、1er Chenevotte(0.62ha)、1er Abbaye de Morgeot(0.57ha)、1er Les Caillerets(0.18ha)などを生産する。加えてごく少量のPuligny Montrachet 1er Garennes(0.14ha)と雀の涙ほどの特級Batard MontrachetとMontrachetがある。広域クラスではHautes Cotes de Beaune、Bourgogne Chardonnay、Bourgogne Aligoteを作っている。買いブドウからはMeursault 1er Charme、1er PerrieresやCorton Charlemagneなどが作られている。なお、生産のほとんどが白となるが、少量のピノ・ノワールも生産している。

 

栽培

畑にはカバークロップや軽い耕作を取り入れ、化学肥料を使用せず自然のバランスを尊重する。近年の温暖なヴィンテージにおいて、ピエール・イヴは行きすぎない範囲での早めの収穫を行う。彼は「張りを求めているが、やせ細ってしまうのはだめ」だと語り、ポイントはフレッシュで緊張感漂うアロマの後に十分な果実味が口内で感じられることだと言う。

 

醸造

生産量のあるキュヴェに関してはブドウを破砕して4時間の長いプレスを行うが、量の少ないキュヴェは破砕をせず、かわりに長時間プレス(5時間あるいはそれ以上)を行う。その後、重力フローを使用して澱ごとタンクに移し、冷却しながら澱が果汁全体に行き渡るように一晩撹拌する。こうすることで発酵樽に入る澱の量をそれぞれ均一に保つことができる。樽はChassinとFrancois Freresのものでサイズは全て350L、新樽は1/3程度となっている。ファーストヴィンテージを228Lで仕込んだものの、ワインにオークの香りがつきすぎたと判断したピエール・イヴは翌年からサイズアップした350L樽を取り入れた。マロラクティック発酵に関しては、温度調節によるコントロールを一切行わない。これは新セラーになってから十分なスペースがあるため、マロが遅くても焦る必要がなくじっくりと待てるからである。ピエール・イヴは二冬越す長い樽熟成を好み、その間のバトナージュ、ワインの移動は行わない。また彼はボトリング前にワインをステンレスタンクに移して半年寝かせるという一般的なやり方を好まない。ワインは樽の中でこそ進化するという考えを持つ彼にとってこの期間は熟成とは言わず、「ステンレスタンクはワインを進化させない。タンク内のワインは生命活動をストップし、メタリックなニュアンスを帯びてしまう。」と断言する。瓶詰めは無濾過・無清澄で行い、プレモックス対策として幅の広いコルクを採用し、蝋キャップで覆う。

 

味わい

ファーストヴィンテージ(2005年)からわずか6年でジャンシス・ロビンソンに「本物の品質、正確な味わい、高い熟成ポテンシャルを持つワインを作る非の打ち所のない2つのドメーヌ、それがCoche Duryと新進気鋭のPierre Yves Colin Moreyである。」といわしめたピエール・イヴは特別な存在である。彼のワインはシャサーニュで最もエッジの効いた、リニアで還元的な味筋を持っている。一昔前はCoche DuryやRoulotでおなじみの香ばしいマッチやガンフリントのアロマがトレードマークだったが、近年このニュアンスは控えめになってきている。その理由を「よりクリーンな澱を使うようになったのと瓶詰め前のSO2量が減ったことではないか」とピエール・イヴの息子マティスはVinousのインタビューで答えている。還元度合いはいくぶん穏やかになったものの、ピエール・イヴのスタイルは決して変わっていない。とりわけ果実味のピュアさは群を抜いており、シャルドネというよりもむしろ上質なリースリングを想起させる水晶感・透明感がある。砕いた岩のミネラルとレーザーのように鋭い酸が合わさって「スクエア型」の厳格さを生み、シトラスゼストが冷涼感を添える。全体を通してシャープでタイトな印象だが、非常にクリーミーな澱のニュアンスと凝縮された柑橘の蜜の甘みが見事にボディを満たしている。フィニッシュはチョーキーでライムの風味と切れのある酸が口内を引き締める。

 

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