Puglia（プーリア）

イタリアのかかとの部分にあるプーリアは、アブルッツォの南部に位置し三方を地中海に囲まれた細長い産地である。温暖な地中海性気候のもと心地よい海風が吹くこの地は、ワイン生産にはうってつけで、降雨量が少ないために病害リスクが低く、土壌は肥沃で灌漑が許可されている。

この恵まれた土地に根付くプーリアのワイナリーたちは長い間、需要に応えるために大量のブドウを育てワインを量産してきた。こうしたワインの多くがイタリアの冷涼産地に送られ、アルコールとボディを増幅させるブレンドパーツとして重宝された。これは大きな経済効果をもたらしたが、時代が進むにつれ品質の高いワインを求める声が高まると、プーリアが得意としていた大量生産ワインは価値を失っていった。20世紀後半になると消費者は完全に量より質を求めるようになり、またリーズナブルで上質なワインがオーストラリア、アルゼンチンやチリなどの競合他国から出てきたことで、ますます存在感が薄くなっていった。

こうした状況を打開すべくプーリアが取った行動は収量を下げ、品質にフォーカスした丁寧なワインメイキングを取り入れることであった。現在多くのワイナリーで他産地や他国からのワインメーカーを受け入れ、よりオープンなマインドで良いものを取り入れ品質向上に努めている。Antinori(アンティノリ)やFarnese(ファルネーゼ)などの著名ワイナリーがこの地に投資していることも品質向上に一役買っている。

プーリアのテロワールはブドウ栽培に理想的で、温暖な地中海性気候、豊富な日照と時折吹く海風がほぼ完璧とも言える環境を作る。土壌は石灰岩を基盤とし、その上には鉄分豊富な堆積土壌が見られる。プーリアはざっくりと南北に分けることができ、北部では地形がわずかに起伏に富んでいる。ワインメイキングはイタリア中部に通ずるものがあり、ブドウもサンジョヴェーゼやモンテプルチアーノなどが見られる。また北部はオリーブの栽培が盛んでイタリアのオリーブオイル生産の約半数を担っている。一方、ワイン産地としては南部(海に囲まれた踵の部分)が盛んで、全体的にフラットな地形を持ち、プリミティーヴォやネグロアマーロといった地場品種から魅力的なワインが生まれる。

イタリアで最もコスパの良いワインと言っても過言ではないプーリアのワインは、ほとんどが赤でフルボディ。メイン品種となるのはネグロアマーロとプリミティーヴォである。

プリミティーヴォは多産な品種で、ジンファンデルとして知られる。プーリアのプリミティーヴォは粒が小さく房が密ではないため、カリフォルニアのジンファンデルと比べると病気への耐性が強い。この品種は一つの房内であっても熟した粒とそうでない粒が混在することで知られ、高品質ワインを作るのであれば厳しい選果が欠かせない。糖の蓄積が早いためアルコールが上がりやすいのも特徴である。また、収穫期が近づくにつれブドウは木の上で乾燥する傾向があり、さらなるアルコール上昇に拍車がかかるため、過熟なニュアンスやドライフルーツのニュアンスをいかにうまく避け、最適なタイミングで摘むかが品質の鍵となる。カジュアルなワインではマセラシオンを7-10日ほど行い、その後ステンレスタンクまたは大樽で約6ヶ月と短めの熟成を行う。高品質なワインではマセラシオンの期間をより長くとることで、力強いフレーバーと強固なストラクチャーが際立つ。熟成期間も長く、フレンチオークバリックが使われることが多い。

ワインは力強いアロマを持ち、完熟したブルーベリーやブラックベリーにフレッシュなイチジクやドライフルーツ、レザーのニュアンスが感じられる。豊富なタンニンとキビキビとした酸が見事にバランスを取っている。クオリティレンジが広く、安価なものから中程度、そして傑出したプレミアム品質のものが一部で見られる。中でもジャンフランコ・フィノ(Gianfranco Fino)は見逃せない。

ネグロアマーロは多産で病気と干ばつに強く、さらに酸もしっかりと残す品種であるため、プーリアのような暑い産地にうってつけの品種となる。マセラシオンは基本的に7-10日程度で、安価なワインではステンレスタンクで半年ほどの短い熟成が行われ、品質の高いワインでは樽で一年熟成させるものが多く見られる。

ワインは完熟したブラックプラムやブラックチェリーなどダークフルーツに、シナモンやアニスなどのスパイスが感じられる。アルコールは高めでタンニンは豊富だが、決してタニックだったり酸が強すぎたりせず、弾けるような果実味が楽しめる。クオリティレンジは広く、安価なものからプレミアム価格のものまであり、中でもヴァローネ(Vallone)のワインは見逃せない。