Veneto(ヴェネト)

イタリア最大の生産量を誇るヴェネト

注目すべきはアルプス麓の北西部

2大巨頭のソアヴェとヴァルポリチェッラである

ヴェネトはイタリアの北東部にある重要なワイン産地である。北はトレンティーノ・アルト・アディジェ、東はフリウリに面している。西はガルダ湖から東はヴェニスまで広がっており、アルプスの麓である北部からポー川が作る南部の平坦な平野まで多様な地形が見られる。ヴェネトはイタリア最大の生産量を誇る州で、プロセッコやピノ・グリージョといったポピュラーなカジュアルなワインだけではなく、ソアヴェやヴァルポリチェッラといった名高いDOCやDOCGのワインも多く見られる。

ソアヴェは小規模栽培家と大規模瓶詰め業者の産地である。家族経営の元詰めワイナリーは全体の10%にも満たず、逆に最大の協同組合(Cantina de Soave)が全生産量の約半数をボトリングしている。過去の動きを見てみるとソアヴェは1960-70年代に人気絶頂となったものの、それ以降は人気に甘えた安易な大量生産によって品質が低下し、またピノ・グリージョなどの競合が現れたため存在感が薄くなってしまった。しかしピエロパン(Pieropan)、アンセルミ(Anselmi)やジーニ(Gini)といった一流生産者のワインは、ソアヴェの持つテロワールの本質とそのポテンシャルの高さに改めて気づかせてくれる。

ヴァルポリチェッラでは80%以上の生産者がDOCあるいはDOCGワインを作っている。とりわけアマローネの人気は高く、1990年中頃と比較すると生産量は6倍も伸びている。一方で通常のヴァルポリチェッラの生産量は2006-2016年の10年間で約40%も減っている。これは通常のブドウよりもアマローネ用の陰干しブドウの方が約3倍も高値で売れるからであり、ブドウ栽培家にとってはリターンが大きいという背景がある。ヴァルポリチェッラでもソアヴェ同様にビジネスではなく品質を一番に考え、上質なワインを作ることに情熱を捧げている生産者がいる。例えば、モンテ・ダッローラ(Monte dall’Ora)やモンテ・デイ・ラーニ(Monte dei Ragni)、またこの地の偉人クインタレッリ(Quintarelli)の元ワインメーカーが立ち上げたモンテ・サントッチョ( Monte Santoccio)などはみなオーガニックあるいはビオディナミの原則に従って良質なブドウを栽培している。

 

ヴェネトの気候は温暖な大陸性で、程よく雨が降る。北西部の標高が高い畑やアルプスの麓にある畑は山から下る冷気の影響を受けるとともに日較差も大きくなる。こうした麓の畑は水はけの良い痩せた土壌が特徴となる。一方、南部の平地はアディジェ川とポー川による湿気や霧の影響を受けるため、多くで病害菌対策が必要になる。平地の土壌は非常に肥沃で高収量のブドウ栽培に向いている。

ヴェネトの最重要産地は、ヴェローナの北に位置するヴァルポリチェッラとそのすぐ東隣のソアヴェ。両エリアともにアルプスの麓から平野に渡って広がっているため、土壌や収量の違いによるブドウ品質の差が大きい。基本的にはアルプスの麓エリアでは、石灰岩、粘土あるいは火山性土壌が見られる。南部の畑よりも土の温度が低く、標高の高さも相まってブドウはよりゆっくりと成長する。このおかげで高い酸を保ちながらもフレーバーをしっかりと完熟させることができる。一方、南部の平地では砂利や砂が多く、より温度が高い土壌となる。その結果、より果実味の強い、酸の穏やかな味わいとなる。

 

味わいの特徴

Soave

ソアヴェの顔となるのは白ブドウのガルガーネガである。ワインは高い酸があり、ミディアムボディにレモン、りんご、洋梨、白胡椒などのフレーバーを持ち、完熟ブドウにはストーンフルーツの要素も出てくる。基本的にはオークを使用しない果実味主体のスタイルとなる。一部のトップ生産者は、短時間のスキンコンタクトや澱との熟成、また場合によっては樽発酵・樽熟成を取り入れる。最上のものは熟成ポテンシャルもあり、瓶熟を経てアーモンドやハニーなどのフレーバーが出てくる。

他産地であれば最上級ワインは小売価格で1万円を超えることも珍しくないが、ソアヴェでは5~8千円のレンジで最高峰のものが味わえるのがこの産地の魅力と言えるだろう。
一般的にソアヴェときいてイメージする、水っぽくて薄い果実味のカジュアルなワインは、南部の平坦なエリアで大量生産されたものなので飲むべきではないが、北西部にある丘陵エリアのソアヴェは全くの別物である。斜面で育つブドウは収量が低く、果実味に凝縮感があり、なんと言っても土壌に由来する硬質なミネラル感がしっかりと味わえる。こうしたワインは伝統的なクラシコエリアに多く、これこそまさに飲むべきソアヴェだと言える。

Giniの畑

Valpolicella

ヴァルポリチェッラはとにかくスタイルの幅が広く、通常ブドウを使用するか乾燥(陰干し)ブドウを使用するかで味わいが大きく異なる。共通事項はセパージュで、コルヴィーナあるいはコルヴィノーネが45-95%、ロンディナーラが5-30%必要となる。コルヴィーナは、ブレンドの中核となる品種で、ヴァイオレットやレッドチェリー、レッドプラム、ハーブのノートなどの特徴があり、ミディアム〜やや低めのタンニンと高い酸を持つ。コルヴィノーネは、コルヴィーナとのブレンド相性がよく、豊富なタンニンとレッドチェリーのフレーバを寄与してくれる。ロンディナーラは比較的ニュートラルな味わいで、軽やかでシンプルなチェリーのフレーバーを持つ。

通常のブドウから作られる最もスタンダードなValpolicella DOCは、比較的シンプルでフレッシュ・フルーティーな味わいが特徴となる。ステンレスタンクで発酵させ第一アロマをしっかりと保持し、比較的短時間のマセラシオンによって穏やかなタンニンを抽出する。その後、半年前後熟成させリリースされる。レッドチェリーやローズのアロマを持ち、オークのニュアンスはなく比較的穏やかなタンニンに高めの酸が特徴となる。
ワンランク上のValpolicella Classico DOCは、丘陵地の限定されたエリアからのブドウを使用し、より凝縮感があり、品質が高い。
Superioreは、上記のDOCワインに対し、より高いアルコール度数と、より長い一年間の熟成が義務付けられている。このカテゴリで傑出した品質のプレミアムワインを作っているのは、クインタレッリ(Quintarelli)やダル・フォルノ・ロマーノ(Dal Forno Romano)であり、小売価格では1万円を超えてくる。

一方、乾燥(陰干し)ブドウを用いて作るアマローネやレチョートなどは、より凝縮された複雑なフレーバーに高いアルコール、タンニン、酸を持つ味わいとなる。ブドウは木に残したままか、あるいは収穫後に乾燥させる。後者の場合は、ブドウを3-4ヶ月換気の良いロフトで保管する。乾燥によってブドウは約1/3の大きさに縮むが、水分の蒸発によって、相対的に糖度、アルコール、酸度、アントシアニン、タンニン、フレーバーが凝縮される。また乾燥の過程における化学反応で多くのグリセロールが生まれるため、ワインはより柔らかく、口全体を覆うようなテクスチャーが生まれる。

Amarone della Valpolicella DOCGでは、アルコール15%を超えるものが多く、しばしば5-9g/Lの残糖を伴う。ワインは大樽またはバリックで最低二年の熟成が必要で、リゼルヴァが付く場合は4年となる。力強いチェリーとドライフルーツのフレーバーにスパイスや木のノートが溶け込み、豊富なタンニンと高い酸がリッチな果実味をしっかりと支えている。生産者によっては新樽のフレーバーを付与したり、熟成中にウイヤージュ(補酒)をしないことで微妙な酸化的熟成を取り入れ、ナッティーや揮発系のニュアンスを加えるスタイルもある。

品質と価格は様々で、例えば最高級であるクインタレッリのものは小売価格で5万円を超えてくる。辛口のアマローネに対し、Recioto della Valpolicella DOCGは甘口で、力強い赤系果実やドライフルーツのフレーバーを持ち、フルボディで豊富なタンニンが含まれる。アルコール度数と糖度によって様々なスタイルがある。

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