Willamette Valley(ウィラメット・ヴァレー)

「世界有数のピノ・ノワールの銘醸地

ブルゴーニュのビッグネームも惚れ込むそのテロワールは

柔らかくも複雑な奥深い味わいを生む」

オレゴン州西部にあるウィラメット・ヴァレーは、カリフォルニア以外で最も重要な米国のワイン産地と言えるだろう。

ポートランドの街から川沿いに南に200km近く広がるこのAVAは、1,300,000ha(ブドウ畑は約13,750ha)もの広大な敷地をカバーする。植樹が最も多くかつ最も品質の高いワインを生み出しているのがピノ・ノワールで、最上のものはしばしばブルゴーニュと比較される程である。全体の約70%がピノ・ノワールで、他はピノ・グリ、シャルドネ、シラー、リースリングなどが見られる。

ブドウ栽培が本格的に始まったのは1960年代の後半になってからだが、オレゴンの歴史が動いたのは1979年に行われたゴー・ミヨ誌主催のワイン・オリンピックである。この世界的なブラインドテイスティング大会でウィラメット・ヴァレーのピノ・ノワール ( Eyrie Vineyards ) がブルゴーニュワインに迫る大健闘をしたのである。大会の後、Robert Drouhin ( Joseph Drouhin のワインメーカー)は再戦の場を用意したが、そこでもEyrie Vineyardsは二位という素晴らしい結果を残した。これがきっかけとなって、世間の注目が一気にオレゴンに集まり、それに伴ってブドウの植樹も増えていった。

その後正式にAVAとして認定されたのは1984年で、2000年初頭には広大なウィラメット・ヴァレーの中に6つのサブAVAが誕生。さらに2019~2021年の間に新たに4つのサブAVAが加わった。

 

ワシントン州とオレゴン州を隔てる巨大なコロンビア川には支流があるが、そのうちの一つがウィラメット川で、ウィラメット・ヴァレーはこの川に沿って南に広がる。東にはカスケード山脈が、西にはオレゴン海岸山脈がそびえる。この海岸山脈によって太平洋から守られてはいるが、いくつかエリアでは山々の隙間から流れ込む冷たい海風の影響を受ける。この隙間風は夏に冷気を秋に湿気をもたらす。そのためこの地はカリフォルニアともワシントンとも違った気候となる。

晴天のカリフォルニアと比べるとウィラメットの夏は涼しく、一方極端な大陸性気候を持つワシントンと比べるとウィラメットの冬はかなりマイルドとなる。

雨のほとんどは秋冬に降るため、夏は太陽が降り注ぎ乾燥している。生育期の乾燥した空気には湿度がないため気温の上昇や下降のスピードが早く、日較差が大きくなるのも特徴である。雨の少ない夏は水分も不足するが、多くの生産者は灌漑を使用しない。基本的に川の水の使用が禁止されており、もし灌漑するのであれば自分の敷地内に池を作り、自分で冬に水を貯めなければならない。オレゴンのブドウ栽培家の多くは小規模なため、灌漑設備の導入と維持にコストがかかりすぎる。このため、降雨や土壌の保水力が許す限り、生産者は無灌漑でブドウを育てるのである。

ウィラメット・ヴァレーでのブドウ栽培の成功は、ブドウを完熟させ、秋の雨をいかに上手くかわすかにかかっている。というのも、この地の天候の気まぐれはフランスと同じぐらいバラバラで自分勝手であり、アメリカで最もヴィンテージのムラが激しいエリアとも言われる程である。収穫は8月下旬もあれば、じめっとした11月初旬にもなりうる。

畑のほとんどは北西部の丘陵地帯に見られる。この丘陵は、はるか昔に地殻プレートが移動したことや溶岩の流出によって作られたもので、こうした歴史を物語るような特徴的な土壌も見られる。ジョリー(Jory)と呼ばれる鉄分に富んだ赤い粘土は玄武岩を元としており、ウィラメット・ヴァレーの個性的な土壌となっている。主に標高の高いエリアで見られ、砂岩などの海底堆積物、玄武岩、ロスなどと混ざったものが多く、比較的栄養素に乏しい痩せた土壌である。一方、谷底〜標高60m程の低地には、肥沃なローム質土壌が見られる。

 

味わいの特徴

オレゴンのピノ・ノワールは一般的に、ブルゴーニュなどと比べて、柔らかくより果実がはっきりしているが、カリフォルニアやその他のニューワールドと比べるとより土っぽさがあり、より複雑な味わいを持っている。

しかし複数のサブAVAを含むウィラメット・バレーの味わいを一言でくくるのは簡単でなく、それぞれのエリアには明確な個性がある。例えば、最も著名なダンディー・ヒルズ(Dundee Hills)には標高300mを超える畑があり酸を高く保てる一方で、西と北を山で守られているため気温は他より暖かく、冷気や湿気の影響が少ない。このためブドウは見事なバランスで完熟する。またダンディー・ヒルズはジョリーがもっとも多く見られる。夏乾燥するオレゴンでは、粘土が多いことは極めて重要な要素であり、粘土の保水性によって過度な水分ストレスを避けつつも、完熟に導くことができる。

オレゴンを代表するアイリー・ヴィンヤーズ(Eyrie Vineyards)をはじめベルグストロム(Bergstrom)、ドメーヌ・セリーヌ(Domaine Serene)、ドメーヌ・ドルーアン(Domaine Drouhinなどは皆このエリアからワインを生み出している。

一方、エオラ・アミティ・ヒルズ(Eola-Amity Hills)などのAVAは海岸山脈の背が低くなっているところに位置しており、太平洋の冷気が吹き込んでくるため夏が最も涼しくなる。このエリアのピノ・ノワールは、フルーティーではなくより土っぽく、長熟に向くスタイルとなる。ブルゴーニュのドミニク・ラフォンが海外で初めてワイン造りに携わったワイナリー、イヴニング・ランド(Evening Land)はこの地に居を構えている。

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