価格上昇を続けるブルゴーニュ
- 2023.03.18
- ワインニュース
- 2021ヴィンテージ, ブルゴーニュ
2021年のブルゴーニュは、見つけることができれば、そして買うことができれば、とても喜ばしい事でしょう。
毎年恒例のブルゴーニュ・プリムールのテイスティングは、例年に比べて長距離マラソンのようなものではありませんでした。その理由はシンプルで、ワインの本数が少なかったからです。2021年の霜害を覚えていますか?
もうひとつは、価格です。価格は高く、さらに上昇中です。ブルゴーニュのワインがとても美味しくて、お手頃な時期がありました。今でもとても美味しいですが、最近ではボルドーの方がむしろ安く見えるくらいです。2021年ヴィンテージは、ベーシックなブルゴーニュ・ブランとブルゴーニュ・ルージュは、そのステータスの割に非常に良いワインとなり得ますが、ブドウやバルクワインの価格は、そのレベルの割りにかなり倍増しています。あるネゴシアンは、イギリスの輸入業者から、そのような価格ではベーシックなワインは買わないと言われたそうです。「いいですよ」ネゴシアンは言いました。「だったら他で売るから」と。
価格は高騰していますが、2021年は売れるでしょう、単に希少ヴィンテージだからです。「人々はうろたえる事でしょう」とイギリスのワイン商は言います。「しかし、買うでしょう」とも。
2022年はより大量で、より凝縮感のある優良なヴィンテージですが、1つの大量ヴィンテージでは空のセラーを埋めるには十分ではなく、価格は再び上昇するでしょう。あなたがブルゴーニュワインを買いたければ、そしてより多くの人がそれを買いたいと思えば、単純に高いお金を払う事になります。
生産者の中には、2021年が小規模になることを承知で、2020年に価格を上げ、2021年に再び価格を上げた人もいます。あるネゴシアンに、それは可能だったからですか、それともそうしなければならなかったからですか、と尋ねると、彼は肩をすくめました。「これはマーケットなのだよ」と彼は言うのです。
2022年のヴィンテージでは、ネゴシアンはブドウやマストを基本価格で購入し、最終的なワイン価格は2023年4月末まで決定されません。取引はすべてこの地域のワインを管理するBIVBに登録され、売り手市場となっています。ある生産者は、「生産者にとっては、とてもとても良い時期である」と表現しています。(ブドウの栽培が唯一の生業であるならば、霜で収穫量の半分を失うことは、残ったものに対してより高い値段をつける事ができない限り、持続可能ではないことを、兼ね合いとしてここで指摘しておく必要があります)
価格的に同じ位置にあるシャブリも忘れてはなりません。あるワイン商は言います。「シャブリのブドウの価格は、ベーシックなシャブリ1 樽(feuillette)は€800($867)でしたが、€1600まで上がり、現在は€1200です。ブドウを仕入れなければならない場合、ベーシックなシャブリを1本€10以下で作ることは不可能です。ブドウを買わなければならない人は、現在、自分の畑を持っている人よりも不利なようです」
大手ネゴシアンは、かなり多くの自社畑を持っていることが多いのですが、必要なブドウの75%以上を買い付けることもあります。ベーシックなブルゴーニュを他で売る事に熱心な人(匿名希望)は、ネゴシアンがこの高い小売価格から実際に多くの利益を上げているわけではないとも指摘しました。
希少な美しさ
もし購入できる資金力があり、見つけることができれば、2021年は美味しいので、ブルゴーニュの愛好家にとっても、とても良いヴィンテージです。2021年はクラシックな年です。落ち着いていて、良い酸があり、透明感があり、アペラシオン間の違いが味わいの中ではっきりとしています。2020年よりもずっと明快です。暑い年は、「プルミエ・クリュとグラン・クリュ、そしてアペラシオンの境界が曖昧になる」と生産者のJane Eyreは言います。2021年は非常に精密です。
全てが均質なわけではありません。このような困難な年では、違いが生じるのは当然で、いくつかのワインは少し固いですし、全房の使用割合が多すぎたものもあります。この年は、適切なタイミングで収穫し、抽出を控えるべき年でした。Eyreによると、若い生産者にとっては初めて遭遇する難しいヴィンテージで、決断を急がなければならなかったそうです。「除梗か全房か?」彼女は言います。「どうするか?決断は一度しかできないのです」
最初の、そして決定的な問題は、もちろん霜でした。Alberic Bichotによると、春に3日間、気温が-3℃から-5℃まで下がった夜がありました。「地元の霜ではなく、北極圏の霜が降りてきたのです。非常に深刻で、その温度では、なす術がないのです。-1℃や-2℃ならロウソクも使えるのですが、-5℃ではそうはいかないのです。上層の温度も下層の温度と同じように低いので、何もできません」
ピノよりも早熟なシャルドネが最も大きな打撃を受けました。収穫量の50~80%が失われました。Bichotは、Clos des Mouchesの0.75haから、わずか2箱のシャルドネを収穫しました。Faiveleyの醸造家Jérome Flousによると、コート・ド・ボーヌのいくつかのシャルドネの区画では、収量が5hl/haと通常の10分の1になってしまったそうです。ピノに特化したコート・ド・ニュイでは、20〜40%と、より少ない損失でした。とはいえ、十分な損失でした。
しかし、それでも翌朝には太陽が昇り、年は続いていきました。春は良かったのですが、7月は雨が多く、ウドンコ病が発生しました。8月は涼しかったのですが、下旬には改善されてきて、9月は良い天候でした。それまでは雨や雲が多かったのですが、Flousは語ります。「各月に1週間ずつ太陽が出て、乾燥した天気が続いたので、ブドウの成熟が進みました。最終的には、収穫量がとてもとても少なかったので、この結果にたどり着きました。霜がなかったら、こうなっていたとは到底思えません。霜に救われたのです」
そしてその結果は、これまで述べたように、非常に喜ばしいものとなりました。ブルゴーニュはブルゴーニュらしい味わいのワインであるべきで、ロシアン・リヴァー・ヴァレーのようであってはならないと考える伝統主義者にとっては、特にそうでしょう。近年の熟したヴィンテージは、ブルゴーニュの味わいを別の方向に押しやりつつありますが、2021年のシャブリはシャブリの味、つまり塩味と鋼のような味わいを、コート・ドールはコート・ドールの味、つまりミネラル、緊張感、レモンと塩味を感じさせるのです。白は特に良く、2022年より厳格さがあります。最高のものは、滋味があり、エレガントな強さがあります。2014年や2020年のような感じです。偉大なヴィンテージではないけれど、中期的には大いに楽しめるヴィンテージです。
赤はもっとバラエティに富んでいますが、概して生き生きとして透明感があり、精密でアロマティックです。重厚なワインではなく、もう少し重みを出そうとしたものはあまり成功せず、必要以上に分厚くなっているようです。最高のものは、素晴らしい安定感で隙がなく、その年の色々な制限の中でバランスが取れており、アルコールレベルも13%前後と非常に落ち着いており、最近では珍しい補糖があちこちで施されています。彼らが砂糖の買い付け場所を覚えていたなんて、不思議なくらいです。赤ワインは全体的に長期熟成を必要とせず、村名レベルであっても、今飲んでとても美味しいので、「ほら、わざわざ瓶詰めしなくても、バケツで飲ませてくれよ」と思うものもあるくらいです。
でも、十分長持ちします。骨格があり、バランスがよく、しかし非常に繊細な味わいです。まだ瓶詰めしていないので、瓶詰めしたらすぐに少し引き締まるでしょう。中期的にはとても美味しく飲めるので、急ぐ必要はありません。
もし購入するのであれば、テイスティングをせずに購入するのはやめましょう。生産者を慎重に選び、ブルゴーニュを唯一無二のものとせしめるあの純粋さ、繊細さ、端正な味わいを思い起こしましょう。
引用元: Burgundy Prices Carry on Regardless
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