低アルコールワインの鍵となるキャノピーマネジメント

低アルコールワインの鍵となるキャノピーマネジメント

入念なキャノピー管理はワインの未来にとって極めて重要です。


低アルコールワインは、業界で最も急成長しているカテゴリーの1つです。ニールセンの調査によると、ワイン全体の売上は若干減少しているものの、アルコール度数の低い“ベター・フォー・ユー”ワインの売上は、前年11.7%増の後、今年の8月までの1年間でさらに9.1%増となりました。

 

ほとんどの低アルコールワインは、機械的な工程を経て造られるため、風味も損なわれ、ワイン愛好家にとっては満足のいくものではないことが多々あります。

 

ですが、ニュージーランドのあるワイナリーは、農業を通じて純粋にアルコールを減らす方法を発見したといいます。しかも我々が考えるよりもっと簡単な方法で。そう、葉を取り除くだけです。ただし適切な葉の場合に限ります。

 

もし他のワイナリーもこの方法を再現できるようになれば、過度に酔うことなく何杯もワインを飲めるようになるだけでなく、地球温暖化に対しても重要な意味を持つことになります。年々暑くなる中で、ワイナリーは同じ品種を栽培し続け、さらに同じアルコール度数を維持しようとしているからです。

 

Beth Forrestは神経生理学者を引退しマールボロにてForrest Wineryを設立したJohn Forrestの娘です。彼女によると、父は“マッド・サイエンティスト”であり、国全体のワインをコルク栓からスクリューキャップに移行させたグループのリーダーの1人で、サステイナブル・ワイン・ニュージーランドの創設者の1人でもあります。

 

John Forrestは20年に渡り、ワイナリーの”Doctors”ブランドのリースリングとほぼ同じアルコール度数の9%のソーヴィニヨン・ブランを造る事に取り組んできました。このリースリングは、35g/Lの残糖で発酵を止める事でアルコールを低く抑えており、特にpH値が2.99と低いフレッシュなリースリングには適しています。ですが、ほとんどの消費者はこのような残糖のあるソーヴィニヨン・ブランは好みません。Forrestも造ってみましたが、全く満足のいくものではありませんでした。

 

彼はまた、非常に早い時期の収穫にもチャレンジしました。

 

「最初は素晴らしい香りがしました」
Beth Forrestはナパに訪れた際、そのように話しました。
「ですが、発酵が終わると香りは消え、タンクはワインにとって不適切な希硫酸で一杯になっていたんです。風味はありませんでした」

 

Bethは彼女の父がドイツ、ガイゼンハイムで開催されたワインについての会議に出席し、そこでブドウ木の葉のキャノピーとブドウ糖分の関係についてのプレゼンテーションを見たと言います。糖分は発酵してアルコールになるので、ブドウの糖分が少ないとワインのアルコール度数も低くなります。

 

従来の常識では、糖分と風味の発達は関連していると考えられています。ブドウ房のハングタイムを長くとれば、より濃厚な風味が得られますが、同時に糖度も上がり、アルコール度数も高くなってしまいます。さらに、酸度は落ちていくのでブドウ房を長く木に残し過ぎると、出来上がったワインは締まりのない味になるかもしれません。

 

しかしForrest親子は、これまでの常識は間違っているというのです。これはワイン業界にとって大きなニュースかもしれません。

 

「我々は糖度と酸度と風味は連動していないことを学びました。風味や酸に影響を与える事なく、糖度をより制御できることが分かったのです」

 

では、どのような方法を取っているのでしょうか?重要なのは、キャノピーマネジメントにおいて、ブドウ木を覆うキャノピーを縦に3段階に分けることです。Bethによると、1/3のうち、一番上の葉がほとんどの仕事をしており、光合成をおこない太陽の光をエネルギーに変え、そのエネルギーをブドウ木全体に再分配しています。中間の葉は上部ほど働いておらず、下の1/3は基本的にブドウ房を保護するためだけに存在すると彼女は言います。

 

そこでForrest親子は、機械式の除葉機で上1/3の葉を摘み取るようにしたのです。

 

「こうすることで、ブドウ木は風味の発達に集中するようになりました。中間層のキャノピーが上部の仕事を引継がなければなりませんが、上部よりも効率的に働けないので結果として糖分が少なくなるのです」とBethは話します。

 

この作業はタイミングが重要です。ブドウ房がヴェレゾンの半分以上(色が変わる頃)を経た時期でないとこの方法は上手くいきません。それ以前には糖分はほとんど生成されておらず、さらにブドウ木は早期のエネルギーを必要としているからです。

 

「この方法の持続可能性について言うと、ブドウ木が翌年も生き延びるためには、根にエネルギーを送り込むのに十分なキャノピーが必要です。この方法はコントロールが難しいですが、私達はこれまで除去する葉の様々なパターンを実験してきており、スタッフ達とともに途方もない労力をかけて経験を積んできました」

 

「そしてノーマルなソーヴィニヨン・ブランに匹敵するような低アルコールのソーヴィニヨン・ブランを生産できるまでに10~12年もかかりました。この挑戦は決してゼロを目指すものではなく、アルコール度数が30%低くありながらも、美しい1杯を飲むことを可能にするための挑戦です」とBethは話します。

 

ソーヴィニヨン・ブランでの成功の後、Forrest親子は次にピノ・ノワールでこの方法を試してみました。そして学んだのは「ピノ・ノワールは思い通りになりにくい」という事です。
ピノ・ノワールのキャノピーはより細長く、若木にはこの方法は通用しにくいと考え、彼らは台木に植えられた樹齢40年のブドウ畑を購入し、試すこととしました。

 

Forrest親子は年間約8万ケースのワインを造っており、その3/4をソーヴィニヨン・ブランが占めています。彼らは今年の9月にアメリカでアルコール度数9.5%のソーヴィニヨン・ブランとピノ・ノワールをBrigidという新しいブランド名でリリースする予定です。BrigidとはJohn Forrestが長年連れ添った妻の事です。

 

Bethはこう話します。
「昨年、母は誕生日に収穫機をプレゼントされました。その前の年は新品のトラックでした。そして今年は彼女の名を冠したワインブランドを貰ったのです!今までのどのプレゼントよりも幸せそうでした」

 

引用元: Doctored Leaves the Key to Low-Alcohol Wines

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