ポートワインにおける機械VS.人間

ポートワインにおける機械VS.人間
ポートワイン用のぶどうは伝統的に足踏みが行われてきましたが、果たしてそれは血の通った人間の足でなければならないのでしょうか?

人的介入がワインの味わいやテロワールに与える影響のメリットは、ワイン愛好家にとって世界中で論争の的となっています。

 

多くのワイン愛好家が、「人の力よりも土地そのもの」を表現するワインの優位性を熱烈に信じている一方で、人間の知恵がその土地の味わいを形成するということが、とりわけ気候変動に打ち勝つ鍵であるという考えを持っている人もいます。

 

それぞれの思想に関係なく全ての人々が賛同している事実があります。
それは、ブドウの栽培とワインの生産を機械に頼ることは、ブドウ栽培にとってはとにかく”最悪”ということです。しかし、それはポートワインの生産にも該当するのでしょうか?

 

足踏みでブドウを破砕する技術は何百年も前から存在します。古典的なラガール(ブドウを足踏みするタンク)は、通常約3.5mの正方形です。ラガールの中に約76センチメートルの層になるようにブドウを配置し、人々は種子を破砕せずにブドウ果皮の細胞壁のみを破砕するという非常に大変な作業を行います(種子を破砕するとワインの苦みが増大するため)。

 

Full Circle Wine Solutions 社のCEOであるEvan Goldsteinは次のように語ります。
「ラガールを用いた足踏みや手摘みでの収穫は膨大な人手を必要としますが、ポルトガル全土において多くのワイン産地が人手不足に悩まされています。多くのケースにおいて、機械化を導入するか、廃業するかの二択を迫られているのです」

 

実際、多くの生産者にとって、自分たちのブドウと根気よく触れ合う意欲と技術を持った人材を見つけることはもはや現実的ではありませんし、そしてそれは今に始まったことではありません。

 

Wines of Alentejo 社のFrancisco Mateusは次のように語ります。
「収穫期には労働力が不足しますが、その問題はパンデミックによってさらに増大しました。アレンテージョは人口の少ない地域のうえ、若者はブドウ畑やワイナリーで働くことにあまり興味がありません。そのため、アレンテージョでは収穫の機械化への移行が急速に進んでいます」

 

ブドウの足踏みも機械化が進んでいます。Symington や Taylor Fladgate などを包括する Fladgate Partnership社など、いくつかの主要なポート生産者は1990年代から、”Port toes”と呼ばれる、人間の足の働きを模したピストン駆動装置を内蔵した発酵タンクを導入しました。

人間vs.機械

しかしながらMateusはその効率性に対して懐疑的です。

 

「人間の足踏みでは、より均等な圧力がかかるため効果的な抽出が可能で、果皮からの色素やタンニンがより凝縮されます。また、機械には真似することのできない社会的な役割も担っているのです」とMateusは述べています。

 

しかし、Ramos Pinto社のマーケティングディレクター兼輸出エリアマネージャーのAna Ratoは、足踏みの機械化は業界にとって経済的な利点があるだけではなく、人間の足では実現できない多くの利点がある主張しています。

 

「我々がシリコン製の足を模した機械を導入したのは2019年のことで、後にパンデミックが発生するのを考えると良い判断でした。人間の足で踏むことによって、種子を破壊することなく果皮のみが破れ、色素や香り、上質なタンニンを抽出しやすくなります。機械でもこの利点の全てを実現する必要があるため、シリコンパッドが使用されています。シリコンパッドは人間の足を模倣するのに適しており、さらに2ヶ月にも及ぶドウロの長い収穫期間中、長時間、そして昼夜を問わず踏み続けることができるのです」

 

さらに経済的な利点もあります。足踏み機械は何十年も持ち堪えることが出来るためです。それでもRamos Pinto社は人間による足踏みを完全排除したわけではありません。

 

「最高峰のポートワインを造っていくために、機械と人間による足踏みにどのような違いがあるかを日々研究し、その違いを比較しています」と、Ratoは語ります。

 

ラガーレでの足踏みが提供する人々のコミュニティや音楽、そしてその享楽には心がそそられるものです。そしてRatoが言うように、最も希少価値の高いTawny(ポートワインの一種)のために、人間が足で踏むことのできる場所は常に存在し続けるでしょう。しかし、その伝統にロマンを抱くことで、貧困や欠乏というロマンに危険なほど近づいてしまうのです。

 

「財政的な制約から、いわゆる”本物”のポートワインは特定の産地に集中されてしまうことが多いのですが、今回のケースでは労働力の制約などいくつかの理由から、ポルトガルのブランドはよりモダンな醸造方法に移行しているのです。しかし、スペインやフランスなどの近隣諸国と比較して、この言うなれば“素朴さ”の一部を失うことは、全体的なワインの品質が大幅に向上したことを意味します」と、Goldsteinはまとめています。

 

引用元: https://www.wine-searcher.com/m/2021/11/mechanization-versus-wines-human-touch

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