見事なヴィンテージを成し遂げた2023ナパ・ヴァレー
- 2023.11.28
- ワインニュース
- 2023ヴィンテージ, ナパ・ヴァレー
最後の収穫が終わるまで天候が持ちこたえたので、ナパ全体で安堵が広がっています。
11月に入り、ナパ・ヴァレーでは緊張の夜がようやく終わりました。2023ヴィンテージは、もし問題が起きなければ何ヶ月も前から特別なものになると期待されていました。
そして、何も問題がなかっただけではなく、全てが良い方向に向かったと、一息つく時間をようやく持てたワインメーカー達は感じる事ができました。
言い換えると、2023年はナパ・ヴァレーにとって傑出したヴィンテージになるはずです。
Elizabeth Spencerのワインメーカー、Sarah Vandendriesscheはこのように話します。
「ワインは非常に良いものになるでしょう。タンニンの質は高いですが、タンニン量は控えめです。カベルネであってもフレッシュな果実味に満ち溢れています」
このヴィンテージ・イヤーを短くまとめると、”長い冷夏“と言えるでしょう。冬は数年に渡る干ばつを終わらせるのに十分な雨が降り、ブドウ木は健康で喜びに溢れていました。夏は気温が37度を超える事はほぼなく、大きな熱波もありませんでした。一番の懸念点は生育シーズンの遅れで、春が冷涼だったので、雨が降ったり火事が発生しやすい時期まで収穫が後ろ倒しになった事です。ですが雨はほぼ降らず、幸いに火事も起きませんでした。
手短に言うと、飛行機は無事着陸し、搭乗していたブドウは全て問題なしという事です。
Vandendriesscheによれば、9月は猛暑がなかったため、ワインメーカーが見慣れていたよりも健康的なブドウが実ったと言います。
「私たちは、萎びることなくふっくらとしたブドウを見る習慣がなくなっていました。でも2023年のブドウは非常にふくよかで美しい粒をつけています」
2023年のワインの特筆すべき点は、低アルコールでふくよかな風味があることです。Seavey Vineyardのワインメーカー、Jim Duaneにそれはプラスに働くかどうか尋ねてみました。
「私の2023年メルローはアルコール度数が13.3%になります。2~3年後に批評家にこのワインが叩かれるのではと心配しています。でも、もうスコアでワインを売る事は減っています。私のメルローは13.3%で、15.3%が持つほどの豊満さのインパクトはありません。でもこれがこのヴィンテージが与えてくれたもので、私は感謝しています。今は2003年ではないので、もっとインパクトのあるワインを造れと外圧を受ける事もありません。生産者にとっては、より抑制のきいたワインを造るチャンスなのです」
ナパに根差し、畑管理・開発を行うPiña Vineyard ManagementのJustin Leigonは、ナパ・ヴァレー全域で約1,000エーカー(404 ha)を耕作しています。彼によると、今年の収量は例年より15~20%高くなると予想しているそうです。
「2023年で素晴らしかったのは果実の完全性です。暖かい年に見られる晩秋の水分蒸発も見られず、粒の重さ、そして多くの酸を保つことができました。このような年はブドウ畑の立地がワインにしっかりと映し出されます。AVA単位にとどまらず、1つの畑の中の異なる区画でさえも、です。これは区画毎の特徴を示すもので、それがこのヴィンテージの全てだと感じています」
2020年の火災からの復活をようやく祝う事ができたワイナリーも幾つかあります。
Spring Mountain Vineyardのヴィンヤード・マネージャー、Ron Rosenbrandは、敷地内で全焼した16棟の建物の一つ、自宅をもこの火災で失いました。
「この火事では畑も深刻な被害を受けました。敷地内には135の異なる区画があり、ほとんどが森林に隣接しています。火災による炎はとても熱く、風が強かったので、森に隣接していたブドウ木は大打撃を受けました。一部で植え替えを行いましたが、もうダメだと思っていた木も復活してきています。幾つかのブドウ木は失ってしまいましたが、私たちは復活の道を歩んでいます」
Rosenbrandは最後に収穫を終えたワイナリーの1つで、11月14日の早朝に最後の収穫を行いました。
「ブドウの品質は非常に良さそうです。ワインになってもとても良い感じで、ブドウは例年より低い糖度で、アルコール度数も少し軽めですが、風味はどれも素晴らしいです」
Castello di Amorosaのワインメーカー、Peter Vellenoは今年のワインを“クラシックなスタイル”と呼びます。
「2023年のワインはエレガントです。アルコール度数は中程度からやや低めで、昨年とは全く異なります」
さて、ワイン愛好家は数年後に素晴らしいワインがリリースされることを期待できますが、ワインメーカーが今熱望しているのは”良い睡眠”です。ブドウが熟すのを何週間も待った後、全てのブドウがほぼ同時に熟したので、一気に収穫を進めたり、タンクスペース保持のため一部で破砕を待ったりと、スタッフは疲労困憊です。
「私たちはようやく少しの休暇を取れるようになりました」とVandendriesscheは話します。
引用元: Napa Completes a Stunning Vintage
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