豊作となったカリフォルニア・ヴィンテージ
- 2024.01.26
- ワインニュース
- ヴィンテージ, カベルネ・ソーヴィニヨン, カリフォルニア
カリフォルニアの2023年ヴィンテージは非常に素晴らしく、安価なワインでもより美味しくなるでしょう。
カリフォルニアは今年、ワイン用ブドウの大豊作に終わり、その多くが摘み残されました。
その結果、2023年ヴィンテージの安価なワインや中級ワイン(特に赤ワイン)は、2024年後半から市場に出回る頃には予想以上に美味しくなっているでしょう。というのも、その多くには、通常よりもはるかに優れた産地のブドウが含まれているからです。
これは、ソノマ・カウンティで開催された第11回WINエキスポ見本市・会議で明らかになったことです。
世界的なバイヤーとブドウとバルクワインの販売者を結ぶCiatti社から3人の登壇者が、消費者のようにはこのニュースを喜べないだろうとワイナリーの経営者やオーナーを前に講演しました。
ワインの売上は、国内ではせいぜい横ばい、世界ではほとんどどこでも減少しているため、カリフォルニアの収穫量が大幅に増えれば、価格に下落圧力がかかります。
しかし、この収穫量は、植え付けを増やしたり、収穫量を増やすためにブドウの房を増やしたりしたことによるものではありません。春の剪定で残った房が、長く涼しい夏の間に成長し、予想以上に大きく重くなったのです。
Ciatti社のパートナー、Glenn Proctoは、カリフォルニアのブドウの総収穫量の14%が、買い手に拒否されたか、契約なしに栽培されたものだと推定しています。これらのブドウの一部はバルクワインになります。しかし、現在のバルクワイン市場は、カベルネ・ソーヴィニヨンで溢れかえっています。米国農務省によれば、カリフォルニアで最も多く植えられているブドウで、ブドウ畑全体の21%を占めています。つまり、多くのカベルネ・ソーヴィニヨンは今、ブドウ畑に摘み残され、小さくてタンニンの多いレーズンになっているのです。
ワイナリーがワインに使用しなかったブドウの中には、特に熱帯性暴風雨Hillaryの後、州南部で発生したベト病が問題となったものもあります。しかし、大半は単に予想以上の収穫量だったために却下されました。ワイナリーとブドウ栽培者の契約には、一般的に重量によるブドウの購入量が決められています。今回の場合、栽培者がそれ以上の量を持って現れると、ワイナリーは単純に「申し訳ないが、約束以上の量を買うつもりはない」と言ったのです。
Proctorによると、この不買の状況は主に大規模農家がある暑いサンホアキン・ヴァレーとローダイで起こりましたが、より高級産地である沿岸部でもいくつか起こったということです。収穫にかかる費用を犠牲にしてでも余ったブドウを売ろうとする農家もありましたが、ワイナリーは拒否しました。
より良い安いワイン
さらに、Ciatti社のパートナーでバルク市場を専門とするTodd Azevedoは、沿岸部のブドウに価格圧力がかかっているため、その多くがより広域なカリフォルニアAVAになるだろうと語りました。このAVAのワインは通常サンホアキン・ヴァレーのブドウのみを使用した$20以下のワインです。ワイナリーは消費量が横ばいなので価格を上げることができず、その結果、これらの$20以下のカリフォルニアワインは通常よりも品質が良くなるはずです。というのも、使用している沿岸部のブドウのヴィンテージ品質が素晴らしいからです。
カリフォルニアの大豊作に関するニュースは、OIVが2023年の世界的な収穫量を過去60年間で最小と見積もっているにもかかわらず、もたらされました。OIV(国際ぶどう・ぶどう酒機構)は、2023年の世界の収穫量は2022年より9.6%少なく、過去10年の平均より7.6%少なくなると予測しています。
Ciatti社のGreg Livengood 社長は、世界的な消費量の減少が続いているため、この世界的な収穫量の減少はワイン業界にとって良いことだと述べました。
「否定的な報道もあったが、世界的に収穫量が少ないことは、まさに市場が必要としていたことだ」とLivengoodは言います 。
Livengood によれば、厳しい市場状況のために一部のブドウ畑が放棄されたアルゼンチン、最大の顧客である中国との貿易戦争に苦しむオーストラリア、熱波やその他の天候問題に見舞われたイタリアとスペインで、今年の生産量は激減しました。イタリアは世界最大のワイン生産国で、スペインはフランスに次いで3位、オーストラリアは5位、アルゼンチンは7位です。そして、アメリカは4位です。
また、オーストラリアとチリが過剰なワインを1ガロンあたり$2以下(1ℓあたり約50セント)と安く売るために価格を引き下げたため、アメリカはワインの輸出に苦戦しているということです。アメリカは2015年に1億2000万ガロンのワインを輸出していましたが、2022年には7700万ガロンに減少しました。この減少の大半は、英国やカナダのスーパーマーケットのプライベートブランドワインとなることが多い安価なワインたちです。米国ワイン輸出業者にとって朗報のひとつは、より高価な米国ワインに対する海外からの関心は安定していることです。
Ciattiの講演は、ソノマ州立大学の経済学教授であるRobert Eylerによる経済に関する厳しい講演の後に行われました。Eylerによると、アメリカは、景気後退は避けられるかもしれないが、”泥沼のような経済に何年も耐え忍ぶ”ことになるかもしれないということです。一方、インドはワインの大消費国ではないですが、世界経済成長の主要なエンジンとなっているようです。
サンフランシスコのダウンタウンは、パンデミック以来、大多数の労働者がオフィスに戻らず、問題を抱えています。サンフランシスコを経由する観光客が多く、例年は海外出張とナパやソノマへの日帰り旅行を組み合わせることが多かったため、北カリフォルニアのワインツーリズムはビジネスが難しくなっている、とCiattiは述べます。
また、インフレと金利の上昇により、小規模なレストランや小売店にとって今後2年間は厳しい状況が続くだろう、そしてカリフォルニアでは高齢化が進み、住宅価格が高いため、労働者の確保が難しい状況が続くと、彼は言います。
Eylerは、Ciatti がSonoma County Fairground講演会場のステージに立つ前に、「ワインを飲む人々は、所得や資産を考慮して、飲むワインの価格帯を下げ、2024年、おそらく2025年まで、それは続くだろう」と述べました。
「人々は特にバルクワインに移行し始めるだろう」とEylerは言います。
そして2024年後半から、バルクワインは彼らが期待するよりもずっと良いものになるでしょう!安カベルネ愛好家よ、より高品質な安カベルネに出会えるでしょう。
引用元: California Vintage a Bumper Crop
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